「久々にクラシコ祭りね」そんな風に私が喜んでいたのは金曜日、コパ・デル・レイ準決勝の組み合わせが決まった時のことでした。いえ、1月には16強対決、準々決勝と4週連続してミッドウィークにラウンドが進んだ後、準決勝1stレグは来週、2ndレグは2月の最終週と間が空くんですけどね。とうとうマドリッド勢唯一の生き残りとなったレアル・マドリーが最後に優勝を果たした2014年の決勝以来、初めてコパでバルサと当たることになり、6日の水曜にまず、昨年10月末にロペテギ前監督の下、リーガ戦で5-1と屈辱の大敗を喰らったカンプ・ノウでリベンジを図ることに。

そして27日にはバルサのコパ5連覇の大望を砕くべく、サンティアゴ・ベルナベウでの2ndレグで決着をつけるんですが、その週末にはリーガ後半の対戦が同じく、マドリーのホームで開催となれば、2011年、モウリーニョ監督時代に経験したリーガ、CL、コパ決勝で20日間に4度も顔を合わせたクラシコ祭りを思い出してしまったのはきっと、私だけではなかったかと。ただ、ちょっとソラリ監督のチームにとって、気の毒なのは最初のコパ・クラシコの後の週末がお隣さんとのマドリーダービー、翌週水曜にはアヤックスとのCL16強対決1stレグとアウェイ3連戦になっていることなんですが、逆に調子の上がっている今、難儀な試合をまとめて済ませられるのはラッキー?

まあ、マドリーについてはまた後でお話しすることにして、今週のコパ準々決勝2ndレグの様子をお伝えしていくことにすると。いやあ、4試合の先陣を切って、火曜にメスタジャでバレンシアに挑んだ弟分のヘタフェだったんですが、これがまた、16強対決2ndレグでジローナに土壇場勝ち抜けを許した兄貴分とどっちが悔しいか、いい勝負。だってえ、開始30秒そこそこで、ホルヘ・モリーナが先制点を挙げた彼らは総合スコアを2-0として、絶対的優位に立っていたんですよお。後半7分にはサンティ・ミナのゴールもVAR(ビデオ審判)により、オフサイドで無効とされたため、15分にチェリシェフのアシストロドリゴにその試合のスコアを1-1とするゴールを決められてもまだ余裕だったんですが、まさかリーガ前節のアトレティコ戦に続いて、28分にはジェネが退場してしまうとは!

いやあ、その2枚目のイエローカードは実のところ、逆にミナのファールだった感もあるんですが、10人でもあとは守り抜けば良かったヘタフェに災厄が襲い掛かったのはいよいよ、後半ロスタイムに入ってから。VAR判定やケガ人の手当て、tangana(タンガナ/小競り合い)などがあったため、それが7分と長めだったとはいえ、早くも46分には韓国人カンテラーノ(バレンシアBの選手)、カンインのクロスをミナがヘッドで送り、ゴール前からロドリゴが2点目をゲット。その直後にはモリーナのシュートがウーゴ・ドゥロの背中を直撃し、絶好機を無駄にしたかと思いきや、そこからのカウンターで最後はガメイロからロドリゴにボールが渡り、ハットトリックで逆転負けしてしまったから、驚いたの何のって。

え、それより度肝を抜かれたのは試合終了の笛が鳴った途端、始まった大乱闘の方じゃなかったかって?そうですね、最後のプレーで同僚のガライと頭をぶつけ合ったパウリスタが顔面に血をダラダラ流したまま、騒ぎに加わっていたりして、もう何が何だか、わからなかったんですが、そこまでバレンシアとヘタフェの仲が険悪になっていたのは、実は両チームの監督に責任がなきにしろあらず。

ええ、あまりにバカらしいので、私も詳細は告げずにきたんですが、発端は1stレグの前、マルセリーノ監督がヘタフェは「juega al borde del reglamento/フエガ・アル・ボルデ・デル・レグラメント(ルール違反ギリギリでプレーする)」とコメントしたことで、まあ、最近はあまり聞かれなくなっていたんですけどね。それに反発したか、コリセウム・アルフォンソ・ペレスで1-0と勝った後、ボルダラス監督は2年前、マルセリーノ監督がビジャレアルを率いて、リバプールにEL準決勝で負けた際、派手なパフォーマンスでゴールを祝ったクロップ監督を批判、それについて「自分の人生、一瞬たりともマルセリーノ監督みたいにはならない」と返されたことを引き合いに出して、「彼は何人もの監督と問題を起こしている」と仄めかしたんですよ。

