【燃えろ!!デブ野球】新助っ人バルガスの「豆まきの風景」の愛すべきベタさ
燃えデブ第55回はロッテの球界最重量助っ人ケニス・バルガス

キングカズとかゴジラ松井みたいなスーパースター幻想は、当時SNSがあったら成立しただろうか?

 キングカズとかゴジラ松井みたいなスーパースター幻想は、当時SNSがあったら成立しただろうか?

 最近、サッカー日本代表選手が自身のTwitterから報道に異議を唱える案件が続いて、ふとそんなことを考えた。20代の頃、サッカー業界の下っ端で働いていた時に感じた違和感を思い出す。もちろん選手も人間だから腹が立つ批判記事もあるだろう。でも、そういうのをわざわざひとつずつ潰していって、外野が記者を断罪し、試合結果を伝えるレポート記事と甘い称賛コラムだけになったら、もはやジャンルとして死んでいる。

 今思えば、98年フランスW杯前の三浦知良90年代松井秀喜は、もうマスコミから好き放題に書かれまくっていた。だが、そこで折れずに大衆に消費されてジャンルを超えたスーパースターへとなっていったわけだ。例えば、まだ十代のゴジラがあるセクシーグループメンバーを愛車で迎えに行く姿を写真週刊誌に撮られたが、彼女と当時の松井番記者たちは顔なじみだったという。つまり、彼らも知っていて書かないことも数多い。いわば伝統の持ちつ持たれつのスポーツ新聞と選手のツインバズーカシステム

 で、その阿吽の呼吸を壊したのが、90年代後半に自身の公式サイトから発信したサッカー選手中田英寿である。ただ、ヒデの場合はメディアへの絶望が出発点だったのに対して、今の一部の代表選手は基本マスコミに期待している気がする。みんなで僕らの応援をしてくれるものだと。なんで僕らを分かってくれないんだと。よく言えば純粋だし、厳しく言えばプロとして青いなと思う。あ、サムライブルーだからか……なんつって、『昔洋食みつけ亭』で鉄板ナポリタン牛すじコロッケセットをかっ食らいながら今週もキラーパスコラム『燃えデブ』が始まった。

NPB最巨漢、プエルトリコから来た“球界のバッドラック・ファレ”

 さて、プロ野球キャンプインということで、週末は各局スポーツニュースハシゴのルーティーンが戻ってきた。今ならいくらでもペナントに夢が見れる。ただの練習を見てニヤつくという、かなり変態度が高い行為を嬉々として繰り返す平和な日常の象徴がプロ野球キャンプ中継だ。3日は各球団で毎年恒例の節分の豆まきが行われた。そこで話題になったのがロッテ外国人コンビ日本ハムから移籍してきた“スシボーイ”レアードと、“キングコング”こと新助っ人バルガスである。日ハム4年間で通算131本塁打のレアード、身長196cmに体重133キロ(NPB最重量)を誇るプエルトリコの巨漢スイッチヒッターのバルガス。外野にホームランラグーン設置でフェンスが最大4メートル前に出るZOZOマリンの新名物となりそうな平成最後のツインバズーカだ。

 まだ28歳のバルガスの足サイズは31センチ、ベンチプレスは260ポンド(約120キロ)、その規格外のデカさはプロレスファンからすでに“球界のバッドラック・ファレ”と話題を呼んでいる。やたらとバルガス情報が充実しているサンスポによると、左手甲にゴリラタトゥーを入れ、入団会見でホームランを打ったら自身の胸を叩くゴリラパフォーマンスを披露することを宣言。左腕に約550万円の腕時計、胸元に約600万円のネックレス、両耳に約50万円のピアスをつけた往年の宮路社長(懐かしい)を彷彿とさせる歩くゴールドマンは球団関係者に50本塁打を予告。すでにキャンプの屋外フリー打撃では推定130メートルの特大弾をかっ飛ばしたという。

節分の日に繰り広げられるスポーツ新聞エンターテイメント。もちろんバルガスも金棒バットを振り回す。

 話を節分の豆まきに戻そう。毎年、助っ人がカメラマンや番記者扮する鬼役に「オニハソト~」なんつって豆を投げつけ、恵方巻にかぶりつくあの恒例行事。いわば、阿吽の呼吸の伝統の茶番だ。もちろんバルガスも金棒バットを振り回し初めての豆まきを体験。たかが豆まきなんて舐めてはいけない。来日7年目のDeNAロペスは、元メジャーオールスター選手にもかかわらず、青アフロの鬼ヅラまで被って笑ってみせる真のプロフェッショナル魂を我々に示してくれた。部数が落ちたネット時代にスポーツ新聞は何を呑気にやってるんだと突っ込む人もいるかもしれない。けど、この手のベタさや余裕がなくなったときが、マジもんのスポーツ新聞死亡遊戯だと思う。

 だって取材って効率化とは真逆の世界じゃん。無駄の連続。人妻がつい買っちゃうなんだかよく分からないテレビ通販商品のように、無駄は心と金に余裕がなくなったら許容できなくなってくる。貰えるか分からないコメントぶら下がりで選手出待ちして、キャンプじゃ寒空の下ブルペンの球数やサク越えの本数を地味にカウントするみたいな日々。俺は宮崎キャンプでその光景を見た時に現場の新聞記者を舐めるのはやめようと思ったよ。そりゃあ世界で戦うアスリートからしたら“豆まき”はアホらしいと思うかもしれない。けど、プロスポーツというエンタメから、ある種のくだらなさを排除してしまったら、結果という名のガチンコしか残らない。もちろん選手はそれでいい。けど周囲の記者までそこにすべて同調してしまうと息が詰まっちまう。センシティブな自己啓発本じゃないんだから。俺は選手本人がアップするインスタ動画に負けない、ベタでたまに不謹慎な笑える記事を読みたい。それがプロの書き手の腕の見せ所だと思うから。

 たぶんサッカー日本代表も豆まきをすべきだったのだ。槙野が記者に向かって豆投げて「オニハソト~」なんつってね。

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