同じ漢字、なのに音読みと訓読み!?

先日筆者も参拝してきた、浅草の浅草寺

浅草寺は、推古天皇36(628)年に創建されたという大変歴史あるお寺で、関東の観光名所としても大人気です。そんな浅草寺の名前について「あれっ?」と思ったことはありませんか?

そう、地名は「浅草(あさくさ)」なのに、お寺の名前は「浅草(せんそう)寺」。読み方が訓読み音読みになっているのです。

「仏教」と「神道」の習慣で読み方が変わった

いったいなぜ、このような現象が起こったのでしょうか?そこには日本における「仏教」と「神道」の習慣が関わっています。

日本の漢字には、日本古来のものは「訓読み」、中国から伝わったものは「音読み」にする習慣がありました。そこから、神社は日本古来の神道の施設のために「訓読み」、お寺は中国から伝わった仏教の施設のため「音読みとなったのです。

他の神社やお寺を見ても、多くは同じように「神社=訓読み」「寺=音読みとなっています。

例外としては

などがあります。

あさまじんじゃ」と訓読みされることもある浅間神社は、かつて日本鎮護の神山とされた富士山を神格化した「浅間神」を祀る神社でした。それが神仏習合によって「浅間神=浅間大菩薩」とされたため、仏教の影響を受けた「せんげんじんじゃ」という呼称も同時に使われていくこととなったのです。

また清水寺は、一般的には「きよみずでら」と読まれることが多くなっていますが、元々は「せいすいじ」と読んでいました。

清水寺の境内には、約4メートルの高さの「音羽の滝」があります。この水は「黄金水」「延命水」と呼ばれ「飲めば願いが叶う」と言われていることから参拝者の多くが飲みに来ます。

飲めるということは、この滝の水はとても清らかということ。
そこから「清(きよ)らかな水(みず)の寺(てら)」と人々から呼ばれるようになり、いつしか正式名称となったのです。

「浅草神社」には「浅草寺」と一体だった歴史も?

さて、浅草寺と同じ境内には、地名と同じように訓読みをする「浅草神社(あさくさじんじゃ)」があるので、なおさら読み方で混乱してしまいますよね?実は浅草神社は、浅草寺の創建に深い関わりのある神社なのです。

ある時、現在の隅田川で漁をしていた檜前浜成(ひのくまはまなり)・竹成(たけなり)の兄弟の網に、仏像が何度もかかりました。相談を受けた土師真中知(はじのあたいなかとも)は、それを観音菩薩像であると見抜き、後に僧侶となって自宅を寺にしてお祀りしました。

この時のお寺が浅草寺で、その浅草寺の創立に関わった3人を神様として祀った神社が浅草神社というわけです。

更に「浅草寺」と「浅草神社」には、1868(明治元)年の「神仏分離令」が出されるまでは同一法人だった歴史もあります。一体だったからこそ同じ漢字で、でも読み方は「神社」と「お寺」の慣習にならったということですね。

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