日本代表は1日、アジアカップ2019の決勝で、カタール代表と戦う。5度目のアジア制覇を目指す日本に対し、初の決勝進出、初のアジア王者を目指すカタール代表。そのベールに包まれたチームは侮ることができない。

バルセロナ仕込みの育成力を持つ指揮官


カタール代表を率いるのは、スペイン指揮官フェリックス・サンチェス監督。43歳の若手指揮官は、プロ選手の経験はないものの、20歳で指導者としての道を歩み出す。

バルセロナのカンテラでの指導歴があるサンチェス監督は、ジェラール・デウロフェウ(ワトフォード)やセルジ・ロベルト(バルセロナ)らも指導。多くの逸材を世に出す一端を担っていた。

転機が訪れたのは2006年カタール・ドーハに拠点を置く、アスパイアアカデミーで指導者となる。

その後、2013年7月からは、U-19、U-20カタール代表の監督に就任。2014年AFC U-19選手権に出場すると、北朝鮮イラクオマーンと同居したグループステージを2勝1分けで首位通過。決勝トーナメントでは、中国、ミャンマーを下すと、決勝では日本を準々決勝で下した北朝鮮に1-0で勝利し優勝を果たす。

この結果、2015年U-20ワールドカップに出場。これは、実に10大会ぶりの出場権獲得となった。U-20W杯ではセネガルポルトガルコロンビアを相手に3連敗と結果を残せなかったが、育成のスタートとして結果を残した。

その結果、2017年7月からはA代表とU-23代表の監督を兼任。2018年AFC U-23選手権では、グループステージを勝ち上がり、3位決定戦で韓国に勝利していた。ちなみに、日本は準々決勝で優勝したウズベキスタンに0-4と大敗を喫していた。

◆監督の信頼も厚い若手選手たち

すでに大会記録の8ゴールを記録し、今大会の得点王になることが確実視されているFWアルモエズ・アリ。22歳のアリは、サンチェス監督の教え子だ。

その他にも、11番を背負う左ウイングのFWアクラム・ハッサンアフィフ、4番を背負うMFタレク・サルマンもサンチェス監督の教え子。彼らは、アスパイアアカデミーからの付き合いであり、中学年代から10年近くサンチェス監督の下でプレーしている。

前述のU-19選手権優勝メンバーでもあり、アリはAFC U-23選手権で得点王を獲得。監督のサッカーピッチ内で体現する選手たちが、カタールには揃っている。

[4-3-3]をベースとした中でも、[4-4-2]や[4-2-3-1]、そして[5-3-2]とシステム変更を試合中に行う。ここまでの6試合で16得点無失点は、決してまぐれではなく、個人に頼ったものでもない。しっかりと時間をかけ、チーム作りをしてしてきた結果が、結果として表れている。

スペイン代表でバルセロナでもプレーし、現在はカタールのアル・サッドに所属するチャビエルナンデスカタールを優勝と予想したが、それも忖度ではなく、しっかりとした裏付けがあってのことだと言える。

◆日本と似たコンセプトでのチーム作りで全勝

森保一監督が率いて5カ月の日本代表。一方で、世代別の代表チームから含めれば5年以上指導を受ける選手もいるカタール代表。そのチーム作りのコンセプトは似ている。

森保監督が掲げるコンセプトは、チームの状況とコメントから読み取る限り、「バランス感覚を持つ」ということと、「局面は個人の判断」ということだろう。

バランス感覚というのは、攻守にわたっての原則であり、ポゼッションをするのか、カウンターをするのか、サイドから攻めるのか、中央から攻めるのかを限定しないこと。守備でも、プレスをかけることとリトリートしてブロックを作るということを限定していない。それは、今大会の6試合の戦い方を見ても、実践されている部分であり、その精度が上がってきている。

一方で、カタールも同様だ。システムを変えるという手を打ちながら、選手たちはポゼッション、カウンターを使い分け、時にはロングボールも多用する。守備でもプレス強度を高めることを前提に、5バックブロックを作るシステムを使う。

チームとしての対応力を上げること、ピッチ内での判断力を重視することは、似ている部分でもあり、長い期間サンチェス監督の指導を受けているカタールに一日の長がある。

日本は、経験値と個の能力、そして今大会で見せている成長力で、対抗することになるだろう。何れにしても、決勝は好ゲームになることが予想される。

◆スタジアムにはファンサポーターが不在

ここまで全勝で勝ち上がってきたカタールだが、今大会の開催地であるUAEにはサポーターがほとんどいない状態だ。

2017年カタールは同じ中東を中心とするイスラム圏の一部諸国から、国交断絶措置などを受けた。UAEもその1つであり、断交状態が続いている。

2017年6月には、UAE在住のカタール人が国外退去を求められた中、UAE国民にはカタールに同情の意思を示した場合、最大で15年の禁固刑に処されることが示唆されていた。

また、エミレーツ航空エティハド航空といったUAEが拠点の航空会社は、ドーハ行きの便の運航を停止。さらに、カタール航空はUAEの領空通過が禁止されている。

スポーツに政治を持ち込まないことは原則としてあるものの、国交が断絶している状態では難しいもの。準決勝のUAE戦では、靴やサンダルペットボトルが投げ込まれ、国歌が流れた際にはブーイングを受けるなど褒められない行動をUAEサポーターがとっていたが、それらはこのような要因がある。

決勝のスタジアムにもカタールサポーターは少ないだろう。一方で、UAE国民はアル・アインに所属するMF塩谷司を応援に来る可能性は高く、準決勝で大敗を喫したかタールを日本が下す姿を望む可能性は高い。

完全なアウェイの状態でUAEを下したカタールだが、決勝でも似たような光景が待っているかもしれない。
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