広告規制が最も厳しいと言われるパチンコ業界。以前は設定を示唆するなど“やりたい放題”な感があったのは否めない。だが、ギャンブル業界という括りで見ると、パチンコ業界の広告規制は“異常”なレベルとも言われている。集客には広告は必須。やがて開業する日本版IR、カジノの広告規制なども含め、POKKA吉田氏&木曽崇氏のギャンブル界のご意見番がギャンブルと広告について語った。

パチンコよりも広告規制が厳しいカジノ。広告は一切禁止!?

──日本のギャンブル業界において、いちばん広告規制が厳しい業種はどこなんでしょうか。

木曽崇:僕の専門分野であるカジノがいちばん厳しい。IR整備法の中で、マス広告を打っちゃいけないというルールが制度上あるんですよ。マスコミに向けた広告はもちろん、屋外看板やポスター貼りもダメ。韓国のセブンラックカジノは、銀座や渋谷あたりで広告トラックを走らせていますが、日本のカジノはできません。

POKKA吉田:パチンコの場合は、誤解されないように説明しますと、警察が法律だけでいくってことは基本無くて、条例違反とセットにする。風営法っていうのは、著しく射幸心をそそるおそれのある広告宣伝をパチンコ屋に禁止するなんて文言はないんですよ。風営法がパチンコ営業者に「著しく射幸心を」云々と直接禁止してるのは20条1項だけで、「著しく射幸心をそそる恐れのある遊技機を設置して営業してはならない」としか言ってない。

木曽崇:広告について書いているのは風営法16条で、「風俗営業者は、その営業につき、営業所周辺における清浄な風俗環境を害する恐れもある方法で広告又は宣伝をしてはならない」とあるだけですからね。

POKKA吉田:ただ全国の都道府県の風営法施行条例では、著しく射幸心をそそるおそれのある行為を、パチンコ屋に禁止してるんです。その中に広告も含まれるかどうかは、各警察本部のさじ加減。風営法解釈運用基準は公表されてますけど、ほとんどの都道府県は風営法施行条例に対する解釈基準なんて、作ってもないし公表もしてません。

パチンコ雑誌では「高設定」も禁句に!?

──とはいえ、警察庁は’11年と’12年にことこまかな通達を出すほど、パチンコ屋の広告にはナーバスになってるんですよね。

POKKA吉田:この業界では、「玉を出します」と直接的には広告打てないぶん、「ビッグウェーブが来る!」なんて言い方したり、設定6を匂わせるための表現も数多くありましたね。そんなところに東日本大震災が起きたわけですから、「なんつー広告してるんや」っていう世間からのバッシングが重なり、警察庁としてももうそろそろええ加減にしろよって話になって、あの通達が出たんです。

木曽崇:その結果として、パチンコ業界の広告は、今は過剰規制になっちゃってて、わけわかんない。全部、「疑いがある」「可能性がある」って、あらゆる広告表現を規制しちゃってるんだけど、他の業界と比べたら異常だよ。だって「7という数字は使ってはいけない」とか「数字を重ねて使ってはいけない」とか。なんなのそれって首をかしげちゃう世界だから。

POKKA吉田:昭和のパチンコ屋は縁起をかついで、「死ぬ」と「苦しい」に通じる4と9を忌み番号にして避けてたんですよ。1、2、3番台が並んでいて、その隣は5番台だったんやから。今やもうそんなん無理やんね。7もダメ、6もダメとなったら、1、2、3、5、8しか使えなくなる(笑)

──そういう業界に忖度しているパチンコ雑誌の表現も奮ってますよ。ライターが都内のパチンコ店で実戦するという記事を見たんですが、「ベルの出現回数が何回でチャンスゾーンの突入率も高いから、夕方5時の段階で設定●を確信した」って、たぶん「設定6」の部分が伏せ字になってるんです。他のページでも、「前日出てなかった台の●設定上げ狙い」って、「高設定」を伏せ字処理。AVの「女子●生」かよと(笑)

