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 私は北海道に住むセイコーマート信者である。だがメガバンクへの入金操作が必要となり、対応するATMセブンイレブンにしかなかったため、この本土の出島へ久々に足を踏み入れた。すると店内の一番目立つところにこんなものがあったのだ。

 おお、これは挑戦的な!

羊肉入りの本格派!

 「ペヤングやきそば北海道ジンギスカン風」。ペヤングめ、ついに本気出してバクチを打ってきたな。家に帰って調べてみると、どうやら1月21日に発売されていたようだ。現物を見るまで知らなかった。迂闊だった。

 パッケージには、なぜかポスタリゼーションで解像度を落とした札幌市時計台。「具材に羊肉を使用し、まるでジンギスカンを食べているような味わいに仕上げました。香ばしい香りが特徴的な商品です」と、メーカーWebには載っている。

 パッケージ原材料欄にも「乾燥羊肉」と確かにあった。ソースには「たまねぎ」「りんご」、かやくには「にんじん」「もやし」も含まれる。これはジンギスカンのタレと具を想定したものだろう。

 ペヤングといえば変わり種やきそばだ。マカ入りのやらしい「夜のペヤングやきそば 夜食ver.」、食べたところでなにひとつ生えそうにない「スカルプDやきそば」など、さまざまな変態商品を開発し続けてきた。これもその一環ということなのだろう。

 特に期間限定とは書かれていないが、新発売されたインスタント食品の多くは、放っておけばすぐに消えてしまう儚いものだ。これは買って帰るしかあるまい。道民のソウルフードを前面に押し出した製品なら、なおさらだ。

 ただ、食べる前に言ってはなんだが、このカップ焼きそば北海道民に受け入れられる可能性はとても低い。そして冒頭に書いた「バクチ」とはなんなのかという話を、まずはしておきたい。

北海道には「ペヤング」がない

 関東のみなさんにとって、カップ焼きそばと言えば「ペヤング」だろう。北海道ではそれがマルちゃん、すなわち東洋水産の「やきそば弁当」なのである。

 略して「やき弁」。1970年代半ばの販売開始以降、現在に至るまでカップ焼きそばの王者として、北海道に君臨し続けてきた。現在ではジンギスカン並みのソウルフードとして定着していると言っていい。

 以下は、最寄りのホクレンショップ北海道の農協さんがやっている中規模スーパーマーケット)1店舗で入手できた、やき弁バリエーションである。

 画像中央が標準タイプ100g)。この標準タイプには、画像にはないが「大判(130g)」、画像下の「超盛り(200g)」の3サイズがある。周りを囲むのはバリエーションで、ほかにも「塩バター風味」「焼きとうきび風焦がし醤油味」などご当地メニューが存在する。

 まるでトヨタのカーラインナップのようなスキのなさ。ほかがちょっとやそっとの変わり種、変化球で挑んできても、もはやビクともしない布陣である。

 ゆえにここ北海道には、変態ペヤングの居場所はない。そもそもペヤングどころか、全国シェアの過半を占める日清食品の製品ですら、北海道では完全に劣勢なのだ。

なぜ北海道は「やき弁」だったのか

 ご存知の方も多いと思うが、カップ焼きそばの販売テリトリーは、はっきり分かれている。東北・信越地方においてはマルちゃん焼きそばバゴォーン」、西日本では日清食品「日清焼そばU.F.O.」、そして関東ではペヤング北海道ではやき弁だ。

 こうした分布図ができあがった背景には、それぞれ理由はあるはずだが、北海道においては東洋水産の販売流通網が強かったからだと言われている。東洋水産はもともと北海道で水産加工品を製造していたから、道外他社よりロジスティックスで有利だったのだ。

 逆に、その利が通用しない地域では勝てなかった。北海道で強かったのではなく、北海道では生き残れたと言った方が正しいのかもしれない。

ペヤング再び北海道侵攻へ

 当初はペヤング北海道で売られていたが、苦戦を続け市場から撤退。その後は一部ディスカウントストアなどで、細々と手に入れられる程度になっていた。

 だが2015年、あの「Gの悲劇」からの劇的再生により、ペヤング北海道への侵攻を再開したのだ。まずは本土流通の出島たるセブン-イレブンに拠点を築いたというわけである。

 捲土重来。その意気や良し。しかし、前途は多難だ。なにしろ流通網の差が圧縮された今でも、やき弁が強い。理由については「中華スープが付いていたから」とする説が有力だった。

過去における日清食品の敗退

 この粉末スープは、湯切りで捨てるお湯を注いで作る。揚げた麺をふやかした残り汁を飲むなんて嫌な感じだが、スープは確かに存在感がある。薄味の甘いソースと、スープの塩味の組み合わせが絶妙な上に、ラーメンスープのように麺の嚥下を助けてくれもするのだ。

 そこで日清食品は、これがやき弁の強さと判断したのか、日清焼そばU.F.O.に中華スープを付けて売っていた時期があった。だが、シェア獲得につながらなかったのは、現状からわかるとおり。

 ならばやはり味だろうということで、やき弁の素性を調べ尽くし、道民の好みに寄せた「やきそばできました。」を北海道限定商品として今世紀初頭に発売。しかしリニューアルスープが消え、かやくの具材も減り、低価格路線に転じて、最後にはフェードアウト。もはや万策尽き果てたという感じだ。

 現在は「北の焼きそば」が、北海道限定品の座を引き継いでいるが、地元野球チームとのコラボやご当地素材で存在感を示す程度に過ぎない。

ジンギスカン作戦は吉か凶か

 そして、この度のペヤングやきそば北海道ジンギスカン風である。特に北海道に向けた商品ではないのだろうが、道民の気を引くアイキャッチとしては十分。道内では無名と言っていいペヤングの知名度向上には役立つだろう。

 だが、道民に受け入れられるためには、北海道二大ソウルフードジンギスカン」「やき弁」の両方を越えなければならない。バクチだと思った理由はそこだ。ハードルが高すぎる。

 実はこの「ジンギスカン風」作戦、前出の「やきそばできました。」で日清食品も実行している。日清食品でもダメだったものをペヤングがモノにできるのか。食べてみなければわからない。

 すっかり前置きが長くなったが、次回はペヤングやきそば北海道ジンギスカン風にお湯を注いでみようと思う。できれば製品として成功してほしい。なぜなら、大学時代からつい一昨年まで東京で過ごしていた私にとって、ペヤングもまた青春のソウルフードなのだから。

ペヤング北海道ジンギスカン風は北海道で成功する可能性が低い