「2012年12月に人類は滅びる」という古代マヤ文明の予言が話題になった昨年末。幸いにも予言は的中せずに新年を迎えているが、気を緩めてはいけない。

キミは中国に「中国版ノストラダムス予言」とも呼ばれるほど名高い『推背図(すいはいず)』があるのをご存知だろうか? 中国占術学の大家・深川宝琉(ほうりゅう)氏が解説する。

「『推背図』は7世紀の唐時代に宮廷に使えた学者、李淳風と袁天網が書いたといわれます。このふたりは古代中国で最高水準に達した占星術や天文学全般の知識に通じていただけでなく、優れた未来透視能力を持っていたのでしょう。その超能力を駆使してまとめた『推背図』は、もちろん皇帝だけしか読めない門外不出の極秘文書でした。一般に流出し始めたのは13世紀の元王朝時代ですが、異常に的中率が高いため表向きには禁書扱いされていたようです。現代日本であまり知られていないのはそのためです」

その気になる内容とは、どのようなものなのか?

「内容は、60年周期で自然・人間界の運勢は繰り返すという『十干十二支』の考え方にもとづいて、六十の『象』(章)で構成されています。それぞれの象は、予言の『識(しん)』と補足説明の『頌(しょう)』というふたつの漢詩文、それに謎めいた一点の絵図で表現されていますが、これらの詩文はノストラダムス予言書と同じく暗号のようになっており、内容を理解するには広い漢文の知識と推理力が必要です」(深川氏)

そんな『推背図』は日本の中国侵攻と太平洋戦争勃発を的中させたとされ、ほかにもチンギスハンの中国侵攻(1211年)、朝鮮戦争勃発(1950年)、中国の文化大革命1966年)、湾岸戦争・東西冷戦の終結(19901991年)などを的中させてきたといわれている。

もちろん、2013年の中国に関する予言もある。該当する「象」は【第三十象】だ。そこには漢詩でこうある。

讖いわく


半圭半林


合して生変す


石もまた霊あり


生じて栄え死して賤しむ

頌いわく


一を欠して成らず先を占う


六龍親しく御して胡辺に至る


天心また人心の順(従)うを見る

加えて、絵図には恐ろしげな虎が描かれている。この第三十象は、15世紀半ばの明王朝時代に英宗皇帝がモンゴル軍に拉致された大事件「土木の変」を予言したものとされている。確かに「半圭」「半林」で「土木」になるから、『推背図』の精度には驚かされるが、現在、再びモンゴルが中国本土深くへ攻め込む可能性は非常に低い。

「『半圭半林』という記述に符合するかのように、中国南部には桂林市があります。おそらくこれは桂林地方で中国を二分するような大紛争や反乱が近々に起きるということの暗示です」(深川氏)

桂林市は中国南部の原住民である広西チワン族の自治区にあるが、昨年12月にはここで1000人が参加する暴動が起き、警察車両が破壊されている。今年、この暴動がさらに大きくなったら、深川氏の解釈と見事に合致する。

「頌の説明にある『天心また人心の順(従)うを見る』、すなわち『天心(=共産党)が、再び民衆からの信頼を回復する』という記述は、現実の政治を見る限り希望的観測でしょう。実際には『相克相生馬前まず』。要するに、中国国内の反政府勢力や外国とのパワーバランスが拮抗して、先の手が打てない膠着状態が続くという意味ではないでしょうか」(深川氏)

さらに深川氏は、2013年は十干十二支でいうところ「癸巳(みずのとみ)」にあたる点にも注目する。

「癸巳の“癸”は一揆につながる言葉。古代中国では、宰相を『癸職』と呼び、“一揆”が起きない政治が求められました。ここから見ても、2013年に大きくクローズアップされるのは、やはり激化する民衆デモだと思われます。どちらにしても総書記に上り詰めたばかりの習近平にとって、早くも今年は政治生命をかけた正念場になるでしょうね」(深川氏)

2013年、中国の危機は民衆の暴動から起こる。『推背図』のそんな予言は、中国の現状と比べても、驚くべきことにほとんど違和感はない。

(取材・文/有賀 訓)

■週刊プレイボーイ3・4合併号「世界最強予言書『推背図』が語る2013年中国の悲惨なる運命」より

桂林市では暴動が多発。推背図の第三十象に書かれている「半圭半林」は、やはり桂林市のことを指しているのか?