仕事は人間関係が9割、なんて言葉をよく耳にします。職場の人間関係が順調なら、どんなにしんどい仕事でもけっこう出来ちゃうものです。遊川和彦のエグみ走った脚本で話題の、杉咲花主演のお仕事ドラマ『ハケン占い師アタル』(テレビ朝日系)。面倒くさい職場の人間関係を、杉咲演じる派遣社員・アタルはどう解きほぐすのでしょうか。志尊淳がメインとなった第3話を振り返ってみましょう。

(前回までのレビューこちらから)

 大学時代に演劇サークルに入っていた品川(志尊淳)は特にやりたい仕事が見つからず、何となくイベント会社に就職しました。採用してくれた会社で、何となく仕事を続けています。入社1年目の割にはソツなく仕事をこなしていますが、先輩の上野(小澤征悦)からは「覇気がない」と小言を言われる毎日です。しかも上野は会社が終わった後も品川を呑みに誘い、「俺が若い頃はなぁ……」と同じ説教を繰り返します。品川は上野がウザくて仕方ありません。呑み代は割り勘なのか上野の奢りなのか、そこも気になるところです。

 そんなとき、大崎課長(板谷由夏)からキャリアシートを提出するように言われます。10年後、この会社でどのようなポジションにいるのか、キャリアプランを書いてこいというのです。10年間もこの仕事を続ける気がない品川は「無理です」といつものようにバリアを張るのでした。まぁでも、彼に限らず、同じ職場に10年後もいることを考えている人は少ないのではないでしょうか。よくいる、いまどきの若い会社員、それが品川くんです。

 

■パワハラ野郎vsコピペ人間

 例によって調子のいい上司の代々木部長(及川光博)が面倒な仕事を振ってきます。大手化粧品会社の新商品の試供品をサンプリングするというものです。この寒い時期に街頭に立って試供品を配り、しかもアンケートも回収しろとのこと。地味な割に体力を費やす仕事です。

 品川がこの企画の提案書を作成することになりました。品川はサクサクと提案書をまとめますが、この提案書に上野は不満顔です。パソコン上で見つけた文面をコピペして作ったものだったからです。コネ入社の目黒(間宮祥太朗)に対し「お前はAV男優みたいなもの」という大暴言を吐いた上野ですが、今回は品川が作成した提案書を本人の前でビリビリに破いてしまうのでした。絵に描いたような、とても分かりやすいパワハラ野郎ですね。

 品川の暗い情熱がほとばしります。上野から受けたパワハラ行為の数々をファイルにまとめ、代々木部長に提出するのでした。グラフまで入っており、かなりの力作です。普段はやる気を感じさせない品川ですが、イヤな会社の先輩をディスることに関しては、並々ならぬ能力を発揮してみせます。この情熱、仕事に活かせないものでしょうか。品川がパワハラを訴えたことから、職場の雰囲気は悪化する一方です。

 出世作『烈車戦隊トッキュウジャー』(テレビ朝日系)の超ポジティブだったトッキュウ1号から一転、自分のことしか考えないネガティブ人間を演じる志尊淳。かわいい系男子が大好きな人たちには、彼のいじけた表情もグッとくることでしょう。スピッツのように「キャンキャン」とよく鳴く目黒くんもいるし、ちょっと残念なイケメンを愛でたいという女性にはおすすめの職場です。

■無口なイケメンが頭の中で考えていることは……

 嫌なことがあると品川はついスマホSNSを覗いてしまいます。声優を目指している恋人が頑張ってオーディションを受けてる様子をSNSアップしているのを見て、逆にヘコんでしまう品川です。まぁ、同窓会と一緒でSNSは成功者たちのリア充自慢の場ですから。タイミング悪く、上野から「勤務中に何してんだ。現実逃避してんじゃねぇよ」と注意され、品川はブチ切れてしまいます。大学時代の同期たちが楽しそうにしているのに、つまらない職場にいる自分に我慢ならなかったのです。品川は黙って退社し、「一身上の都合で退職させていただきます」と職場へ一斉メールするのでした。

 ここで、ようやくアタル(杉咲花)の出番です。職場に退職願を提出するために改めて姿を見せた品川に、神田(志田未来)と目黒はアタルに占ってもらうよう勧めます。大学時代から交際していた恋人からも去られて、落ち込んでいた品川はあまり気乗りしないまま、アタルに鑑(み)てもらうことになります。

 品川の3つの質問はこんな感じです。

1)嫌な上司がいるけど、どーすればいい?
2)ここは俺のいるべき場所?
3)他の奴らは、今の仕事が正解だって分かっているの?

