子どもと読みたい「隠れた児童文学名作3選」

寒い冬、何だか外に出るのが億劫。こんな日はお家でのんびりと過ごしたい…。そんなときは、子供と一緒に読書をしてみるのはいかがでしょうか。子供は絵本、大人はミステリーとそれぞれ好きなものを読むのもいいけれど、たまには童心にかえって児童文学を読んでみてはいかがですか?

今回は、児童文学の隠れた名作を3冊、ご紹介します。そこには、大人になった今こそ読みたい珠玉の言葉たちが詰まっているのです。

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海をわたるチョコレート

まずご紹介するのは立原えりか著、『海をわたるチョコレート』。この本が発売されたのは、なんと1981年!「まだ生まれていない…」という方もいるかもしれませんね。

この本の主人公は、小学6年生が終わろうとしている少女、しおり。しおりのママは当時では非常に珍しいキャリアウーマン。仕事が忙しいママとしおりの交換日記、という形式で物語は進んでいきます。お話の中で、しおりはさまざまな出来事を経験します。友情、ファッション、初潮、そして初恋。そのたびに人生の先輩であるママにアドバイスを求め、ママは厳しくも優しい、品格のある言葉で、しおりの行くべき道を示してあげます。

しおりが経験するあれこれは、確かに私たちが経験したこと。そして、これから少女たちが経験すること。作者からのメッセージに「しおりは、あなたです」とあります。確かにしおりは私たちであり、娘たち。ふと少女時代に戻りたくなったとき、子供の気持ちに誰よりも寄りそいたい、と感じたときにぜひ読んでほしい一冊です。

のぼるはがんばる

続いてご紹介するのは絵本作家、東君平著、『のぼるはがんばる』。ひがしさん家で飼われている猫、のぼるはオス猫なのにとっても泣き虫。いつも屋根裏部屋で泣いてばかりいます。

でもある日、屋根裏部屋でおかしな生き物「チューインガム」に出会います。色々なことを知っている物知りなチューインガムのことを、のぼるは慕い、尊敬します。しかし、ある日、友達の猫にチューインガムの正体を聞いてしまったのぼるは…。

とても切ないラストが印象的なストーリー。著者はあとがきで「知らなくていいことは、知らなくてもいいと思う。その方が幸せになれる気がする」と語っています。「知りたい」気持ちが先に立っちゃう好奇心旺盛な子供たちに対して、かなり思い切ったアドバイスだと思いませんか? でも、この言葉の重みは、きっと成長するにつれ、分かっていくのだと思います。

ブルドーザーのガンバ

鶴見正夫著、高橋徹絵の知る人ぞ知る感動絵本、それが『ブルドーザーガンバ』です。使い古されて道端に捨てられてしまった、働き者のブルドーザーガンバ。ある大雨の夜、小さな男の子の命を救おうと、彼は最後の力を振り絞り…。

この物語は、決してハッピーエンドとは言えません。子供たちはその理不尽な結末に納得がいかないかもしれません。ただ、このシビアすぎるストーリーは、筆者の心に深く突き刺さり、今も抜けないトゲとなって残っています。

中には、「子供たちが、社会に対して『頑張っても報われないことがある』というネガティブな印象を持ってしまうのでは」という意見もあるようです。また、もしかしたら「泣かせにかかっている感傷的なストーリーだからイヤだな…」なんて思ってしまう方もいるかもしれません。

しかし、何の見返りも求めることなく、愚直にできることを頑張るガンバの姿を見て子供たちが何かを感じてくれるのならば、それがどんな感想であれ、それこそが宝物なのではないか、と筆者は思うのです。

ちなみに、筆者が娘に読み聞かせたときの、娘の感想は「よかったね」でした。「どうして?」と聞くと、「ガンバはこうやって頑張ったから絵本になって、みんなにすきになってもらっているんだよ。頑張らなかったら、みんなガンバのこと知らずに、ガンバを好きになっていないよ」でした。

あなたの心に残る一冊は何ですか?

子供に本を選んであげるとき、自分が子供の頃に夢中になった一冊をチョイスしてみるのはいかがでしょうか? 自分が子供の頃に抱いた感想とは異なる感想が聞けたり、意外な見解が聞けたりして、なかなか楽しいものです。

さぁ、小学校時代を思い出して、あのとき何度も読み返した物語を、もう一度手にとってみてください。きっと、その一冊はニッコリほほ笑んであなたに「おかえりなさい」と囁いてくれるでしょう。