人類で初めて月に降り立ったニール・アームストロングにスポットを当て、その偉業が達成されるまでを描いた『ファースト・マン』が2月8日(金)より公開となる。歴史的大一歩の裏側を描く本作同様に、これまでも宇宙開発の史実に迫った作品は多数作られてきた。そこで今回は、そんなロマンと危険に満ちた歴史を映画から学んでいきたい。

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■ アメリカをリードしたソ連の功績

第二次世界大戦が終わり、冷戦時代を迎えると、アメリカとソ連は、軍事的利用が可能な宇宙開発をめぐる競争をスタート。アメリカが技術的な問題を抱える中、ソ連が一歩リードし、1957年10月4日、世界初の人工衛星スプートニク1号の打ち上げに成功する。そのわずか1か月後の1957年11月3日には、初めて動物を乗せて地球軌道の周回に成功したスプートニク2号が打ち上げられた。

マイライフ・アズ・ア・ドッグ』(85)は、このスプートニクショックに揺れるスウェーデンを舞台に、幸の薄い少年の成長を描いた物語。本作で、自分の人生について「ソ連の人工衛星スプートニクに乗り死んだ、かわいそうな犬ライカ。…僕の人生は、それよりまだ幸せ」という少年の諦念の言葉が登場していることからも、当時このトピックが、いかに影響力を持っていたかを理解することができる。

その後もアメリカの一歩先を歩んでいたソ連は、1961年4月12日、ついに“地球は青かった”の名言で知られるユーリイ・ガガーリンを乗せたボストーク1号による史上初の有人宇宙飛行を達成する。

彼の生誕80周年を記念し、ロシアで製作された『ガガーリン 世界を変えた108分』(13)では、貧しい農家に生まれた幼少期から、3000人以上の空軍パイロットの中から選抜された20人の候補生の1人として訓練に挑む様子、そして宇宙での108分間の飛行を終え地球に戻ってくるまで…彼の人生にスポットライトを当て、その偉業の全貌を描いている。

マーキュリー計画の選ばれし男たちと、影から支えた女たち

一方、宇宙開発で出遅れていたアメリカだったが、スプートニクショック以来、早期にアメリカ航空宇宙局(NASA)が創設され、マーキュリージェミニアポロなど、現在のディスカバリー計画に至るまで、数々のプロジェクトが実行されてきた。

『ライトスタッフ』(83)は、有人飛行を目的とした「マーキュリー計画」の飛行士として選ばれた7人の男たちを題材にしており、1961年にアメリカ初の有人宇宙飛行を行ったアランシェパードから、アメリカ人最後の単独飛行となっているゴードンクーパーまで、“マーキュリー・セブン”と呼ばれたパイロットたちが、NASAへの不満や意見の対立などを乗り越え、次々と宇宙へと飛び立っていく姿が描かれている。

同じく、この「マーキュリー計画」を題材としているのが『ドリーム』(16)だ。本作は、NASAで計算手として働いていたところ、優秀な頭脳を買われてスペース・タスク・グループの一員となった黒人女性キャサリンを中心に、3人の黒人女性が職場にはびこる差別と戦いながら、宇宙開発の場で活躍したという知られざる真実を描いている。そんな彼女たちが取り組んでいたプロジェクトが、1962年のアメリカ初となったジョン・グレンによる地球周回飛行。ガガーリンの有人飛行から約10か月ほど遅れての成功となったが、本作でも、ソ連に対するアメリカの焦りなど、当時のNASA内部の様子を確認できる。

■ 前人未踏の偉業、そして“成功した失敗”

1966年3月16日には、続く「ジェミニ計画」で、史上初の宇宙船同士のドッキングに成功したアメリカ。このジェミニ8号に船長として搭乗していたのが、かの有名なニール・アームストロングだ。

『ファースト・マン』は、彼がこの3年後の1969年7月21日に成し遂げることになる、人類初の月面着陸および、他天体からの帰還という偉業を、ミッションの立ち上がりから、過酷な訓練の実態、トラブルによる仲間の死、地球で待つ家族の想いなど、余すところなく活写。アームストロングの知られざる数々のエピソードを細やかに洗い出しながら、誰もが知る“あの瞬間”までを描くことで、この前人未到の計画の新たな側面を感じることができる。

またIMAXの65mmカメラと35mm、16mmカメラを自在に使い分けた撮影や、宇宙船コクピット内部などを再現した徹底的なリサーチなどから成り立つハイクオリティな映像は、まるでアポロ11号に同乗しているかのような、アームストロングの味わった緊張や閉塞感、そして宇宙に解き放たれた開放感を体感することができるだろう。

全6回の月面着陸という成果を残した「アポロ計画」。しかし、宇宙という未知の領域ゆえに失敗もつきものだ。月面探査船計画で、唯一、月に到達できなかったアポロ13号がトピックとなっているのが『アポロ13』(95)だ。船長だったジム・ラヴェルのノンフィクションを原作とした本作は、月面到達まで目前に迫る中で起きた事故により、酸素の流出、電力の低下、クルーの体調不良など、山積みの問題を抱え瀕死状態に陥った宇宙船が、英知の限りを尽くした迅速な対応により、その困難を乗り越えて地球に生還するまでを描いている。

これら以外にも快挙や事故など、数々の歴史的な出来事が起こってきた宇宙開発。2019年は、史上初めてNASAの飛行士を乗せた民間企業スペースX社の宇宙船が打ち上げを予定していたり、同じく民間のボーイング社の無人宇宙船も打ち上げを予定と、革新的なスペースイヤーになること間違いなし。そんな一年を楽しむためにも、これらの映画から、危険と隣り合わせにあるロマンを感じ取ってほしい!(Movie Walker・文/トライワークス)

『ファースト・マン』は2月8日(金)より公開