アジアカップで準々決勝敗退を喫して厳しい非難にさらされている韓国サッカーだが、実は先月、もうひとつ許しがたい出来事が発覚した。韓国女子サッカー界でもセクハラ・性暴力があったことが明るみになったのだ。

事件が起きていたのは、韓国女子サッカーリーグ(以降、WKリーグ)に属する韓国水力原子力FC。昨年9月、シーズン中にもかかわらずチームを指揮していたハ・グムジン監督が首位争いをしていたにもかかわらず、突如として解任されていたのだが、その理由が選手へのセクハラ・性暴力だったという。

昨今、韓国ではスポーツ界でも女子選手へのセクハラ・性暴力が大きな問題となっている。

ショートトラック韓国代表で、2014年のソチ五輪で金1、銀1、銅1のメダルを獲得し、昨年の平昌五輪でも女子3000mリレー金メダルを獲得したシム・ソクヒが、コーチから常習的な性的暴行を受けていた事実を告発。それを機にさまざまな競技で問題が発覚している。

今回、女子サッカー界でもセクハラ・性暴力があったことが判明したわけだが、驚くことにハ・グムジン監督は、過去にもセクハラ問題を起こしていた。それも韓国女子代表レベルにおいてだ。

ハ・グムジン監督は2014年にU-20女子代表コーチ、2015年からはU-17女子代表監督を務めているが、U-17女子代表監督時代に韓国サッカー協会の女性職員にセクハラを働いて解任されていたという。

女子サッカー韓国代表と言えば、日本でも活躍する「美しすぎるサッカー選手」としてアイドル並みの美貌を誇るイ・ミナ(INAC神戸所属)が有名だ。

写真15枚!! 韓国カメラがとらえた「美少女サッカー選手」イ・ミナのかわいすぎる“秘蔵カット”

イ・ミナもU-17代表、U-20代表を経て現在は韓国女子代表の主力に成長したが、代表レベルでセクハラ解任されたにもかかわらず、韓国水力原子力でも同じ過ちを繰り返していたというのだから、呆れてしまう。

しかも、その被害者はひとりやふたりではない。事態を重く見た韓国サッカー協会関係者が、韓国水力原子力FCの合宿に赴いて調査した結果によると、3~4名のセクハラ・性暴力の被害者がいたというのだ。

前出のシン・ソクヒも、コーチから常習的に、しかもかなり若い頃からパワハラやセクハラを受けていたそうだが、韓国水力原子力FCの選手たちも苦痛だったことだろう。被害選手たちのことを思うと、いたたまれない気持ちになる。

日本人選手も所属

それに韓国水力原子力と聞いて真っ先に心配となったのは、日本人選手・田中明日菜のことだ。INAC神戸などでも活躍した彼女は、2018年から韓国水力電子力FCに所属している。


(写真提供=FA photos)田中明日菜



幸いにして田中が被害を受けたわけではないようだが、実はWKリーグでは2017年には南山千明が、2018年には田中明日菜、長野風花などがプレーした。Kリーグで活躍したサムライ・ブルーも多いが、WKリーグプレーした“なでしこ”も多いのだ。

それだけに韓国女子サッカー界は今回の事件発覚を機に、徹底的な調査に乗り出すことを決めている。韓国サッカー協会はWKリーグだけではなく、全国の小・中・高・大学の女子選手だけではなく、コーチや監督、関係者とも面会し、女子サッカー界におけるパワハラ・セクハラ根絶に努めるという。

セクハラ・性的暴行申告センターや性別平等委員会などを設置し、性暴力加害者には指導者資格停止から重いものでは永久除名など、厳しい処罰も課していくという。

ただ、その取り組みが根本的な解決につながるか心配でもある。

2007年に文化体育観光部(日本の文部科学省にあたる)の依頼を受けた韓国女性政策研究院が、「女子アスリートの権益実態調査」の名目で、セクハラや性的暴行の実態を調べたことがあったが、当時の報告書では16種目2254名の女子選手中16.1%が「性的暴力を受けた経験がある」と答えていた。

ソウル大学のスポーツ科学研究所が2016年に発表した研究結果によると、暴言や脅迫、暴行を加えられたことのある韓国のスポーツ選手は約38%に上ったというデータもある。

世界的に広がる「Me Too運動」によって韓国では、政界、文学界、芸能界などで女性たちの勇気ある告発が続いていたが、スポーツ界ももはや深刻に受け止める必要があるだろう。これ以上被害者を増やさぬよう、徹底的な対策を求めたい。

(文=慎 武宏)

(写真提供=FA photos)イ・ミナ