2018年12月9日に開催された「囲碁・将棋チャンネル PRESENTS 将棋プレミアムフェス in 名古屋」。イベントでは、豪華棋士たちによるトークショーや、佐藤天彦銀河と藤井聡太七段による特別対局などが行われた。注目の特別対局は、佐藤銀河の攻めに落ち着いて対応した藤井七段が勝利し、地元のファンに成長した姿を見せた。そんな大いに盛り上がったイベント後、佐藤銀河と藤井七段にイベントや対局の感想などを聞いた。

【写真を見る】藤井聡太七段が特別対局で佐藤天彦銀河に挑んだ

イベントの感想をお願いします。

佐藤「藤井さんのトークショーは裏で聞いていましたが、僕も楽しませていただきました。また、自分自身のトークショーでも楽しい時間を過ごすことができました。対局は非公式戦でしたが、公式戦のような気持ちで臨みました。いい戦いをお見せできたかなと思います。最終的に私は負けてしまいましたが、ご覧いただいた皆さんに楽しんでいただけたならうれしいです」

藤井「佐藤銀河との特別対局もあり、最初は緊張していましたが、楽しんでイベントに参加することができました。対局では、終始積極的に指すことができ、いい対局をお見せできたと思います。得難い経験をして成長することができた一日でした」

トークテーマに「将棋めし」が取り上げられていましたが、どういうお気持ちでしたか?

佐藤「棋士としては、対局中の休憩でご飯を食べることはごく自然なものなので、『将棋めし』として取り上げられて盛り上がるというのは、なかなか予想がつかないですよね(笑)。 棋士では気が付かなかった視点や、これまで棋士がアピールしていた部分とは別の魅力を、ファンの方々に発見していただいたのは、非常にありがたいことだと思います」

藤井「対局中の食事に注目されるのは少し驚きでした。今までは指し手などを注目していただくことが多かったですが、自分では気付かないような対局観戦があるんだなと驚きました。いろいろな将棋の楽しみ方があるのは、非常にいいことだと思います」

藤井七段キノコが苦手だという話が出ましたが、どこが苦手ですか?

藤井「かなり早い段階から苦手でして...。苦手なのであまり食べたことがなく、どこが苦手かと聞かれると難しいです。いつかは克服すべく、挑戦しなければいけないとは思います(笑)」

イベントには800名近くのファンが来場されましたが、規模感やお客さんの反応などについて感想をお聞かせください。

佐藤「名古屋には何度か対局などで来たことがありましたが、将棋熱の高い地域だと思います。藤井さんの登場は大きな要素の1つですが、それ以前から地元の方々が普及に力を入れてくださっていたことが大きいと思いますね。また、他の地域からも多くの方々が、イベントへ来場されたと聞いています。もともと将棋ファンが多くいる地域に、強い熱意を持ったファンの方たちが集まったからこそ、これだけの規模感のイベントが実現できたのだと思います。今後も藤井さんの活躍を含め、この土地の将棋熱がますます盛り上がり、イベントが今後も継続していけばと思っています」

藤井「多くの方に来場いただいてうれしく思います。トークショーや特別対局をさせていただきましたが、どちらも楽しんでいただけたのであれば幸いです」

佐藤銀河は対局の敗因はどの場面だったと捉えていますか?

佐藤「今回の対局は序盤から水面下の読み合いが続き、中盤戦、終盤戦へと続いていく長い闘いでした。敗因は、序盤から中盤にかけて細かく本格的にぶつかっていた場面にあったと思います。あの場面で、こちらが主導権を持って進めるというよりも、相手の意志によって攻めさせられる展開になり、少しずつ苦しくなりました。こちらも粘って追い上げた場面もありましたが、最初に失った形勢を最後まで取り戻すことができませんでした。藤井さんとは今回が2回目の対局で、前回も名古屋の公開対局で敗れているので、今回はイベントの対局ではありましたが、公式戦さながらの気持ちでぶつかりました。敗れてしまったことは残念ですが、また対局する機会は巡ってくると思いますし、これからも内容と結果を求めていきます」

藤井七段は今回の勝因と佐藤銀河に対して2連勝できたことについて、どういう手応えを感じましたか?

藤井「序盤から非常に難しい将棋でしたが、中盤で少し強気な指し方ができたことが奏功したのだと思います。その後、いくつか冷静になれていなかった場面もあり、途中かなり追い上げられてしまいました。冷静さを失わないことなど、さまざまな課題が見つかる対局になりましたが、その中で結果を残すことができて良かったです」

佐藤銀河はタイトルホルダーとして、藤井七段に対してのタイトル戦への予感、力をどう感じていますか?

佐藤「現在、将棋界は8大タイトルを多くの人数で分け合っていて、タイトルをうかがえる実力を持つ方が非常に多い状況だと思いますね。棋士であれば『いずれタイトルが取れそうだ』という感触を持たれることは、高い評価を得ていることにつながります。藤井さんの場合は、すでに棋戦優勝もされていてタイトル獲得の高いハードルを越えられる実力があるイメージを持っている方も多いと思います。10代でタイトルを獲得することが現実味のあるものとして、非常に高い可能性をお持ちになられているのではないでしょうか」

藤井七段は今の言葉を受けて、タイトルへの距離をどう考えていますか?

藤井「そうですね。2018年は自分の中で、まだまだ足りないところがあったと思います。そういった自分の弱さをしっかり克服した時に初めて、タイトルというものが見えてくるのではないかなと感じています。そういったことを含めて、タイトルに近づいていければいいと思います」(ザテレビジョン

写真左から、佐藤天彦銀河、藤井聡太七段