1月22日に行われた日露首脳会談。日本政府一行はモスクワ市内の定宿に泊まっていた。会談前夜、世耕弘成経産相に誘われ、ホテルのバーに現れた安倍晋三首相。ハイボールを頼んだ世耕氏に対し、首相が頼んだのは意味深な名前のカクテルだった。

シークレットゲスト

 だが、日本は“招かれざる客”を送り込んだようだ。

 安倍首相プーチン大統領のテタテ(通訳のみの首脳会談)後の少人数会合。日本は当初、首相、河野太郎外相、野上浩太郎官房副長官、谷内正太郎国家安全保障局長というメンバーを想定していた。ロシアプーチン大統領、ラブロフ外相、ウシャコフ大統領補佐官、パトルシェフ安全保障会議書記で臨んでくると見ていたからだ。ウシャコフ氏のカウンターパートは今井尚哉首相秘書官だが、ブリーフィング役として官房副長官の同席が慣例となっている。

 ところがロシアは直前になって、「パトルシェフ氏ではない。オレシュキン経済発展相だ。メンバーは4人」と伝えてきたという。オレシュキン氏のカウンターパートは世耕経産相。外されるのは谷内氏だった。結局、谷内氏は少人数会合後のワーキングディナーから参加したという。

「日露交渉の実務は谷内氏=パトルシェフ氏のルートで動いてきました。平和条約交渉の加速で合意した昨年11月の首脳会談にも谷内氏を同席させている。しかしロシアはその谷内氏ではなく、貿易担当の世耕氏を指名した。実際、事前に期待された平和条約の条文策定作業には着手できず、主な成果は日露間の貿易額拡大でした」(官邸関係者)

安倍首相と谷内氏との間にある溝

 ロシアにノーを突きつけられた形の谷内氏。領土問題の進展を半ば諦めているかのような発言も目立つ。毎週金曜夕方に行っている番記者とのオフレコ懇談では、「あんなの無理だ」とべらんめぇ口調で言い放つのがお決まりだ。

「任期中に二島先行返還を実現したい安倍首相との間に溝があるのは事実。谷内氏がパトルシェフ氏との交渉で、首脳会談で合意した内容を後退させることも多く、首相もよく『また谷内さんが……』と苛立っていました」(同前)

 谷内ルートが機能せず、安倍首相プーチン氏との“シークレット交渉”への比重が高まる一方の領土問題。解決への展望はまだ見えない。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2019年2月14日号)

健康問題も囁かれる75歳の谷内氏 ©共同通信社