報告するたびに驚かれたIT企業挑戦…20社以上のオファーから選んだ理由

 昨秋のプロ野球ドラフト会議で指名漏れし、野球を引退した前四国IL徳島の谷田成吾さんが“ITマン”に転身したことが分かった。東京・六本木に本社を置くIT企業「ショーケース・ティービー」に今月から入社。現役時代は「由伸2世」の異名で脚光を浴びたスラッガーは20社以上の誘いを受けながら、なぜIT企業を第二の人生を選んだのか。

 入社が決まった後、谷田さんはお世話になる人に報告する度、驚かれたという。保険、マスコミメーカー……。誘いを受けた企業は20社以上。なかには有名企業もあった。しかし、専門的知識がある訳ではない「IT」を生業とする企業に決めたからだ。その裏には「挑戦」と「成長」に対する思いがあったという。

 最初は右も左も分からかなかったビジネスの世界。話をもらった企業とは全員と会い、話を聞いた。第二の人生で何を成し遂げたいのか。自問自答するうちに「自分で何かを創り上げるような仕事をしたい」と軸ができた。そんな話を就職活動の相談に乗ってもらっていた先輩にすると、「ショーケース・ティービー」で執行役員を務める福山敦士さんを紹介された。

「最初は今後について相談させてもらっていたけど、社会人としてやりたいことのありったけを伝えさせていただいた。話していくうちに『それなら、うちでやってみないか』と。ITに関する知識はほとんどない。でも、やっぱり次の道でもいろんなことにどんどんと挑戦をしてみたかった。ここなら、早いうちから挑戦できる環境があると思いました」

 福山さん自身、慶応高時代、05年センバツに出場。投手として登板し、8強入りした経験を持つ。慶大準硬式野球部を経て、サイバーエージェントに入社。1年目からグループ会社の立ち上げに参画し、27歳で独立(株式会社レーザービームを設立)。29歳で2度のバイアウトを行い、ショーケース・ティービーの執行役員となった敏腕ビジネスマンだ。一方でビジネス書の作家、プロ野球選手マネジメントも手掛けている。

5か年計画、20代のうちに一人前に…福山さん「将来は独立して構わない」

 同社は「おもてなしテクノロジーで、人を幸せにする」を経営ビジョンに掲げるソフトウェアメーカー。ITをより便利にするサービスを手掛けている。WEB上の入力フォーム支援ツールである「フォーアシスト」などの10種類以上の特許も持つ。従業員数120人。福山さんが後輩の谷田さんを採用するに至ったのは、アマチュアを含めた第一線で活躍した野球選手のセカンドキャリアに関する課題を感じていたからという。

「会社として、若手メンバーの挑戦事例を生み出したいという課題を持っていたことが(採用した理由の)一つ。もう一つは野球部出身の人材を活かしたかったという面もあります。現状、野球に打ち込んできた人間が活躍できた事例が少ない。社会人1年目であっても野球人として10年以上、培ってきたチームワーク、精神力など、ビジネスの世界で活かせる要素は多い。

 だからこそ、彼に活躍する事例を作ってほしい。短期で結果を残し、証明することが彼のように野球の第一線で取り組んできた野球部出身者への勇気になる。社会人を辞め、米国に渡り、凄い挑戦を続けてきた。その裏ではいろんなことを言われたと思う。プロ野球には届かなかったけど、自分としても彼をプロのビジネスマンと呼ばれるような人間にすることに命をかけたい」

 そんな思いが合致し、入社に至った。福山さんは早い段階で営業を任せ、20代のうちに事業責任者を担えるよう、5か年計画でビジネスイロハを教え込んでいる。「将来的には独立してもらって構わない。NPBの世界は30歳から40歳が活躍の限界だけど、ビジネスの世界では50歳、60歳を超えても活躍できる」と野球以上に息の長い未来を期待している。

「今はすべてが勉強。一日も早く会社の挑戦の力になりたい」と谷田さんは話す。野球というスポーツを通じ、プロを目指して努力し、培った能力、経験をビジネスに還元。会社員という枠に捉われず、プロのビジネスマンとして大成する。大きな希望と使命を宿した戦いは、幕を開けたばかりだ。(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)

IT企業「ショーケース・ティービー」に入社した谷田成吾さん【写真:編集部】