昔からあるマナーも、現代においては少しずつ変化していることも。

子どもに教えられる?これだけは知っておきたい「テーブルマナー」【和食・洋食】

最近では、香典マナーはどうなっているのでしょうか?

香典袋の書き方や金額など、基本的なマナーから最近のマナーまで、葬祭にも詳しいマナーコンサルタントの西出ひろ子さんに教えていただきました。

最近の香典の相場って?

まず気になるのが、香典の金額の相場です。西出さんは、香典の相場について、大前提として次の2つのポイントがあると話します。

西出ひろ子さん(以下、西出)「まず、香典の額は、亡くなった方と自分の関係性・関係に深さによってさまざまであることが大前提です。

その家族、親戚、兄弟などで統一した取り決めがあれば、その金額に従いましょう。

それを踏まえた上で、おおよその一般的な金額は次のようになります」

親戚:10,000円~30,000円

西出「関係性にもよりますが、10,000円から30,000円の範囲が一般的です」

祖父母:10,000円~50,000円

西出「個人差はあると思いますが、10,000円から50,000円が多いようです」

兄弟姉妹:5,000円~50,000円

西出「兄弟姉妹の方との関係の深さなどによると思います。5,000円から10,000円という方々もいらっしゃれば、30,000円から50,000円という方々も多いようです」

会社関係の人:5,000円~10,000円

西出「こちらも関係の深さによりますが、およそ5,000円から10,000円が一般的だと思います。相手によっては、香典の他に電報や供花なども贈るため、トータルとしての金額は3万円くらいになることもあります」

友人:5,000円~10,000円

西出「こちらもご友人との関係の深さなどによると思います。5,000円から10,000円というのが一般的でしょうか」

香典のお札は「旧札」で

香典のお札についてのマナーも知っておく必要があります。

西出「慶事では新札ですが、弔事は旧札を使用するのがマナーといわれています。

新札だと、それを用意して不幸が起きることを待っていた、と思われるからです。とはいえ、あまりにも使い古されたお札を入れるのにも、抵抗があるでしょう。

そこで、新札に折り目を入れて袋にいれるとスマートです。

マナーとは相手の立場に立つことです。開封する人の立場に立てば、ボロボロのお札よりも、美しいお札を取り出すほうが感じが良いでしょうし、香典を渡した自身も、印象に残る人として一目置かれると思います」

香典の間違いがちなマナー4つ

香典について、表書きの書き方など、マナーの教科書などを見ながら、見よう見まねでやろうとはするものの、本当にこれでいいのか不安になることがありますよね。

そこで西出さんに、間違いがちな香典マナーを教えていただきました。

1.表書きの書き方

西出「表書きは、仏教、神道、キリスト教といった宗教、宗派に応じたものを書きます。

ちなみに『香典』というのは仏式にのみ使われる言い方です。神式とキリスト教式は、お香をたきませんから、香典とは言いませんので注意しましょう。

表書きは、各宗教や宗派によって異なります」

仏教

  • 【水引】白黒、双銀、黄白(関西方面など・法事で使われることも)
  • 【表書き】通夜・四十九日までは「御霊前」
    ※ただし、浄土真宗、真宗の場合は、亡くなった後、すぐに仏になるという考え方から、「御霊前」は用いず「御仏前」と書く。
    その他、「御香奠」「御香料」など。

神道

  • 【水引】白黒、双銀
  • 【表書き】「御榊料」「御玉串料」「御神料」など。

キリスト教

  • 【水引】一般的にはかけない。
  • 【表書き】「お花料」「献花料」など。
    ※「御霊前」は、プロテスタントでは使用しない。

    不祝儀袋の包み方にもルールが?

2.不祝儀袋の包み方

西出「これもよく間違いがちです。不祝儀袋を包むときに、後ろ側を上からと下から両方を折りますが、このとき、まず下から上へ折り、次に上から下へ被せます。最後を下から上にすると慶事となりますので、絶対に行わないように注意してくださいね」

3.ふくさに入れないで持参する

西出「バッグの中に直接、不祝儀袋を購入したときの透明の袋に入れている人をよく見かけます。透明の袋からは出し、お渡しするまでは、ふくさに入れて持参しましょう」

4.薄墨で書く

西出「これも昔からいわれていることですが、表書きは薄墨、つまり薄い文字でつづるのがマナーとされています。

薄墨は『悲しみの涙で墨が薄くなった』『墨をする気力もないくらい悲しい』などの気持ちを表します。筆ペンでも弔事用の薄めのものがありますので、それを使って書きましょう。ボールペンや、マジック、鉛筆などでは絶対に書かないようにしてくださいね」

知っておきたい香典返しのマナー

続いては、香典をいただく立場となった場合のお返しである「香典返し」について。どんなマナーがあるのでしょうか? 知っておきたい香典返しのマナーを教えていただきました。