 普段、口数の少ない人は頭の中ですごいことを考えているように思われがちですが、品川の場合は大したことは考えていなかったようですね。

 アタルの回答はこうです。

1)の上司の問題ですが、嫌な上司はどこの職場にもいるから、どうしようもない。品川のことを心配してくれる同僚たちのいる職場は他にはないよという助言でした。

2)の質問に答えるために、アタルは品川のトラウマとなっている過去の記憶を探ります。品川にとっての大きなトラウマは、大学時代の演劇サークルでした。演劇の世界に夢を託していた品川ですが、稽古中に仲間と意見が衝突してしまいます。自分の考えが通らなかった品川は「どうせ演劇じゃ、一生食べていけねぇし」という捨て台詞を吐いて、公演に参加することなくサークルを去ったのでした。

「逃げてばかりだと、自分の居場所なんか見つからないよ」

 自分自身が気にしていたことを、アタルにズバリと言い当てられた品川でした。3)の答えも秀逸です。将来のことなんて分かっている人は誰もいません。分からない人生の答えを、スマホ検索でちゃちゃっと見つけようとしたり、困ったことがあったら他人に責任転嫁している限りは、永遠に人生の答えは見つからないよというアタルの金言でした。童顔のアタルですが、彼女はいったい何歳なんでしょうか?

 

■若村麻由美に宗教団体の代表を演じさせるエグさ

 雪が降るサンプリング会場。大崎課長や田端(野波麻帆)たちが声を掛けても、通行人たちは寒さもあって足を止めてくれません。そこへ、ひとりの美女が現われ、「え~、これ凄くいい! 試してみたい!!」と手にした試供品を絶賛します。女装した品川が、自主的にサクラ役を買って出たのです。演劇サークルは途中で辞めた品川ですが、サークルでの経験はまったくの無駄ではありませんでした。上野たちも泥くさく試供品を配り続け、ようやくサンプリングを無事に配布し終わります。

 現場に立ち会っていたクライアントの若手社員たちは「ありがとうございます」と頭を下げて感謝しています。彼女たちが本当に喜んでくれている様子を見て、ほろりと涙を流す品川でした。自分の居場所は探しまわるものではなく、自分で創り出すものなんだなと気づく品川でした。

 すっかり定番化したストーリー展開だった第3話でしたが、いつも冒頭に登場する謎の女性・キズナ(若村麻由美)がラストシーンにも再び現われます。真っ白い衣装を纏ったキズナは、スピリチュアル系の宗教団体をどうやら主宰しているようです。悩みを抱える人たちにありがたい言葉を授けることで、けっこうなお金をふんだくっているようです。

 無名塾出身、朝ドラ『はっさい先生』でブレイクした若村麻由美ですが、2003年に宗教団体の代表と結婚したことで大変な話題となりました。一時期はマスメディアから姿を消しましたが、2007年に宗教団体の代表が亡くなり、芸能活動を再開しています。数奇な人生を歩む美人女優のプロフィールを当て書きしたような、かなりエグい遊川和彦の脚本です。アタルはキズナが主宰する宗教団体が嫌で、飛び出したと思われます。品川に「逃げてばかりいると、自分の居場所は見つからないよ」とアドバイスしていたアタルですが、彼女自身が実は逃亡者だったのです。

 第3話の視聴率は10.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)。第1話12.1%、第2話10.9%と3週連続での二ケタをキープしました。視聴率を味方につけた遊川脚本は、ますますエグみを増していくことでしょう。杉咲演じるアタルのミステリアスな過去が気になり、来週もまたアタリ前のように『ハケン占い師アタル』を視聴することになりそうです。
(文=長野辰次)

テレビ朝日系『ハケン占い師アタル』番組公式サイトより