木曽崇:僕はどちらかというと、各業界ごとの広告規制基準の差異が気になりますね。特に僕はカジノ屋なので、自分たちの産業はこれだけの広告規制を受けてます。だけど、少なくとも同じギャンブルである公営競技に関しては、同じルールが適用されなきゃおかしいでしょう。公営競技なんて、日本では法律上まさに賭博であるにもかかわらず、ものすごい広告を打ってるじゃないすか。一方で、賭博以下の射幸性であると位置付けられているパチンコは、さきほども言ったようにえらい広告規制を食らってる。同じく賭博として合法化されたカジノはほぼ広告しちゃいけないって言われてる。

POKKA吉田:公営競技は広告制限がないから好き勝手やってますよね。パチンコだったら完全にアウトな言い方や表現の広告がバンバン出てる。それと、公営競技では昔から、買い目を教えてくれる予想屋さんっているじゃん。「こんなに当たるなんて!」とかってスポーツ紙に広告打ってるやん。俺、若い頃に大阪の競馬の予想屋の面接を受けたことがあるんやけど、実は仕事のほとんどが「当たんねえじゃねえか!」って怒ってる客へのクレーム対応なんだって。あんなんでも広告出せるんですよ。でもあれを違法にするなら、レース場に行くと200円くらいで買い目を教えてくれる予想屋のおっさんは、どうなのか。中央競馬を除いた公営競技は、買い目を教えてくれる人はみんな場内にいるからね。広告出してる予想屋と、場内の予想屋とどう違うねんって言ったら、法律のたてつけは難しいよ。相手がマスなのか現場なのかだけの違いでしょ。少人数に対してやるぶんには合法やけど、マスが相手やったら違法だって、そんなんややこしいよ。

──公営競技の予想屋の存在意義ってなんなんでしょう?

POKKA吉田:男はつらいよ』の寅さんみたいに口上がうまくてさ、ずーっと聞いちゃうんだよ。「そっから、私の言ってる買い目がほしい人は200円!」って。そこで人がワァ~と集まってくるのは、おもしろい光景ですよ。

木曽崇:それ自体がエンターテイメント。ガマの油を売るのと一緒だよな(笑)

POKKA吉田:たぶん予想の中身よりも、口上にお金を払ってる。テキ屋と一緒だよね。でも、もしも一律ギャンブルの広告がダメだとなると、こうした日本の文化は浸食されていくだろうね。

木曽崇:僕の立場としては、なんでカジノだけこんなに厳しくされなくちゃいけないんだと言い続けていくしかない。広告を規制するにしても解禁するにしても、ギャンブル関連の全業種を対象にして論議すべきだというのが、僕のスタンス公営競技は、マスコミ側の自主規制はあるんだけど、基本的に彼ら自身の業界側の規制ってないんです。彼らはもともと役所の人たちだから、自分たちが規制される立場だと思ってないところがあるんですよね。

POKKA吉田:制限をつけるっつうなら、手法はいっぱいあるんだよね。たとえばIRにしてもパチンコにしても、許された範囲のなかでは看板も出していいとか。パチンコ屋の場合は営業許可の要件があるんだから、その要件内は立て看板を出してもいいけど、そこから出たら違法だぞーみたいなんはありやとは思う。

木曽崇:カジノは、外国人を対象とするものを除いて整備区域という指定された区域のなかでしか看板やポスターを貼れないというルールなんですよね。その一方で、ギャンブル等依存症対策基本法下で、各公営競技がいろいろプレゼンしてるわけですよ、われわれはギャンブル依存症の対策としてこういうことやってます、って。

POKKA吉田:パチンコ業界には広告協議会っていう業界団体があって、2011年2012年警察庁通達を軸に自主的にガイドラインを作ってます。そういうところで、「依存症対策として、こういう広告をこういう媒体にこんだけのマス相手にやっちゃダメだよね」ってルールを作ってしっかり守っていくというのが、法改正や条例改正よりも、業界の統制的にはいちばん手っ取り早いと思います。

──そういうのが広告規制の健全なゴールシナリオになりそうですね。

POKKA吉田:そうなったらいいなって話やけど、なにしろ集まってる連中というのが、多くはもともとチキンレースの参加者やから、どうなることか……。

 これからのパチンコ業界、引いてはギャンブル業界を巡る広告規制はどうなっていくのだろうか。依存症対策と共に避けては通れない問題ではあるが……

取材・文・構成/野中ツトム、松嶋千春(清談社)

かつては設定や甘釘を示唆するイベントを告知して、社会問題にもなったパチンコ業界。現在は厳しい規制がある