第19週「10歩も20歩も前進です!」 第107回 2月7日(木)放送より
脚本:福田 靖 
演出:安達もじり
音楽:川井憲次
キャスト:安藤サクラ長谷川博己、内田有紀、松下奈緒、要潤、大谷亮平
     桐谷健太、片岡愛之助、橋本マナミ松井玲奈、呉城久美、松坂慶子、橋爪功、瀬戸康史ほか
語り:芦田愛菜
主題歌:DREAMS COME TRUE「あなたとトゥラッタッタ♪」
制作統括:真鍋 斎

107話のあらすじ
◯萬平さん(長谷川博己)の麺作り、めざましく進歩する。
◯忠彦さん(要潤)に抽象画の時代がやって来た。
◯吉乃(深川麻衣)、モテモテ。
の3本でした。

なんやこの妄想集団は
「そうだ そうだ 勉強が必要だ」と再認識する萬平。
図書館で勉強してきた萬平さん。がぜん、知識があがって名案が浮かんで来ました。
天才的ひらめきは勉強するよりも前に降ってくるもの。勉強はあとから……ってことが凡人には理解しがたいのですが、最初の頃、図書館で勉強していたのはなんだったのでしょうか。スープの勉強だったのでしょうか。
朝ドラーメンは忠彦の抽象画のように想像の斜めうえを行き過ぎています。
こどもたちの前で、いかにも台詞調に言っていたから、こどもに勉強させる作戦なのかもと深読みしておきます。

萬平は福子(安藤サクラ)と久しぶりにゆっくり散歩、その流れでパーラー白薔薇を訪れます。
いつもおしゃべりばかりしていて、働いているようにあまり見えない福子が、萬平の前では、福神漬補充しておきました、とか言って、しのぶ(牧瀬里穂)に「よう働いてくれてほんま助かるわ」と感謝されているところを、萬平が見てにっこり。
ここでも、前述の、こどもに勉強させようとしているのかも? と考えてしまったのと同じく、しのぶと福子が結託して、萬平に福子がよく働いていることを印象づける作戦を行っているようにも感じちゃいました。

なんやこの妄想集団は
世良がやって来て、即席ラーメンなんか売れないと相変わらず否定していますが、萬平は「ぼくには見える」と言い出します。二度ほど繰り返された占いエピソードがここに生かされているようです。福子もしのぶもアキラ(加藤雅也)も「見える」「見える」と未来を想像。「なんやこの妄想集団は」と世良を辟易させました。

世良は、即席ラーメンを否定するために、戦争の話をします。
「最初から勝ち目のない戦をはじめて結局負けてもうた日本軍と一緒やぞ」
パーラー白薔薇では男たちがときどき戦争に日本が負けた話をします。これにも意味があるのかないのか気になります。明るく振る舞っているけれど男たちはずっと気にしていると言いたいのでしょうか。それが、発明、技術開発、高度成長にもつながっているということなのかなと意味を探そうとしてしまうのですが、ぱっと見、レトロぽいとはいえ、時代感がよくわからないこのドラマ、この台詞があることで戦後なのだとわからせるためなのかもしれません。

“勉強”も“働き者”も“戦争”もすべて、こちらの考え過ぎで、忠彦さんのように「意味なんてない」。ただ「ウキウキした気分になる」ことを目指しているだけかもしれませんね。

不可逆性を作家はどう書く
スルメにお湯をかけたかてイカには戻らない」
鈴(松坂慶子)も世良もそう言います。
宮藤官九郎さんの朝ドラあまちゃん』、ちょうど同じ19週で(過去にやったことは)「取り返しがつかない」「逆回転できないもんね人生は。壊れたら壊れっぱなし。もう元には戻らない。残念でした」と春子(小泉今日子)が言っていました。その後、21週でユイちゃん(橋本愛)が「逆回転してよ!」とアキ(当時能年玲奈)に言うのが切ないんです。
坂元裕二さんの「カルテット」1話では、論高(高橋一生)が「(唐揚げに)レモンするってことはね、不可逆なんだよ」と言います。
福田靖さんは「不可逆」を「スルメにお湯をかけたかてイカには戻らない」と書きました。
時間の不可逆性を、作家がどう台詞で言うか興味深いと感じましたが、107話はなんといっても、萬平が研究の結果、麺を蒸して乾燥時間を短縮することを発見、パリパリに乾いた麺にお湯をかけて「とりあえず 3分待とう」と言うところです。
いよいよできるか、即席ラーメン。待ちきれません!
(イラストと文/木俣冬)

連続テレビ小説まんぷく
NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~

朝夕、本放送も再放送も オールBK制作朝ドラ
べっぴんさん」 BS プレミアムで月〜土、朝7時15分から再放送中。
エキレビ!べっぴんさんレビュー

あさが来た」 月〜金 総合夕方4時20分〜2話ずつ再放送
エキレビ!あさが来たレビュー

イラストと文/木俣冬