すると今度はこの2ndレグ前の記者会見でマルセリーノ監督が反撃。「ヘタフェの監督を評価するため、カタ・・ディアスの件を持ち出すことを想像してみてくれたまえ。Pero yo nunca lo hare/ペロ・ジョ・ヌンカ・ロ・アレ(だが、自分は決してそんなことをしないだろう)」って、いえ、やっていますよ。2年前、1部再昇格したばかりのヘタフェのプレシーズン練習に加わりながら、契約解消となり、2部Bのフエンラブラダに移った元キャプテンの奥さんがSNSでボルダラス監督のことを惨々にけなしていたことなんて、すぐにマスコミは掘り起こしてきますって。

そんなボス同士の諍いに加え、1stレグの後でヘタフェのスタッフがバレンシア勢に対して泣き真似をしてみせたり、それを逆転劇の立役者であるロドリゴがメスタジャでやり返すといったような、もう子供みたいな挑発が重なって、最後はあんな乱闘になってしまったようですが、結局、割を喰ったのはヘタフェの方。というのももちろん、8年ぶりのコパ準決勝進出という夢が叶わなかったばかりか、競技委員会から出た出場停止処分ではバレンシアが控えのディアカビに4試合だけだったのに比べ、こちらはレギュラーのCBブルーノが4試合。

しかも重大違反とされ、コパではなく、次のリーガ戦から消化しないといけない上、ダミアンは来季のコパで4試合、マタが2試合、そして退場したジェネが1試合なんですが、ジェネとカブレラアトレティコ戦の退場で土曜のレバンテ戦にも出場停止となれば、いえ、DFは冬の移籍市場でアルバセテにレンタルで行っていた左SBのマティアス・オリベイラが戻って来ましたけどね。CBの頭数が足りないのは明らかで、何とか、他のポジションの選手かカンテラーノを使って凌いでくれるのを祈るばかり。ちなみに移籍の最終日にはアレホ(マラガ)とロベルト・イバニェス(オサスナ)の放出が決まったヘタフェですが、リーガでは6位とEL圏にいるだけに、金曜のアジアカップ決勝ではカタールの前に涙を飲んだ日本代表の柴崎岳選手も早く帰って来て、チームがコパ敗退のショックを忘れられるよう、手助けしてくれるといいのですが。

そして水曜のコパ準々決勝2ndレグのカードではエスパニョールが中国スーパーリーグの武漢に移籍するレオ・バプチスタンの置き土産ゴールで先制したものの、後半にはロ・チェルソに同点弾を決められ、最後は延長戦でベティスが3-1と勝って、総合スコア4-2で準決勝に進出。バレンシアを倒せば、先日、5月25日に行われる決勝の会場に選ばれたホームのベニト・ビジャマリンで14年ぶりのトロフィーを掲げられる可能性を残すことに。続いては、カンプ・ノウでバルサが1stレグで2-0と負けていたセビージャにレギュラー陣総出で6-1と大勝して、こちらも逆転突破したんですが、むしろこの日、私の興味を引いたのはコパ・デ・レイナ(女王杯)の準々決勝。

ええ、一発勝負だったこちらでは、サン・マメスで4万8000人と今季最高の大入りを記録した試合でアトレティコフェミナスが1人退場者を出しながら、アスレティックに0-2で快勝したとなれば、コパ16強対決で敗退した男子チームに爪のアカでも煎じて飲ませてやったらいいかと。彼女たちはリーガでもバルサを制して首位を走り、3連覇も夢じゃありませんからね。CLだけは今季も16強対決でヴォルフスブルクに再び、総合スコア10-0の大敗とちょっと弱いんですが、まあそこは徐々に慣れていけばいいかと。

おかげで今週も暇だったシメオネ監督のチームは、ワンダメトロポリターノで火曜にプレゼン。紹介ビデオではマドリー時代どころか、スペイン代表での雄姿もなく、アトレティコカンテラにいた子供時代の写真ばかりを編集され、「No puedo esperar para entrenar. Para ver a Koke, que era mas alto que yo/ノー・プエド・エスペラール・パラ・エントレナール。パラ・ベル・ア・コケ、ケ・エラ・マス・アルト・ケ・ジョ(練習するのが待ちきれない。コケに会うためにもね。見てわかるように、彼はボクより大きかった)」と変なマウンティングをしていたモラタが今週末の日曜午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)、ベニト・ビジャマリンでのベティス戦で先発できるだけのセッション数をこなせたんですけどね。

