
こんにちは、ライターのヤスミノと申します。
2021年卒の就職活動から、経団連の制定する「就活ルール」が廃止されるそうです。
正式には「採用選考に関する指針」と呼ばれる、こちらのルール。現在は、大学3年生の3月以降から会社説明会などの広報活動を、4年生の6月以降から面接などの選考活動を始めるよう定められています。
つまり「就活ルール廃止」を言い換えれば、「就活時期の自由化」。極端な話、廃止されれば企業によっては大学1年生から就職活動が可能になります。
廃止の背景には、そもそも経団連に加盟していない企業には適応されないルールであることや、加盟企業であってもそのルールが遵守されていなかったことが理由として挙げられているそう。
廃止については賛否の声がありますが、いずれにせよ、日本の就職活動にとって大きな変化にあることは間違いありません。
ということで、この「就活ルールの廃止」や「新しいルール案」について、就活生と、企業の人事部社員にプレゼン形式で意見を発表していただきました。それと、就活生でも会社勤めでもない私の意見も発表させてもらいました。なぜ?
参加者紹介
近藤太郎さん(24)
現役就活生代表。早稲田大学大学院文学研究科修士2年。スウェーデンに留学経験あり。
綱嶋航平さん(24)
現役の人事部社員代表。サイボウズ株式会社の新卒採用担当。
ヤスミノ(26)
就職してない人代表。表情筋の衰えが著しいフリーライター。新卒就活時にプレステ3を購入し、「グランディア」をやっていた。まぐれで就職できたが、最近辞めて現在ほぼ無職状態。この記事の筆者。
就活生、新卒採用担当、ほぼ無職の3人で真剣トーク
今回は就活生、人事部社員、ほぼ無職と、異なる立場の3人が集まりました。どんな意見が飛び出すのでしょうか。
就活生・近藤のプレゼン
まず1人目は、就活生代表・近藤さん。
一人だけプレゼン用のパワーポイントを持ち込んできました。気合いが入ってますね。
早稲田大学大学院文学研究科修士2年の近藤太郎と申します。2018年3月から会社説明会に行き始めて、最終的にエントリーシートを出したのが8社。すべて落ちて、現在も就職活動中です。よろしくお願いします。
まず、学生側の意見として、就活時期は自由化すべきだと思います。なので就活ルール廃止には賛成です。
理由としては、会社説明会や面接などの新しい日程を定めても、そこから逸脱する企業が出てきて、結局は同じことになると思うんです。それだったら一度自由化にしてみるのもありじゃないかな、と。
ルールの形骸化が、廃止の理由の1つですからね。
もちろん、廃止されることで想定される学生側のメリットと、そしてデメリットがあります。
「自分のペースで就活ができる」点は、学生側のメリットとして大きいです。就活の時期を自分で調整できれば、留学や教育実習を考えている人にはありがたいのではないでしょうか。
なるほど。現状では教育実習と就職活動の両立は難しいですよね。
また、それと関連して、早くから就活を始めれば、「早期に内定がもらえる」のもメリットですね。
次に、ルール廃止のデメリットですが、「就活期間が長引く」のは当然考えられます。
また、「学業や部活動に影響が出る」といった問題もあります。就活をきちんとやっている人たちは、学業もきちんとやっており、就活のスケジュールが定められていないと、両方がバッティングする可能性があるな、と。でも逆に「早期に就活を終わらせれば、学業に打ち込める」という前向きな捉え方もできるので、さほど問題ではないかもしれません。
また、自由化によって全体的に就活時期が早まると、「視野が狭く経験も浅い1年生の時点で、将来を決めなければいけないのは辛い」といった問題も出てきそうです。でもこちらも前向きに捉えると、「就活をすることによって視野が広がる」とも言えます。
近藤さんは、すごく前向きですね。
まとめると、どのようなルールになったところで、就活を早期にやる人はやるし、やらない人はやらない、と。それならば、柔軟性を持たせたスケジュールにしたほうがいいのではないでしょうか。
ただ、完全な自由化によって、企業がいつ、どのようなスケジュールを設定するのかはちょっと不安です。そんな不安を払拭するためにも、企業側には内定確定後のスケジュールを含めた、全体の採用スケジュールを早期に公開してほしいです。
