インフルエンザの流行が警報レベルに達しています。インフルエンザと診断されたら、企業では出勤を見合わせるのが普通ですが、「仕事がある」「休んだら仕事が回らない」と無理をして出社しようとする人もいるようです。あるいは、苦労してチケットを入手したコンサートが翌日に迫り、「治っていなくても行きたい」という人もいるかもしれません。インフルエンザなのに無理に外出することの法的問題について、芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

傷害罪や過失傷害罪の可能性も

Q.インフルエンザと診断されたにもかかわらず出勤し、同僚もインフルエンザにかかった場合、法的責任を問われる可能性はありますか。

牧野さん「意図的に他人へ病気をうつした場合に、傷害罪(刑法204条、15年以下の懲役または50万円以下の罰金)が成立するかどうかですが、傷害罪は『人の身体を傷害した者』に適用され、病毒(インフルエンザ含む)を他人に感染させた場合にも成立する(最高裁1952年6月6日判決)とされており、可能性があります。また、意図的でないと認められても、過失により人を傷害したとして過失傷害罪(刑法209条1項、30万円以下の罰金または科料)となりえます。

感染者がその日時にその場所に居て、その人に感染した』という因果関係の証明は難しいですが、もし証明できれば、不法行為による損害賠償を請求される可能性もあります」

Q.インフルエンザを発症していることを隠して出勤し、その後、職場の多くの人がインフルエンザで休んで業務に支障が出た場合、損害賠償など法的責任を問われる可能性はありますか。

牧野さん「会社として、業務に支障が生じて損害が生じた場合、因果関係が証明できれば、不法行為による損害賠償を請求される可能性があります」

Q.逆に「インフルエンザと診断された」と職場に連絡したのに、出勤を強要された場合の法的問題は。

牧野さん「季節性インフルエンザでない新型インフルエンザの場合、労働者を使用する事業者は、労働安全衛生法第68条や労働安全衛生規則第61条において病者の就業禁止が規定されており、それに違反すると、労働安全衛生法第68条(病者の就業禁止)で6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。

ただし、季節性インフルエンザの場合でも、労働者を使用する事業者は、安全配慮義務(労働契約法の第5条「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」)があるので、民事上の損害賠償責任が発生する可能性があり要注意です」

Q.出勤を強要されて体調が著しく悪化したり、療養が長期化したりした場合、損害賠償などは請求できますか。

牧野さん「因果関係と発生した損害を証明することができれば、不法行為による損害賠償を請求できる可能性があります」

Q.インフルエンザと診断されたのにコンサートに行って他の来場客やスタッフが感染した場合、何らかの法的責任を問われる可能性は。

牧野さん「因果関係の証明は難しいですが、感染者がその日時にその場所に居て、その人に感染したことが証明できれば、不法行為による損害賠償を請求される可能性があります」

オトナンサー編集部

インフルエンザなのに無理に出勤したら…?