1月31日『ハケン占い師アタル』テレビ朝日系)の第3話が放送された。

今回、スポットが当たったのは品川一真(志尊淳)。制作Dチームのベテラン社員・上野誠治(小澤征悦)の下につくもパワハラまがいの扱いを受け転職を熱望している入社1年目である。

キラキラしてない志尊淳と実は正論の小澤征悦
「ここは自分の居場所なのか?」
品川の抱える苦悩は多くの人が抱える悩みでもある。それだけに、今回は生々しかった。

本当はキラキラオーラが凄い志尊淳なのに、品川はどんよりし切っている。「ここは俺がいる場所ではない」と思いながら働いているから当然だ。身につまされるなあ……。こんなことを思ったのは、筆者も1度や2度じゃないからだ。

当然、この意気は仕事のクオリティに影響する。彼の作った企画書は、ネットに転がっている文言をコピペして出来上がったものだった。当然、上野からは厳しいダメ出しだ。
「前から思ってたけど、お前仕事ナメてんじゃねえのか? 『こんなもんクライアントに出したら、うちの会社の信用ゼロです』ってはっきり言ってやれよ、この甘ったれた奴に!」

「ここは自分の居場所ではない」と思っている品川は、声優を目指す彼女のインスタグラムを仕事中に見てため息をつく。それを見つけ、ダメ出しをする上野。
「上司や同僚が自分のフォローしてくれてんのに、お前なんでこんなもん見てんだよ」
「結局、ラクしたいだけなんだよ。つらい現実から逃げたいだけなんだよ! そのくせ『自分の権利だけはちゃ〜んと認めろ』ってか? ふざけんじゃねえよ! 自分で変わる気がなきゃ仕事できねえ奴は一生できねえまんまだから! いいかげん逃げてねえで、テメエの仕事とちゃんと向き合えよ」
上野の圧は強すぎる。パワハラの範疇に入ると思う。ただ、悲しいかなド正論なのだ。「お前に欠けてんのはコミュニケーションスキルと覇気なんだよ!」のダメ出しも然り。品川のことを見抜いてはいる。

課長の大崎結(板谷由夏)へ必死のアピールで上野のアシスタントを外れた品川。代わりに付いたのは目黒円(間宮祥太朗)だった。上野からの矢継ぎ早の指示に目黒はてんてこ舞いだ。
品川 目黒さん、めっちゃ大変でしょ(笑)?
目黒 そんなことないよ! こんなに命令されるの初めてだから嬉しいし。
品川 でも、あんな言い方する必要ないじゃないですか。イチイチ偉そうだし。
目黒 でも、勉強になるからさ!

品川と同様に強い圧を受けた目黒。でも、結局は本人の受け取り方次第ということを目黒は証明してしまっている。
逆に、声優志望の彼女に対する品川の態度がひどいのだ。
「こっちと違って適当に遊んでるくせに」
「言っとくけど絶対無理だかんな、声優で食ってくのなんか!」

今回も、例によって的場中(杉咲花/以下、アタル)は品川を占った。品川の過去を遡るアタル。大学時代、演劇の稽古中に品川は周りへ当たり散らしていた。
「本当わかってねえな。俺がやりたいのはそういう芝居じゃねえんだよ!」
「お前らがそんな態度取るんだったら、こっちから辞めてやるよ!」
思い通りにいかないと感情をぶちまけ、全て周りのせいにして生きてきた品川。そして、居場所をなくしてしまっていた。最低だ。けど、わかる。“あるある”だと思う。自分の中にも品川がいるから、見ていていたたまれなくなってくる。

品川 じゃあ、他の奴はちゃんとわかってるわけ? 今やってる仕事が正解だって。
アタル そんなわけねえだろ。この世に1人もいないっつうの、何が正解かわかって生きている奴なんて。

サンプリング当日、退職願を出していた品川が現場へやって来た。彼女が家を出て「服は後で取りに来る」と言っていたのは伏線だ。品川は彼女のその服を借り、女装姿で現れたのだ。
サクラがいたほうが、人も集まってくると思って……」
演劇に打ち込んでいたが、逃げて居場所をなくしてしまった品川。女装という形で過去の後悔を糧にし、目の前の仕事を“正解”にしようと奮闘している。
「これが……俺の仕事だから」

サンプリング後、クライアントが会社へお礼を言いに来た。思わず、品川は泣き出した。わかる。仕事が報われた瞬間って泣く。

アタルが横柄になる理由
アタルの母・キズナの素性が、今回ほんの少しだけ露わになった。占いが終わり、客が帰った後に態度が豹変するのだ。受け取った料金を手で確認しながら吐き捨てた。
「最近の若い奴は甘っちょろいっていうか、話聞いてるだけで疲れるわ!」

過去のことを触れられるのが大嫌いなアタル。母親の言いなりになり、“天才占い少女”としてメディアに持て囃されていた頃に戻りたくないと思っている。

占いが始まると、口調も態度も上からになるアタル。普段はあんなに優しくて快活なのに。
占いのときは優しくて、普段は毒々しい母親と真逆なのだ。彼女はキズナと正反対をやろうとしている。過去を忌み嫌って「母親のようになりたくない」と思うがあまり、占い中の横柄な態度に行き着いてしまったのかもしれない。結局、10万円も受け取ってないし。

アタルが神田和実(志田未来)に授けた助言は「誰にでも自分にしかできないことが必ずある」、目黒に授けた助言は「少しは大人になれよ!」、品川には「逃げてばっかりいる奴に自分の居場所なんか見つかるわけないっつうの」と檄を飛ばしていた。
全て、アタル自身にも当てはまる言葉なのだ。じゃあ、アタルが道に迷った時には誰が助けてくれるのだろう? それは、全員がアタルに占われた後のDチームであってほしいと思う。

次回、第4話の主役はいよいよ上野誠治。今までの3人は若さゆえの悩みを抱えていたが、上野はとっくに若くない。
品川が戻ってきたとき、上野からは照れと戸惑いと嬉しさがにじみ出ていた。今の時代に合っていない面倒くさいこのおじさんとアタルが対峙すると、どんな変化が起こるのか? 決して根が悪い人ではないので、アタルの占いでもっといい上司になってくれるといいと思う。

筆者は品川の気持ちがわかる。そして、上野や大崎の立場についてもわかってしまう。会社や実社会のことを映し出すのが、このドラマの本分だ。タイトルが「ハケン占い師アタル」なので、占いで起こるミラクルを期待する人は多かったと思う。だから、当てが外れた感を覚える人もいるかもしれない。でも、仕事で苦しみやつらさを味わっている人には刺さるドラマ。今回の品川は多くの人と同じ苦悩を抱えていたから尚更だった。
(寺西ジャジューカ)

木曜ドラマ『ハケン占い師アタル』
脚本:遊川和彦
主題歌:JUJU「ミライ」Sony Music Associated Records
音楽:平井真美子
ゼネラルプロデューサー:黒田徹也(テレビ朝日
プロデューサー:山田兼司(テレビ朝日)、山川秀樹(テレビ朝日)、太田雅晴(5年D組)、田上リサ(5年D組)
演出:遊川和彦、日暮謙(5年D組)、伊藤彰記(5年D組)
制作協力:5年D組
制作著作:テレビ朝日
※各話、放送後にビデオパスにて配信中

イラスト/Morimori no moRi