また、大学は成長の場であるので、同じ個人でも1年次と4年次ではまるっきり違う人間になり得ます。それも踏まえ、企業側に一度落ちた学生でも一年後に再びエントリーできるなど、学生の成長を加味した選考を行ってほしいですね。
ほんとに真面目だな~。なんで就職できないんだろう。
それは言わないでください。
現行の就活ルールは時期についての話が主ですが、それ以外に新しいルールの提案があります。
新しい就活ルールについて提案する近藤太郎さん
それは「インターンの義務化」です。
学生・大学側のメリットは、早期から就活意識を持たせられる点です。もちろん現実的にはかなり課題が多いものではあるのですが、義務化するとしたら、「大学と企業の連携」と「学生による自己申請」、この2つが必要になります。
そして、それぞれ次のような問題点が考えられます。
ただ、インターンに申し込むことや落ちることも含めて、やはり就活の意識向上にはつながると思うので、結果的にはいい影響を与えるのではないでしょうか。
でも、会社が学生に任せられる仕事なんて限られてますよね。そうなると単純に学生バイトみたいな扱いになりそう。
インターンといってもいろいろあって、僕は大学の時に1年間休学して週5でフルタイムで働いてました。そういうインターンの形もあれば、最近は1日だけの「1Dayインターン」なんかもあって。義務化をしてしまうと、手軽にインターンを終わらせようという人が増えてしまって、結局意味がなくなってしまうなんてことも考えられますね。
結局、義務化しても、やる気がない学生は簡単な場所に流れてしまいそうですよね。それに、企業側の受け入れをどうするのかっていう問題もあるのでは?
たしかに、企業からしたら余計な負担が増えるだけかもしれませんね……。でも学生側から見れば内部の雰囲気なども含め、一歩踏み込んだ職業体験ができる点がメリットかと思います。
人事部社員・綱嶋のプレゼン
サイボウズの綱嶋航平と申します。2017年の春に入社し、現在、新卒2年目です。人事で新卒採用を担当しています。よろしくお願いいたします。
この企画のお話をもらって、改めて「就活ルール」について考えてみたんですが、難しい問題だな、と思いました。個人的な意見としては、私も就活時期の自由化には賛成ですね。
先ほども言いましたが、僕は大学の時に1年休学して、インターンとしてほぼ正社員のような形で働いていたんです。施策の企画立案や実際のクライアントへの営業なども、責任を持って行いました。普通に学生生活を送っていては得られない経験だったと思います。選択肢が広がるという点においては、自由化は学生さんにとってはいいことだと思います。
学生さんだけでなく企業側からしても、メリットはあります。期間があらかじめ設定されていると「就活する時期だから応募した」という感じで、目的意識がない状態で面接に来る就活生も多いんですよね。なので、自由化によって目的意識のはっきりとした応募者が増えるんじゃないかとも思います。
企業側にもメリットがあるんですね。
僕も目的意識がない学生でしたね。なんとなく目にとまった会社に書類を送って、雰囲気だけで面接に行って。当日の朝になって、ネットで会社のことを調べるくらいテキトーでした。
「就活をこの時期に絶対にやらないといけない」という縛りもはたしてどうなのかなと思っています。そもそもの話なんですけど、今の新卒一括採用というシステムが時代に合わなくなってきているんですよ。
まずですね……、
戦後の話から始めるんですけど。
戦後の話はじまっちゃった。
日本が戦争に負けて、若者の数が減り、労働力が落ちました。そこから「国力を増していくぞ!」という時に、人をたくさん集めて、モノをたくさん作って、たくさん売る、という流れがあったんですね。
その頃に、企業として労働力、つまり人を囲い込むために構築された3つのシステムがあります。新卒一括採用、終身雇用、年功序列です。この3つが連動していたんですね。
ただ、今はたくさん人を集めて、たくさんモノを作って売ればいい、という時代はとうに終わってしまっているんですよね。なので、過去の成功モデルにしがみつくのは、時代にそぐわないのではないでしょうか。
求められているものが変わっているのに、フォーマットだけが残っている状態なんですね。
現代の就活ルールのミスマッチについて解説するために、戦後まで遡って説明する綱嶋航平さん。
