「愛が見えにくい社会」だと感じる人は多いのではないでしょうか。1人暮らしでも、家族がいても、孤独を抱えながら生活をしている人は少なくありません。

英語では、自分で選択する孤独を「solitude(ソリチュード)」、寂しい孤独を「loneliness(ロンリネス)」と表現します。

近年、後者のロンリネスの孤独が心身の健康に与える影響が明らかになりつつあり、「孤独とは、伝染病のように広がっていくもの」と語る専門家もいます。

この状況を深刻視するイギリスでは、昨年、他国に先駆けて「孤独担当大臣」というポストも新設されました。

個人の人権と一定の自由が保証されている国においては、孤独は共通の問題となっているようです。

一度孤独に陥るとからなかなか抜け出せない?

昨年、英誌エコノミストカイザー家族財団が、アメリカ、イギリス、日本の3国でそれぞれ1,000人~1,003人に対して行った孤独に関する調査は、興味深いものでした。

日本では「孤独、もしくは社会から孤立している」と感じている割合は9%と、3か国中最も低いという結果に。

意外と少ないと感じた方が多いかもしれませんが、そのうちの3分の1が「10年以上、孤独な状態が続いている」と回答し、長期間孤独に苦しんでいる人の割合が、他の2国と比較して多くなっています。

日本人が孤独という感情を紛らわす方法として多かった回答(複数回答)は以下の結果となっています。

テレビやゲーム・・・77%
過去の記憶を思い出す・・・77%
友達や親類と話す・・・69%
インターネットやSNS・・・68%
運動・・・52%

また、3か国全ての国で「タバコを吸う」「アルコールを摂取する」という回答が一定数おり、孤独な状態が引き起こす健康被害も懸念されています。

一方で、日本はアメリカとイギリスと比較してSNS(フェイスブックスナップチャット、ツイッターなど)への依存度が低く、「テクノロジーが孤独の直接の原因や遠因となっている」と感じている人は3か国の中で最も少ないという結果になりました。

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孤独は社会のせいか自分のせいか

同調査で興味深かったのが、回答者が考える孤独の原因についてです。

「個人の力ではどうにもならない原因」と、「おもに自分のせい」、「場合による」という3つの選択肢が設けられていますが、アメリカとイギリスでは「個人の力ではどうにもならない原因」、つまり社会の側を原因とする回答が多数派となっています。

対して、日本では「おもに自分のせい」との回答が44%と最も高くなっており、アメリカの11%、イギリスの23%を大幅に超えていました。

日本で「孤独は自己責任」が多い理由は?

かつて日本では、ほとんどの男女が結婚し、多くの男性が会社組織に正社員として所属して生活をしていました。

家庭と職場、そして地域社会が孤独のセーフティネットとしての役割を果たしていましたが、非正規化や晩婚化が進み、以前のように機能しなくなっています。

場合によっては非婚、未婚、離婚などを通じて、「伝統的な家族」を形成しないことを身近な人から責められる風潮も見受けられます。

また、表向きには結婚や仕事選びが「個人の選択の自由」とされながらも、実際には一度選択した道を容易に変更できない不自由さがあることも否定できません。

家族に頼らずとも、職場に頼らずとも「人とつながっている」と感じられる第3の場所の不足も深刻です。このようなことから、孤独は「個人の力ではどうにもならない原因」が大きく絡んでいると言えるのではないでしょうか。

おわりに

昨年10月末のハロウィン期、外から見ると異常ともいえる騒ぎが渋谷で起こりました。精神分析者であるフロムは、人間が孤独を癒す方法のひとつとして「祝祭的興奮状態」をあげています。地縁が薄れ、血縁が薄れ、地域に根差した祭りが地域外の人に「消費されるもの」と変化する中で、あのハロウィンの騒ぎは、現代の孤独が投影された「祝祭的興奮状態」だったのかもしれません。

【参考】
Loneliness and Social Isolation in the United States, the United Kingdom, and Japan:
An International Survey
カイザーファミリー財団)