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 気分がよい状態は、心だけでなく体も健康にしてくれる。じつは面白いことに、「気分がよい」という状態は、文化によって必ずしも同じではないようである。

 アメリカ人の場合「気分がよい」状態について、ワクワク・ドキドキしている状態、つまり「高覚醒ポジティブ(HAP)状態」だと感じることが多い。

 ところが、日本人の多くは、正反対で、心静かに穏やかでいられる状態、つまり「低覚醒ポジティブ(LAP)状態」を気分がいい状態と感じているそうだ。

 統計なので個人差もあるだろうが、大多数のアメリカ人と日本人の「気持ち良い」状態は違うということだ。

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日本とアメリカの感情の差異

 ということは、健康的な活動と言った場合、アメリカ人ならフィットネスやパーティのような刺激的な活動で、日本人ならお風呂のようなまったりと落ち着ける活動のことなのだろうか?

 この疑問を取り上げた『Emotion』に掲載された研究論文は、こうした日米間の文化的な差異をはっきりと示している。

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日本・アメリカ間のHAP/LAP活動と健康との関連を調査


 気分のよさとその健康への影響の文化的差異を調べるために、米スタンフォード大学のマガリ・クロバート氏らは、アメリカ人640名、日本人382名から2度にわたって集められた調査データを分析した。

 まず最初に分析されたのは、参加者が味わった高覚醒ポジティブ(HAP)と低覚醒ポジティブ(LAP)、ならびにそうした感情状態を作り出す活動(パーティ/フィットネス/エンターテイメントなど=HAP活動、読書/入浴/祈り/瞑想/美しい景色を見るなど=LAP活動)を行う頻度である。

 さらに、そのときに心と体でどのように感じていたのかも調べられた。

 ついでこの最初の調査から数ヶ月後に、今度は参加者の生体データ(血中コレステロールBMI、炎症マーカー IL-6など)を収集し、あわせて生活の満足感、睡眠、主観的な体の健康、HAP/LAP活動、心の幸福感についても調査された。

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image credit:Clobert et al, 2019

アメリカ人はHAP感情、日本人はLAP感情が健康につながる


 その結果、HAP感情は日本人よりもアメリカ人の健康をうまく予測できた。

 たとえば、アメリカ人のほうが、最初の調査時点でHAP感情を多く味わっているほど、BMIと炎症反応が低い傾向が強かった。

 さらにアメリカ人は、日本人と比べると、HAP活動をたくさん行なっているほど、病気にならず、体調も良好である傾向が強かった。

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 一方、日本人については、HAP感情で健康状態のほとんどを予測できなかった。

 研究者の予想どおり、日本人については、LAP活動の多さと健康(睡眠障害と痛みの少なさ)との関連性のほうがより強く認められた。

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 しかし研究者にとって意外だったのは、LAPと心の幸福感との関連性がより強く確認されたのは、日本人ではなく、アメリカ人のほうだったことだ。

 それなのに、アメリカ人では、LAP活動が多いほど、炎症も多く見られるという矛盾も確認された。

アメリカ人にはワクワク感、日本人には落ち着ける環境なのか?

 ちなみにこの研究論文のタイトルは、「ワクワク感とお風呂:ポジティブな健康効果の土台となる日米独自の経路か?(Feeling excited or taking a bath: do distinct pathways underlie the positive affect-health link in the US and Japan?)」である。

 そして研究者の答えは、「半分イエス」だ。

 調査から判明したのは、望ましい感情の状態やそれを与えてくれる活動と、それによる健康改善効果は、文化によって異なるということだ。

 クロバート氏は次のように結論をまとめている。

ポジティブな感情は、特にHAPのような状態を好ましいとする文化的文脈において、より健康を向上させる。

理解の仕方・価値観・感情の解釈の仕方といった観点から異なる文化を体系的に比較すれば、多くのアメリカ的環境ではなぜポジティブな感情が健康に対してこれほど重要なのか、あるいはそれ以外の環境においてポジティブな感情が、肉体的・生物学的・精神的機能にとってどれほど重要であるのか把握できるかもしれない。


 もちろん個人差はある。日本人でもワクワク感の方が健康につながる人もいるだろうし、アメリカ人でも落ち着く環境の方が良いという人だっている。あくまでも統計上のものであるということを踏まえてもらえるとうれしい。

References:There Are Some Intriguing Differences Between The USA And Japan In How Emotions Influence Health – Research Digest/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52270941.html
 

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