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 1995年1月1日ノルウェー沖で巨大な波「ドラウプナー波(Draupner wave)」が観測された。その高さはキリン4頭分にも匹敵する25.6メートルであった。

 こうした大波は、船をいともたやすく海の藻屑にしてしまう破壊力を持つうえに、発生の予測が難しいという、危険極まりないものである。

 そこでイギリスオーストラリアの研究者が、前触れもなく突如として大波が生じるメカニズムを究明するために、水槽でこれを再現するという実験を行なった。

 こうして作り出されたその波の姿は、かの有名な葛飾北斎浮世絵神奈川沖浪裏」にも描かれている大波にそっくりだったのだ。

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 実験から明らかになったのは、小さな2つの波が120度の角度で干渉しあったときに発生するということだ。

 一般的な条件では、波が砕けたときの波の頂点(クレスト)の流体速度(水の速度)は、位相速度(波の頂点や谷の部分の移動速度)を上回る。

 このために、クレストの水は波を追い越して、下方へ向けて崩れる。

 ところが、波が大きな角度(ここでは120度)で交わったとき、この波の崩壊プロセスに変化が生じる。

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image credit:McAllister et al., Journal of Fluid Mechanics, 2019

 波が交差するとき、クレスト下方部分の流体速度が打ち消され、波が潰れずに高く成長するのだ。

 すると波が海に飛び込むように崩れるのではなく、まるでジェットのように上へ向かって吹き上がるように崩れるのである。

 これがど派手に打ち上がる北斎の大波やドラウプナー波の正体だ。そのメカニズムの研究が進めば、大波が発生するタイミングの予測も可能になるのではと期待されている。

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 この研究は『Journal of Fluid Mechanics』に掲載された。

References:Researchers Recreate Draupner Wave/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52270424.html
 

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