駅伝大会でランナーが車にひかれた。

 前代未聞の事故は1月27日瀬戸内海に近い山口県内の一般公道で開催された「第82回中国山口駅伝大会」で起きた。最終7区を2位で走っていた中電工のアンカー小山大介選手(31)が、後ろからきた80代の男性が運転する軽乗用車にはねられ、転倒。顔やひざから流血して救急車で病院に運ばれ、チームはレースを棄権した。小山選手は尻を打撲し、軽傷で済んだが「まさか、ひかれるとは思わなかった」と話しているという。

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「かなり大きい衝突音がした」


 現場は7区中継点の周南市戸田駅前から、ゴールとなる周南市役所に向かう国道2号の片側2車線の直線。走行車線(進行方向、左側の車線)をランナーが走り、追い越し車線(右側の車線)を一般の車が自由に走行していた。先頭ランナー周辺は警察が警備していたが、2位以降に伴走車などはなかった。左側の車線を走っていた小山選手が、右側の車線からはみ出してきた車のサイドミラー付近に接触したという。

 近くで応援していた人は「かなり大きい衝突音がした。選手が動けなくなって倒れたままだった」。大会は山口県や山口陸上競技協会、中国新聞社などが主催。実業団や大学、高校など計46チームが出場していた。主催者は「あってはならないレース中の事故が起こってしまいました。選手をはじめチーム関係者に深くおわびします。安全な大会運営を徹底し、再発防止に努めます」と謝罪した。

 一般公道を使用する危険性は、以前から指摘されていた。公道で行う駅伝、マラソン大会が国内だけで年間2000レース以上開催されている。もともとある道路を使用するだけなので大会を開催しやすく、宿泊や交通費、飲食などで自治体に金が落ち、経済効果がある。一方で、安全管理、交通規制による渋滞問題、周辺住民の生活が不便になるなどデメリットも多い。

今回の一件を教訓にできなければ、次に事故が起きた時は「事件」になる

 今回の事故を受け、「公道使用否定派」の意見が爆発した。

 「大会を観戦にいったけど警備がずさん。交差点の真ん中に警備員がいて車両を誘導していたけど、青信号で飛び出してきて急停車した車と選手がぶつかりそうになる場面があってヒヤヒヤした。選手の近くを走る車は、ランナーを見たい脇見運転もあるし、高齢者や初心者の運転もあることが想定されているのか疑問」

 「テレビで見ていても、車との距離が近く『危ない!』と思うことが何度もある。2年前の箱根駅伝でも事故寸前の場面があった。人の命に関わる問題。取り返しのつかないことになってからでは遅い。根本的に見直すべき」

 「なぜ、休日に交通量の多い都市部主要道路を規制するのか意味がわからない。過疎の島や人が少ない山奥、サーキットでやればいい。そんなに走りたければ、マラソン専用コースでも作ればいい」

 「ある大会で、足の悪いお年寄りが道路を渡らせてもらえず、数百メートル先の歩道橋に案内されていたことがあった。観戦した後、マナーの悪い人たちがゴミを散らかして帰ったり、運営する側が地元の人に配慮する姿勢を持たないといけない」

 「道路は利用者が収める税金で維持しているのに、利用者が不便を強いられる。一般道を使って、他人に迷惑をかけるスポーツってどうなの?」

 悲劇を繰り返してはならない。1956年箱根駅伝の試走をしていた専修大学の小山国夫選手が交通事故で死亡した。現場となった箱根山道の宮ノ下から少し上がった場所に追悼碑がある。その碑の脇を走る路線バスとの空間は30センチ程度しかない。現在、箱根駅伝の試走は禁止されているが、学校のゼッケンをつけず一般人を装って走るランナーは後を絶たないという。

 今回の一件を教訓にできなければ、次に事故が起きた時は「事件」になる。

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

駅伝大会で車と接触事故、見直し求められる公道レースの運営 過去には箱根駅伝の試走で死亡事故も