ヘイトスピーチSebastian Gorczowski/iStock/Getty Images Plus/写真はイメージです)

昨年、ひとりの在日コリアンの男子中学生の心を傷つけた、匿名で誹謗中傷を繰り返した書き込み。初となる匿名書き込みでの「侮辱罪」適用が話題になっている。しかし、その詳細には「刑罰が軽すぎる」との声も見られている。

 

■イベントに参加しただけで…

報道によると昨年1月、ネットの掲示板で川崎市在住の在日コリアンの男子中学生は自身に対しての書き込みを見つけたそうだ。そこには、「見た目チョン、脳みそもチョン」「ヒトモドキ」など、酷く罵る言葉が大量に並べ書き込まれていたという。

気になるのは、なぜ彼がこんな目に遭ったのか…ということだ。当時、地元の音楽イベントに参加したことがきっかけ…というよりも、ただそれだけだ。

このイベント活動がネット記事で公開されるやいなや、匿名で書き込める掲示板などのサイトに、人種差別な発言など誹謗中傷する投稿が数万件にものぼったという。

 

■匿名発信者を特定

翌2月、「人が人に対してかける言葉とは思えぬほど、醜悪かつ差別的なもの」「何万件ものヘイトが、未成年に毎日のように浴びせられる」と怒りを露わにし、立ち上がったのが、相談を受けた神奈川県弁護士会だ。

2月から5月、弁護団は多くの投稿を確認した上で、特に悪質な人種差別だと判断したブログに絞り、ブログ管理会社やプロバイダーから情報を入手した。そして「日記のつもりで書いた」と供述する発信者は、大分市在住の66歳の男性であることが判明したそうだ。

7月、弁護団は川崎署に「侮辱容疑」で告訴してから、書類送検、略式起訴、と経て12月、川崎簡易裁判所は男に対して「侮辱罪」として、科料9,000円の略式命令を出した。

■ヘイトスピーチに「侮辱罪」は初

今月16日、弁護団らが開いた記者会見によると、ネット上での匿名のヘイトスピーチに「侮辱罪」を適用したのは、今回が初めてとみられる。

また、被害に遭った現在は高校生の男子生徒はヘイトスピーチを見たときの恐怖やショックを忘れることが出来ないことを明かしている。

また「祖母と同じ世代の人が、50歳も離れた自分にこんなにひどいことをしたということもショック」「今後はインターネットでも実生活でも、もう二度と人を差別しないでほしいです」とのメッセージを残している。

 

■「犯罪として刑事責任を」「軽すぎる」

匿名掲示板などでは、探すまでもなく差別発言で溢れている。今回の件で刑罰に値することが知られたことは大きな前進だろう。一方で犯人が確定したとて、癒えることのない心の傷を負わせた罰が、1万円に満たないことにはもどかしさを覚える人も多いようだ。

「匿名のヘイトスピーチは本当に許されない。犯罪として刑事責任を問うべきだ」

 

「大きな一歩! でももっと断罪してもいい。金額の問題じゃないのかもしれないけど、心をズタズタにしてるんだよ?9,000円ってさ…」

 

侮辱罪で 9,000円って…。刑罰が軽すぎる。煽り運転とかもそうだけど、どうにかならないもんなの」

 

■誹謗中傷を受けたら…

しらべぇ編集部は全国20〜60代の男女1,342名に「もしもネットで誹謗中傷をされた場合」について調査したところ、半数以上が「立ち直れない」と答えている。

誹謗中傷

 

男性は20代~50代が半数近く、女性は全世代で半数を超えて「立ち直ることができない」と回答している。芸能人にも誹謗中傷や殺害予告めいたものまでくることで、被害を訴える人も見られる。

自分だとバレることのない(と思っている)匿名での書き込みだが、「見つかるもの」ということを忘れずにいるべきだろう。

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(文/しらべぇ編集部・長谷川 瞳

【調査概要】 方法:インターネットリサーチ「Qzoo」 調査期間:2017年11月17日~2017年11月20日
対象:全国20代~60代の男女1342名(有効回答数)

匿名ヘイトスピーチ発信者に侮辱罪を適用 量刑に「軽すぎる」と疑問の声も