1月5日(現地時間)にUAEで幕を開けたアジアカップ。早いもので開幕から2週間が過ぎ、グループリーグも終了。日韓はそれぞれグループリーグ3戦全勝の成績を収め、グループ1位で決勝トーナメントに駒を進めた。

そんな日韓の戦いぶりと、これから始まる一発勝負のトーナメント戦を韓国はどう展望しているのか。森保ジャパンの戦いぶりをどう見ているのか。

その評価を知りたくて、韓国の有力紙『スポーツソウル』のウィ・ウォンソク編集局長に話を聞いた。

「まずは順当な結果でしょう。オーストラリアは序盤に躓きましたが、韓国、日本、イラン、といったアジア4強は勝ち上がり、そのほかの国もシャビカタールのTV局で予想した通りになりましたね(笑)。もっとも、日本代表のアジアカップ・エントリーメンバーを見たときは、ちょっぴり驚きましたけどね」

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ウィ・ウォンソク編集局長は記者歴20年以上のベテランだ。日本と韓国が共同開催した2002年大会から数えてワールドカップは4度現地取材しており、UEFAチャンピオンズリーグやアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)などの取材経験も豊富。

ロシアワールドカップでもセレッソ大阪を率いていたユン・ジョンファン監督の「日本代表観戦コラム」を企画するなどして、日本代表を注視してきたというが、アジアカップにエントリーされた日本代表の顔ぶれは意外だったという。

「これが同じ日本なのか」と感じた

ロシア以降、森保監督が世代交代を進めているのは知っていましたが、ロシアワールドカップ時の日本代表とアジアカップの日本代表のリストを比較すると、“これが同じ日本なのか”と感じるほどたくさん変えた印象でした。

ただ、南野拓実堂安律などはヨーロッパでプレーしているので個々の力量は優れている。中島翔哉がケガで離脱してしまったことが惜しいですね。ポルトガルで良い活躍を見せていたので期待していたのですが」

その取材経験と記者としての能力を買われ、2007年から韓国メディア関係者としては唯一『バロンドール』の投票にも参加。そんなこともあってか、日本の欧州組の名も次々と出てくる。

「金曜日のウズベキスタン戦では武藤も良い働きをしましたね」と、同じくニューカッスルに所属するキ・ソンヨンの名前も出しながら、武藤を評価していた。

印象的なのは原口と大迫。柴崎は…

「ただ、グループリーグ3試合で最も印象的だったのは原口元気大迫勇也ですね。原口は中盤で攻撃と守備の両方で影響力を発揮していますし、大迫はサイドの選手との連携プレーにも長けている。

興味深いのは、ふたりともまだ20代後半なのに今のチームではベテランの部類に入ること。世代交代によって加わった選手たちの実力は立派ですが、依然としてロシアW杯組の存在感が強い印象です」

森保監督のもとで日本が進める世代交代に疑問を感じているわけではない。

岡崎慎司本田圭佑は次のワールドカップまであと3年もあるので、早いうちに“美しい別れ”を準備すべきでしょう。ただ、世代交代を始めてまだ日数が浅いせいか、戦術的に重要になってくる中盤と2列目から最前線に向けた攻撃の連携がまだ未完成のように映ります。それがトルクメニスタンオマーンに大差をつけられなかった原因にもなったのでは」と感じたという。

香川真司は次のワールドカップでも活躍できる年齢ですから、本来のトップフォームを取り戻せば復帰するでしょうし、彼が帰ってくればグループリーグで見受けられたような攻撃面のもどかしさは解消されるのではないでしょうか。

ただ、ロシア時と比べて、最も空白を感じさせるのは、攻守の両方をそつなくこなしてくれた長谷部誠の存在。柴崎岳では守備力が物足りず、そのほかの選手も現状では限界があるように映ります」

ただし、日本代表がアジアカップの有力な優勝候補であることは変わらないという。

「出だしは苦しみましたが、日本は試合を重ねるたびに強くなっている。森保監督は、これまでパスを回しながら攻撃を組み立ててきた日本サッカー本来の“色”にこだわらず、前線からの果敢なプレッシングと速い攻撃で試合を進めていますよね。

世代交代の過程ですが、早く戦術的に最適な選手を選び出すこと、ディフェンスラインを下げて密着守備を敷いてくる相手を攻略する方法など、いくつかの課題はありますが、その課題も解決できればある程度完成したチームとして、準決勝や決勝に進めるのではないでしょうか。日本は優勝候補のひとつですよ」

日本と韓国が対戦することになったら…

昨日から始まったアジアカップ・決勝トーナメント。日本が順調に勝ち進み、韓国もまた勝ち進めば両国は決勝で対決することになる。そうなった場合、ウィ・ウォンソク編集局長はどんな試合展開を予想するのだろうか。


(写真=著者撮影)『スポーツソウル』のウィ・ウォンソク編集局長



「韓国もグループリーグ序盤は苦戦し、最近はイ・スンウの“反抗問題”など騒がしかったですが、チームとしては試合を重ねるごとに良くなっています。パウロ・ベント監督も、高い位置からのプレスでボールを奪い、スピーディーな攻撃を志向しています。森保監督のスタイルとさほど変わりませんが、 “中盤での戦い”では日本のほうに勝算があるでしょう。

何しろヨーロッパの強豪たちさえも簡単に制圧できなかったのが、日本の中盤です。ですから、韓国として違ったアプローチで日本戦に臨まなくてはならない。

例えば昨年10月のウルグアイ戦など、日本は制空権争いで弱点があるように見えました。韓国はこの部分に関してこれまでとは違い、優位に立てる大型ストライカーを招集していないので心配でもありますが、フィジカルを全面的に押し出て強く競合すれば、日本のゴールをこじ開けれることも可能ではないかと見込んでいます。

ただ、韓日戦はいつも紙一重の戦い。勝敗だけは現時点では予想できません。両国が決勝に進み、それこそアジア最高のビッグマッチを披露してくれることを期待しましょう」

(文=慎 武宏)

(写真提供=FA photos)