1.会葬御礼と香典返しの違い

西出「よく会葬御礼と香典返しが混同されることがあります。会葬御礼とは、通夜や葬式のあったその日、参列者がおかえりになる際に、起こしくださった御礼の意味としてお渡しするものです。香典返しとは、別に考える場合が一般的。

その場ではなく、主に郵送や宅配便などで後日お送りするのが香典返しです。もちろん、お目にかかってお渡しする場合もあります」

2.香典返しの時期

西出「香典返しの時期は、地方や宗教などに応じて異なります。仏教においては、一般的には四十九日(七七日)に、忌明け法要が過ぎたら、お送りすることが多いようです。

送る期間は、忌明け法要後の翌日から二週間以内が一般的です。この期間を過ぎてもお送りする方には、遅くなった旨、一言、お詫びを添えてお送りすると良いでしょう」

3.宗派による違い

西出「香典返しは、もともと仏教のしきたりといわれているため、神式やキリスト教では本来、その習慣はありません。しかし神式では、仏式にならい、神式の忌明けに相当する五十日祭後に送る方もいらっしゃいます。

もしキリスト教式で送る場合は、カトリックは死後30日後の追悼ミサ後、プロテスタントでは1ヶ月後の昇天記念日後とするケースが多いようです」

4.香典返しの相場

西出「一般的に『半返し』といわれています。品物は、あとに残らないものを考えるとされていますので、食品や消耗品が多いようです。ただし、殺生をイメージさせる肉、魚やお酒類は、控えたほうが良いといわれています。

しかし、現代では好みなどに応じて良いという柔軟な考え方に変わってきている現状もあります。昔からの言い伝えは、知識として知っておき、実際にどうするかは相手との関係性や好みのほうを重んじ自由になってきていると言えます。

ただし、お相手がご年配の方などには、これらの情報を重んじるほうが、無難ともいえます。

また、故人と親しい方の場合は、白やグレー、黒色などのハンカチやタオルなどが、実用性もあり、選ばれる方もいらっしゃいます。またカタログギフトも相手が好きなものを選べるという意味において人気です」

近年は香典返しをしないケースも

ところで、近年は、香典返しをしないケースがあるといわれています。西出さんによると、次のようなケースで、香典返しを行わないことがあるそうです。

公的機関や会社など、コンプラインアスの関係上、受け取りが禁止の相手に対して

西出「この場合は、お送りするのを控えなければなりません」

香典不要と申し出のある場合

西出「申し出があれば控えます。ただし、それでもコンプライアンス上禁止などでなければ、気持ちとして送ってもかまいません」

香典が3,000円以下の場合

西出「この場合、半返しですから1,500円以下の品物になりますので、送料なども考えると、大変になるケースもあります。

よってこの場合は、別の形、例えばお中元やお歳暮の時期に、親しい間柄であれば、旅行のお土産などで感謝の気持ちを伝えても問題にはなりません」

生活に余裕がない場合

西出「生活に余裕のない場合は、無理に行う必要はないでしょう。会葬者の方々も理解してくださっていると思います。

このような場合は、時期をみて可能ならば、『その節はお世話になりました』という御礼とその後の四十九日の法要を終えたなど、近況の報告などを行うだけでも、気持ちは伝わるでしょう。

いずれにしても、宗教宗派、地域性や、その家族の考え方や状況などさまざまですから、一概に『こうしなければならない』と決めつけることではありません。大切なことは、そのときの状況に応じて、できることを行うことや、感謝の気持ちをお伝えすることだと思います。

また会葬者も、香典返しがなかったからといって、それに対して不満や失礼などのマイナスな感情は持たないこと。こうしたことが、真のマナーとして本来、大切なことです」

香典マナーは、覚えてしまえばむずかしくはないことばかり。近年の包む相場や、香典の昔からあるマナーをしっかりと実践しつつ、きちんとお悔やみの気持ちを伝えるなどの、真のマナーとは何かを考えながら行いたいものですね。

【取材協力】西出 ひろ子さん

マナーコンサルタント・美道家
「マナーは互いをハッピーにするもの」と提唱しているマナー界のカリスマ。ヒロコマナーグループ 代表として、企業や学校などで人財育成教育を行う研修やコンサルティングを国内外で展開中。

2019年 NHK大河ドラマ「いだてん ~東京オリムピック噺~」をはじめ、NHK大河ドラマ「龍馬伝」「花燃ゆ」、NHKスペシャルドラマ「浮世の画家」「白洲次郎」、日本テレビ「プリンス オブ レジェンド」、映画「るろうに剣心 伝説の最期編」「プリンス オブ レジェンド」などドラマや映画で、多くの有名俳優や女優にマナー指導もおこなっている。

著書・監修は、高橋真麻さんが帯で推薦している『運命を味方につけるプリンセスマナー』など、国内外で85冊以上。