昨今はいまだかつてないペットブーム。日本人は昔から動物が大好きで、日本の歴史はペットの歴史でもありました。今回は江戸時代にどんなペットが流行ったのかをご紹介します。

日本のミニサイズ好みは昔から

明治初期に日本を旅行で訪れたオーストリア人、ヨセフ・コジェンスキーの手記によると、日本人は「自分の楽しみのために飼育するときは、できるだけ小さなめんどりで庭を一杯にする」。

小原古邨「雄鶏と雌鶏(部分)」出典元・JAODB

また、めんどりと鴨が日本人の庭に飼われている最もポピュラーなペットだとも記しています。そして更に驚く記述を発見。それは、「日本人の楽しみは白いはつかねずみを飼うことである。日本人はこれが小鳥よりも好きである」という一文。

ハムスター・・・ではなく、ねずみ!?今ではかなりマイナーな気もしますが、ねずみペットブームは江戸時代から本当にありました。当時の絵本にもたびたび擬人化されて出てきたほど。

一九 画作「家内安全鼠山入 : 3巻」国立国会図書館

ただしねずみならなんでもいいのではなく、白くてきれいなはつかねずみ限定だったという事でしょう。

犬や猫は?

もちろん今のように犬や猫も昔からペットとして好まれました。その犬に関してもヨセフは「非常に小さいサイズ」と述べています。日本の小型犬ブームは今に始まった事ではなかったようです。

しかしながらヨセフは日本の庶民が飼育していた犬について「往来でしょっちゅう大騒ぎを起こす」と書いており、しつけの悪さ事に閉口していたようです。

猫に関しては、ヨセフは外国人ならではの感想を残しています。「日本では猫にしっぽのないことを発見してびっくり」したというのです。たしかに日本古来の猫はしっぽが丸いおだんごのようなかたちですよね。

国芳「其のまま地口 猫飼好五十三疋(部分)」Wikipediaより

ヨセフは最初、その猫は偶然そういう猫だったのだと思ったそうですが、2匹目も3匹目もしっぽが無いのを見た時、日本の猫はしっぽが無いのが普通なのだとようやく確信したと書き記しています。

ヨセフが日本人にその理由を聞くと、「日本の猫はしっぽがある種類より勘が鋭く、ねずみをよく取る」と答えが返ってきたそうです。

貧乏でもペットは欠かせない!?

犬や猫や鳥を飼う余裕のない貧乏な人は、バッタキリギリスに似ている綺麗な緑の「馬追虫(うまおいむし)」を飼っていたとか。ヨセフによると、「きれいな籠のなかにこおろぎと一緒に飼っている」。

喜多川歌麿「虫籠」出典元 artelino

馬追虫はスイーッチョンと鳴き、こおろぎはコロコロと綺麗な音色を響かせますから、貧乏長屋もそれはそれは華やいだ事でしょう。逆に言えばヨセフから見て「貧乏」に見えるような人たちでも、きれいな虫籠にきれいな音色の虫を飼うくらいの風流心を持っていたという事が言えるでしょう。

参考文献ヨセフ・ジャポンスコ 「明治のジャポンスコ」サイマル出版会

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