冬場の手荒れ。ハンドクリームで対応できるものはいいのですが、かゆみを伴う手荒れにはどう対処したらよいでしょうか?
洗剤の刺激に注意!
手湿疹や手荒れの原因はいろいろですが、特に日常的に水仕事をする主婦や調理師、美容師に多く見られます。水だけでなく、多量の洗剤に触れるため、皮膚をバリアする皮脂が流れ落ちてしまいます。さらに冬は乾燥しているため、皮脂が十分に補給されなくなり、手荒れがひどくなります。
対策としては、なるべく水や洗剤に触れないようにするのが基本ですが、そうも言っていられないでしょう。洗い物をするときにゴム手袋をするのもいいと思います。中にはゴム手袋の内側のパウダーが、また肌への刺激になってしまうものもあります。もっとも最近は、そうした手荒れの原因になる素材を使用しないゴム手袋や、使い捨てのゴム手袋が安価になって入手しやすくなっています。
しかし美容師さんなど仕事柄、ゴム手袋が使えない方もいるでしょう。かゆみが出た場合、早めにかゆみ止めを塗って対処しましょう。かゆみを放置しておくと、炎症を悪化させることになります。ひっかくことで皮膚にキズができ、そこからバイ菌が入るおそれもあります。
冬場は頭皮にかゆみが出ることもあります。この要因も乾燥が考えられます。こういうとき、シャンプーをいつもより念入りにするのは逆効果。むしろ、シャンプーやトリートメントによって頭皮の皮脂が流れすぎている可能性もあります。かゆみが出たときは、洗いすぎない。むしろ大切なのは保湿です。
ステロイドが配合された市販薬も
かゆみ止め薬には、一般的な「かゆみ止め」をおすすめします。一般的な成分というのは、抗ヒスタミン剤(ジフェンヒドラミン塩酸塩、クロルフェニラミン)、局所麻酔成分(リドカイン)、そのほかクロタミトン、グリチルリチン酸などのことです。
ドラッグストアには手湿疹用のかゆみ止めが見られます。その中にはステロイド剤が配合されたお薬もあります。市販薬に配合されているステロイド成分は効き目の穏やかなもので、たとえば「ブレドニゾロン」という成分をよく見ます。
これらの市販薬の包装に「アンテドラッグ」と表記されているものがあります。アンテドラッグとは「特定の部位でのみ強く作用し、体内に吸収されることで急速に不活性化し、効果を失う薬剤。薬の元々持っている副作用の予防を目的に開発された薬」のこと。ステロイドもそのひとつです。
ただ、ステロイド剤配合の市販薬を使わなくてはならないほどの症状なら、お医者さんに診てもらったほうがいいでしょう。ステロイドの薬効レベルはウィークからストロングまであり、症状に合ったステロイドを処方してもらうことができます。
また、もしかしたら、かゆみの原因は単なる乾燥や手荒れではない可能性もあります。たとえば、夏場に多い手足口病というウイルス性の炎症かもしれません。その場合はかゆみ止めを塗っても治りません。
手が赤く腫れる、浮腫ができる、強いかゆみなどの症状が出た場合は、市販薬だけに頼らず、受診しましょう。
「ワセリンで保湿」が冬のスキンケアの基本
一般のかゆみ止めには、かゆみ止め成分の他に、保湿成分や血行促進に効く成分が配合されているものが多いです。
手に限らず、肌荒れ対策の基本は保湿です。そしてもっとも基本的な保湿剤は「ワセリン」です。ワセリンより精製度の高いのが「プロペト」です。
たとえばお風呂上がり、少し時間が経つとスネがかゆくなったりしますよね。でも、お風呂から上がってすぐワセリンを塗れば、かゆくなりません。繰り返しますが、冬のかゆみの要因は乾燥なのですから。
かぜ予防のために手洗いの回数が増える季節ですが、ここは面倒がらずに洗ったら保湿、洗ったら保湿を徹底しましょう。
賢人のまとめ
体調の変化や疲れに加え、洗剤の刺激、乾燥も手荒れや手湿疹の原因。一般のかゆみ止めで対処できますが、強いかゆみや浮腫などの症状が続くなら受診しましょう。ステロイド剤を使う場合、市販薬より処方してもらうほうが安心です。
薬の賢人 宇多川久美子
薬剤師、栄養学博士。(一社)国際感食協会理事長。明治薬科大学を卒業後、薬剤師として総合病院に勤務。46歳のときデューク更家の弟子に入り、ウォーキングをマスター。今は、オリジナルの「ハッピーウォーク」の主宰、栄養学と運動生理学の知識を取り入れた五感で食べる「感食」、オリジナルエクササイズ「ベジタサイズ」などを通じて薬に頼らない生き方を提案中。「食を断つことが最大の治療」と考え、ファスティング断食合宿も定期開催。著書に『薬剤師は薬を飲まない』(廣済堂出版)『それでも「コレステロール薬」を飲みますか?』(河出書房新社)など。LINEお友達限定で、絶対に知っておきたい薬のリスク情報配信中。
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