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このほどイギリスのグレーター・マンチェスター警察が、ホームレスなりすましていた男を逮捕したことを明かした。イギリスで近年、問題が深刻化している「なりすましホームレス」。住居がありながら路上で物乞いを続ける者が急増していることで、各協議会から市民に向けて「物乞いにお金を恵まないで」と注意喚起がなされている。『Manchester Evening News』『The Sun』などが伝えた。

グレーター・マンチェスター警察は、クリスマス時期にマンチェスターのディーンケイトの路上で物乞いをしていたルドヴィク・ガボール(57歳)という男を逮捕したことを、同警察のFacebookでも明らかにした。

逮捕後に警察が公開したルドヴィクの持ち物は、お金を入れてもらうための紙コップやクリスプス(ポテトチップス)が入っていたプラスチックの袋、多くの硬貨や札で、その合計金額は515.87ポンド(約74,600円)だったという。物乞いには似つかわしくない大金を所持していた以外にも、ルドヴィクはゴートンに家があることが判明した。逮捕後、法廷で物乞いと過去の条件付き釈放の違反に対し罪を認めたルドヴィクは、250ポンド(約36,000円)の罰金と85ポンド(約12,300円)の裁判所費用支払い命令が下された。

イギリスでは近年、こうした「なりすましホームレス」の問題が深刻化している。昨年11月に放送されたBBC3のドキュメンタリー番組『Fake Homeless: Who’s Begging On The Streets?(なりすましホームレス:路上で物乞いをしている人は誰?)』は、なりすましている人を含むホームレスたちに番組司会者が路上でインタビューしたもので、大きな反響を呼んだ。

同番組で紹介されたケンブリッジ在住の女性、エミリーさんもなりすましホームレスのひとりだ。エミリーさんは協議会がほとんどの家賃を払ってくれているアパートに住み、2週間に1回はベネフィット(生活保護手当)を受けている。それでも毎日、路上での物乞いを止めない。エミリーさんは住む家のないホームレスではないことを指摘されると、このように答えた。

「私のような人間には、それほど生き方のオプションっていうのはないんですよ。私は物乞いを“仕事”だと思ってやってます。これをしなければ、売春婦になるかどっちかしかないから。」

さらに番組の中では、「本物のホームレス」を主張するリバプールダミアンさんが「なりすましホームレスのせいで、自分たちの居場所が追いやられている」と話す場面もあった。事実として警察も、物乞いは急増しているが、その数と比べて路上で一夜を過ごすホームレスは少ないと明かしている。イギリスでは屋外で一晩過ごす人は一日平均4,751人と推定されているが、たとえばエミリーさんのいるケンブリッジシャーのエリアには600人の「ホームレス」がいるとされていながらも、そのうちの誰が「なりすまし」なのかということまでは警察も把握できていないようだ。さらにマージーサイド州警察は2017年にリバプール市内で物乞いをして逮捕された8割が、住む宿がある「なりすましホームレス」だったことを明かしている。

住む家や頼る人もいないホームレスについては、慈善団体やシェルターと呼ばれるホームレスのための宿泊施設スタッフが一晩でも宿にありつけるよう、日々救済活動に励んでいる。しかし一方でなりすましホームレスはあとを絶たず、各協議会は「路上での物乞いにお金を恵まないで。なりすましホームレスもいるだけでなく、ホームレスはお金を手にすればドラッグやお酒に消えるだけです」といった注意喚起を続けている。

路上で物乞いをする者に対して、善意で手を差し伸べたくなる人もいるだろう。しかしそれをすることで、なりすましホームレスもますます急増する。深刻化するイギリスの現状を知った人からは、「なりすまして物乞いするっていう人は恥も何もない詐欺師だ。なぜ、最低限の仕事を見つけて働こうとしないのか」「住む家があるのに路上で物乞いって、単に怠け者なだけよね。健康なくせに働かないなんて。税金を払いたくないから言い訳してなりすましホームレスになってるんでしょうね」「こういう奴らが存在するから、路上にいる本当のホームレスたちにもお金をあげるのを躊躇ってしまう。それに彼らにとっても必要な助けを受けることが困難になる」「路上で直接お金を恵むのは止めた方がいい。寄付したければそれなりの団体にした方が安全」といった声があがっている。

画像は『Manchester Evening News 2019年1月27日付「A beggar arrested on Deansgate over Christmas was found to be carrying £515 in cash」(Image: GMP)』『The Sun 2018年11月20日付「‘IT’S WORK TO ME’ ‘Fake’ homeless woman begging on streets despite having a FLAT begs for cash because it’s ‘this or be a hooker’」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)

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