無実であるのに、犯罪者として扱われてしまう冤罪の恐怖。そこに立ち向かう一人の若き弁護士の活躍を描く「イノセンス 冤罪弁護士」(毎週土曜夜10:00-10:54、日本テレビ系)。その主演を務める坂口健太郎は、不可能に近いとされる冤罪弁護に積極的に立ち向かう弁護士の黒川拓を演じた。そして、その黒川拓の人物像に対し、「やわらかいドライアイスのような男の子」と表現する。

【写真を見る】黒川拓と似ている!?「拓の気持ちはよく分かります(笑)」

――今のところ第3話まで放送されていますが、黒川拓というキャラクターをどう捉えていますか?

最初に台本を読んだときは、ゆるくてマイペースな印象があって。でも、冤罪事件に対しては誰よりも熱い思いを持っているので、見ていると冷たいけれど、触ると熱いドライアイスのような男の子なのかなと思っていました。それが実際に演じるうちに、“ドライアイスのような男の子”に“やわらかい”という言葉が足されるのが拓なのかなと思うようになりました。

――普段の拓は服装を含めてマイペースかつ、ひょうひょうとした感じで、相棒である新人弁護士の和倉楓(川口春奈)を振り回す存在です。それが法廷シーンになると敏腕弁護士的にというか、一気に雰囲気が変わるのかなと思ったら、意外と拓は拓のままでしたね。

普段の拓と法廷での拓にギャップをつけ過ぎたくなかったというのはあります。拓は弁護士として法廷には立つけれど、それも彼の生活の一部でもあるので、普段と法廷での姿を別人のように見せたくなかったんですよね。

――そんな拓の普段の姿を表わすエピソードとして、弁護士事務所の拓の机に積み重ねられた資料やおもちゃ(?)が楓の机に雪崩を起こすシーンが毎回ありますね。

あれは撮影するのが結構大変なんです。きれいに雪崩が起きないといけないし、一回雪崩を起こすと元に戻すのも大変で。毎回、美術さんが苦労されています(笑)。

でも、拓としては机が汚いとか、散らかっているとは思ってないんですよね。周りからしたら散らかっているようにしか見えないのかもしれないけど、拓からしたら単にモノが多いというだけで。僕もそういうタイプなので、拓の気持ちはよく分かります(笑)。

――拓は日本の司法制度では異例の3年で5件もの逆転無罪を勝ち取ってきた凄腕の弁護士ですが、第3話で描かれた病院の医療ミス事件では敗訴してしまいます。それまで勝敗に対する感情が希薄に見えていた拓がわかりやすく落ち込んでいる姿は意外でした。

これから拓の過去に関してもいろいろ明らかになっていくと思いますが、拓が自分の感情をどこまで出し、どこまで隠しているのかは、僕自身も実際に演じてみないと分からない部分がありました。

ただ、第3話の法廷シーンを撮影しているときに、自然と涙があふれてきたんですよね。芝居中に涙を流すということではなく、スタジオにいられないぐらいに泣いてしまって。それは平岳大さん演じる雲仙医師は、本当は少女を救いたかったはずなのに、彼のせいで少女が死んでしまったと言われて本当につらかっただろうなと思ったからなんですけど、そのときになぜ拓が冤罪事件にエネルギーを燃やすのかが少しだけ分かった気がします。それはとても不思議な感覚でした。

――拓を演じていて難しいと思うところはありますか?

第3話の最後、裁判に敗訴して落ち込んでいる拓もそうですが、この先の回で拓が怒りを露にするシーンがあるんですね。そのときに拓はどう怒りを表わすのかは難しかったです。それこそ最初に拓は“やわらかいドライアイス”のようだとお話しましたが、あまり感情をストレートに出すタイプの人間ではないと思うので。しかも、過去の事件が拓に影響を与えているのもあって、拓が怒るシーンは特に難しかったですね。

――確かに、普段は柔和な拓が怒りを露にするのは想像できないですね。

でも、拓の中には無実なのに罪を着せられてしまうことに対する怒りは確実にあって。だからこそ冤罪事件に対する情熱がものすごくあるのだと思うし、そこにフォーカスしているからこそ、その跳ね返りで出てくる感情が大きいのかもしれません。

――では、これから放送される第4話の見どころを教えてください。

第4話では東京湾沖の島で起きた殺人事件が題材になっています。第3話でもそうでしたが、誰かが亡くなっている事件の弁護は本当につらいんですよね。だけど、拓がやっていることは一貫していて、冤罪を勝ち取るための証拠と証言を集め、裁判でそれを証明すること。だから、ゲストの皆さんに物語を動かしていただいているところがあるのですが、第4話は特に切ない物語になっていると思います。

あと、これからさらに拓の過去が明らかになっていきますし、拓と父親・真(草刈正雄)の関係や、大学の先輩と後輩だった秋保(藤木直人)との関係、そして川口春奈さん演じる楓とのバディ感も深まっていくと思うので、そこにも注目して見ていただければと思います。

――ちなみに、メーンキャラクターが温泉地の名前になっているとSNS上で話題になっていました。坂口さんは気付いていましたか?

いや、僕自身も気付いていなかったんですけど、何でこんなに言いにくい名前なのかなとは思ってました(笑)。それでプロデューサーさんに聞いたら、温かみのある名前ということで温泉に合わせた名前になったみたいですね。ちなみに、容疑者として登場していただくゲストさんたちの役名は、温泉地ではなく火山の名前になっているそうです。

――そういった役名や第1話に出てきたフィギュアの「企業戦隊サラリーダー」を含め、このドラマはネーミングセンスが抜群ですね(笑)。

第4話には“わさミョーちゃん”というナゾのキャラクターも出てきます(笑)。物語的にはちょっと重いテーマを扱うこともありますが、そういったクスッと笑える要素もたくさんあるので、楽しんでいただけるとうれしいです。(ザテレビジョン・取材・文=馬場英美)

ドラマ「イノセンス 冤罪弁護士」(毎週土曜夜10:00-10:54、日本テレビ系)で主演を務める坂口健太郎