ちなみに人事関係の方では、チェルシーからモラタが18ヵ月のレンタル加入をするため、ジェルソンがモナコレンタル移籍しただけでなく、昨夏、セルタから700万ユーロ(約9億円)で獲得し、ウォルバーハンプトンに修行に出していたジョニーが2000万ユーロ(約25億円)で買い取ってもらえたため、カリニッチは残留。加えて、今季は現在もゴディンとサビッチが負傷中、フィリペ・ルイスもようやく全体練習に戻ったばかり、この冬に移籍を強行すると、契約破棄金額の8000万ユーロ(約101億円)にIVA(付加価値税)が加わって、実質9600万ユーロ(約121億円)の出費になることにバイエルンが躊躇、6月まで移籍を待つことになったリュカも個別に調整と相変わらず、DF陣の健康に不安があったせいですかね。やはり昨夏にアルゼンチンジュニアースから獲得し、レンタルで留まっていた18歳のCBナウエンも南米ユース選手権が終わったら合流することに。

とりあえず、ベティス戦ではモラタのお手並み拝見といったところですが、相手がコパの延長戦で疲労しているのはアトレティコにとっては好材料。その次もゆっくり休んでから、クラシコで疲弊するはずのお隣さんとのダービーですしね。それまでにはコケやビトロ、ゴディンらも戻っているとなれば、心強くはあるんですが…いやあ、最近のマドリーは何だか、別人のように強いんですよ!

そう、それは木曜のコパ準々決勝ジローナ戦2ndレグでも証明されて、まあ元々、1stレグで4-2と勝利していたため、気持ち的にも余裕はあったんですけどね。「Nuestro objetivo era disfrutar/ヌエストロ・オブヘティーボ・エラ・ディスフルタル(我々の目標は楽しむことだった)」(エウセビオ監督)という相手を軽くかわし、前半26分にはカルバハルとのワンツーから、ベンゼマが先制点をゲット。加えて、リーガ前節のエスパニョール戦でも2本と、ソラリ監督も「先週、ベンゼマを見出した人たちには申し訳ないが、まだ楽しむ時間はあるよ。Está en un gran momento, es verdad/エスタ・エン・ウン・グラン・モメントー、エス・ベルダッド(今、最高潮というのは本当だ)」と言っていたように最近、ゴールづいている彼は42分にもGKイライソスを破り、前半のうちに更に2点差をつけてくれたとなれば、それこそ大船に乗った気分と言っていい?

守備の方ではジローナとの1stレグはケガで欠場したものの、ソラリ監督に任されている唯一の大会までクルトワの一人舞台にしてなるものかと、リハビリを間に合わせたGKナバスも2度に渡って、アトレティコには命とりとなったウルグアイ人エース、ストゥアーニのチャンスを2度も防いでくれましたしね。後半25分にはパブロ・ポロに1点を返されてしまったものの、その3分後にはマルコス・ジョレンテがエリア外から強烈な一撃をたたき込み、呆気なく、勝負に決着をつけてくれましたっけ(最終結果1-3、総合スコア3-7)。

ちなみにこの試合では負傷上がりのベイルやアセンシオも調整出場できましたし、逆にモドリッチやカセミロはお休み。90分間、プレーしたカルバハルとバランも次のアラベス戦では出場停止とあって、折良く、コパ・クラシコ前に一息入れられるため、本当に今のマドリーは上手く回っているなという感じがしますが、こういう調子の波はいつ風向きが変わるかわかりませんからね。柴崎選手同様、アブダビから戻って来る、ベティスからアラベスにこの冬レンタル移籍をした乾貴士選手が間に合うかはわかりませんが、リーガでもマドリーがこの強さを持続できるのか、日曜午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)からのサンティアゴ・ベルナベウでの一戦も注意して見守っていかないと。

そして月曜には降格圏すぐ上、17位と16位に同じ勝ち点で並ぶラージョとレガネスのミニダービーエスタディオ・バジェカスであるんですが、どちらも1部残留を確実に達成するべく、この冬の移籍市場ではそれぞれ4人の選手を獲得。いやあ、すでにレガネスのブライトバイテ(ミドルスブラから移籍)などはマドリーバルサ相手にゴールを挙げ、新戦力として稼働しているんですけどね。最終日にはロランがアラベスに移るのと入れ替わりに以前、レアル・ソシエダやエスパニョールでプレーしたメキシコ人MFのディエゴ・レジェス(フェルネバフチェ)もペジェグリーニ監督の指揮下に入っています。一方、ラージョには懐かしい選手が加わって、それはアトレティコにいたマリオスアレス。中国の貴州智誠から帰国し、今度は弟分の力になってくれるようですが、まだこの試合に出られるのかはわかりません。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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