もちろん現実的な課題点もありますが、選択肢が多いのは、豊かさの表れだと思います。なので、僕は就活時期の自由化には賛成。実は弊社では、すでに通年採用を取り入れているんですよ。
おお、そうなんですね。
はい。すでに時期の自由化は促進しているので、次のステップとして、「新卒という枠組み自体の解消」を考えていて。
弊社では新卒採用と中途採用に加え、未経験分野に挑戦したい29歳前後の若手層を対象にした「U-29(ユニーク)採用」を取り入れています。
ただ、社内で「新卒採用も『未経験』という意味では、U-29採用と一緒ではないか?」という意見もありまして。なので現在、新卒とU-29の一本化を進めようとしています。おそらく数年後には実現するのかな、と。
ちょっと今回のテーマから外れてしまうかもしれませんが、結論としては、そもそもの「新卒という枠をなくせばよいのではないか」ですね。
ほぼ無職のプレゼン
お二人とも「就活時期の自由化には賛成」というスタンスでしたが、はっきり言って僕は反対です。なぜなら……、
めんどくさいからです。
ヤスミノのプレゼンを聞いて反応に困ってしまう2人
考えてみてください。就活時期の自由化によって、大学に入った瞬間から「就活」の2文字がチラつくのは嫌すぎませんか? 先ほどのお二人の話を聞くと「学生の選択肢」が広がるという点を強調していましたが、大事な観点が欠落しているように感じました。それは……、
就職に対して能動的に動いている大学生ばかりではない、という点です。いや、むしろ少数派でしょう。単刀直入に言えば、ダメ学生への配慮がありません。
もし周りの出来のいい奴らが次々と就職を決めていったらどうでしょう? まだ内定をもらってない学生には尋常ではないプレッシャーがかかります。
では、現行のルールを維持したままでよいのか? それも違います。なぜなら……、
めんどくさいからです。
……。
いや、「めんどくさい」だと少し語弊があるかもしれません。もっと正確な言葉を使うのなら、「モラトリアムで堕落しきった学生が、あの短期間でいきなり社会に迎合しようとするのは、労力がかかりすぎて現実的ではない」ということです。
なるほど……。その言い方だったら、分からなくもないですね。
人間として成長し、さらに自分自身のストロングポイントを身に付けるのに、もう少し猶予を与えてもよいのではないでしょうか? そこで……、
新卒としての就職活動を30歳までに延長する、というのはどうでしょうか?
そうすれば本分である学業との両立もできますし、心の余裕を持った動き方ができます。また、さまざまな経験を積むことも可能になり、企業としてもよりよい人材を集めることが可能になると思います。
実はリクルートさんやヤフージャパンさんは、まさにそれをやってるんですよね。
え? もうやってるんですか!?
はい。弊社も参考にさせてもらってます。例えばヤフージャパンさんは新卒採用にあたる枠を「ポテンシャル採用」と呼んでいます。その条件は、「応募時30歳以下かつ入社時18歳以上で、20◯◯年◯月までに入社可能な方」だけなんですよね。もしかしたら弊社も、その方向にシフトするかもしれません。
完全に思いつきだったんですが、大企業と同じ思考を持ってるってことですよね。僕スゴくないですか?
根本にあるのが「めんどくさい」なので、同じ思考ではないと思います。
まとめ
いかがでしょうか。今回それぞれが発表した意見はもちろん個人の考え方ですので、特に当事者となる方々には異なる思いがあるかもしれません。
ただ、多様な価値観が認められつつある現代社会で、従来と違った取り組みが始まること自体はよいことなのではないでしょうか。
もちろん前例がない分、さまざまな問題や不安はつきものです。しかし、より自由な発想が受け入れられることにもつながっていくと思います。
お話を伺ったお二人も「多様な選択肢の重要性」を感じているようでした。ルールを柔軟に変化していくことで、日本の就活自体もよりよいものになっていくかもしれません。
企画・編集:ノオト
関連リンク
就職活動はつらいのクチコミ・掲示板 - みん就(みんなの就職活動日記)
著者:ヤスミノ
新潟出身。大学卒業後、地元の企業で3年ほど勤めていたが、いろいろあって東京でフリーライターに。フォークリフト免許を有している。
Twitter:https://twitter.com/yasumino_boy

コメント