太陽の牙ダグラム」(1981年)、「装甲騎兵ボトムズ」(1983年)などで知られる高橋良輔監督のコラム集「アニメ監督で…いいのかな? ダグラムボトムズから読み解くメカとの付き合い方」(KADOKAWA)が、2019年2月9日に発行される。
コラム集では「機甲界ガリアン」(1984年)、「蒼き流星SPTレイズナー」(1985年)などの企画・制作の舞台裏がつづられているが、高橋監督といえば、切れ味のある言語センスで、鉄と硝煙の匂いに満ちた世界観をつむぎ出す才人でもある。このインタビューでは、映像ではなく文字によって描かれる高橋良輔監督の作品宇宙についてうかがってみた。

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ボトムズの予告ナレーションは「振り返っちゃいけない」


── 高橋良輔監督の文学性といえば、真っ先に「装甲騎兵ボトムズ」の次回予告ナレーションが思い出されます。全52話分すべて、監督ご自身で書かれていますよね?

高橋 そうです。次回予告は、スタジオに入る前の1時間で書いていました。当時、渋谷にオリーブという喫茶店がありまして、45分間は新聞を読んだり週刊誌を読んだりして、最後の15分で「ああ、もう時間がない」と一気に書くんです。そうしないと、あのナレーションは恥ずかしくて書けません。当時、吉川(惣司)さんに「あんなの、よく恥ずかしげもなく書けるねえ」と言われましたけど、振り返っちゃいけないんです。
ボトムズ」の企画は、僕が自分でプロットを書くことが条件でした。つまり、52話分のお話を考えなくちゃいけない。所沢駅から電車に乗って田無駅で降りると、パチンコ屋の2階に喫茶店があって、そこでプロットを書くんです。その店で書けないと、田無から次の駅まで歩いて、歩きながら考えていました。もう、行く喫茶店がぜんぶ決まっているんです。最終的には、上井草まで歩いて、お風呂屋さんの前の喫茶店で書きます。その喫茶店で、山浦(栄二・サンライズ3代目社長)さんがモーニングを食べてサンライズに出勤していましたが、僕は1駅ごとに歩いてくるので、もう少し遅い時間です。予告ナレーションは、すでにできている脚本のどこを切り取るかという仕事ですよね。だけど、プロットはそもそも、どういうお話かを考えるわけですから、時間がかかるんです。


── 10年以上前ですが、「日経キャラクターズ!」という雑誌で高橋監督にインタビューしたとき、開高健さんが好きだとおっしゃっていましたね?

高橋 ええ、個人的に開高さんの影響を受けているようです。開高さんの持っている語彙が、セリフナレーション、題名やサブタイトルに反映されていると思います。

── 「太陽の牙ダグラム」に、中年の従軍記者ディック・ラルターフが出てきますよね。ちょっと開高健さんを思い出してしまうのですが?

高橋 開高さんがベトナムに行ったときは30代ですから、キャラクター的にはまったく違います。だけど、ああいう立ち位置のキャラクターロボット物の中につくるのが僕のワガママだし、ひとつの特徴になっていますね。

── 「FLAG」(2006年)は、女性の戦場ジャーナリスト・白州冴子が主人公でしたね。

高橋 そうですね、「FLAG」は丸々、従軍記者の話でした。開高さんというか、彼の周りにいた人たち、彼の生きた時代が作品に反映されています。

── ほかに、影響を受けた作家さんはいますか?

高橋 アニメーションと関係ありませんが、開高さんと同じサン・アドにいた山口瞳さん。アニメーションになって「ええっ?」と驚いた作家では、池波正太郎さん。


── 「鬼平」(池波正太郎鬼平犯科帳」を原作にしたテレビアニメ2017年)ですね。

高橋 僕が文章を書くときに一番参考にしているのが、池波さんなんです。なぜかというと、びっしり黒くないからです。びっしりと黒く書くのに比べて、僕の労力が半分にはなるじゃないですか。池波さんはセリフと地の文、改行が独特ですよね。「あっ、これは楽でいいなあ」と思ってしまうんです。まあ、不純な理由ですね。
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コラム集発刊記念! 高橋良輔監督が語る“文字と言語の作品世界”【アニメ業界ウォッチング第52回】