昔から「チョコレートを食べ過ぎると鼻血が出る」とよく言われます。この都市伝説のような説について、ネット上では「医学的にも根拠がない」と一蹴する声がある一方、具体的な説明を付けて「根拠がある」とする意見もあります。果たして、実際のところは。鼻血が出るといわれる代表的な4つの“根拠”について、内科医の市原由美江さんに聞きました。

カフェインに興奮作用はあるが…

Q.そもそも、鼻血が出る原因は。

市原さん「鼻血の多くは、鼻の粘膜や血管が傷付くことで起こります。特に『キーゼルバッハ部位』(左右の鼻の穴を仕切る壁の入り口部分)と呼ばれる場所からの出血が多いです。ここは、粘膜が薄く血管が集まっているため出血しやすいのです。

鼻をかんだりぶつけたりといった物理的な刺激のほか、鼻炎などの鼻症状に伴って出血します。高血圧や血液疾患、鼻の奥の腫瘍、血液がサラサラになる薬を飲んでいる人にも起こります」

Q.「チョコレートを食べ過ぎると、血糖値が急激に上昇して血圧も上がり、毛細血管が多い鼻の中の血管が切れて鼻血が出る」という説があります。

市原さん「健康な人がチョコレートを食べ過ぎると血糖値は多少上がりますが、血圧が上がる可能性は低いです。また、高血糖が直接的に鼻血を誘発するとは考えにくいです。

ただし、高血圧の人は、血圧が高いときに鼻血を出すことはあります。また、高血糖や高血圧、脂質異常症などにより、徐々に動脈硬化が進んで血管が弱くなっている人は、鼻血が起こりやすくなる可能性はあります」

Q.「興奮作用があるカフェインを含むチョコレートを食べ過ぎると、血の巡りがよくなって多くの血が流れ、毛細血管の多い鼻の中の血管が切れて鼻血が出る」という説は。

市原さん「カフェインに興奮作用はありますが、全身の血液の流れをよくするほどの効果は期待できません。チョコレートに含まれるカフェインが原因で血流がよくなって鼻血が出るとしたら、同様にカフェインが含まれるコーヒーや緑茶、紅茶などでも鼻血が出ることになってしまいます」

Q.「血圧や心拍数を上昇させる物質『チラミン』がチョコレートに含まれており、食べ過ぎると毛細血管の多い鼻の中の血管が切れて鼻血が出る」という説もあります。

市原さん「『チラミン』には、一時的に血管を収縮させた後に拡張させる働きがあることから、これが鼻の血管に負担をかけて鼻血が出る可能性があるといわれています。しかし、『チラミン』と鼻血の関係を調べた研究はなく、はっきりしたことは分かっていないのが現状です」

Q.「チョコレートを食べ過ぎると栄養バランスが崩れ、体の調子が悪くなるため鼻血が出る」という説は。

市原さん「栄養のバランスが崩れたからといって、鼻血が出やすくなることはありません」

Q.結局、『チョコレートを食べると鼻血が出る』ことは医学的に説明できない、ということでしょうか。

市原さん「医学的に説明することは難しいです」

Q.「チョコレートと鼻血」に限らず、医学的要素が含まれる都市伝説が世の中で語り継がれていることを、医師としてどう思いますか。

市原さん「チョコレートを食べ過ぎると、脂質や糖質が多く高カロリーのため太りやすくなり、特に、子どもでは虫歯の原因になり体によくないため、『食べ過ぎたら鼻血が出る』といわれていたようです。健康に悪いことをしないよう大げさに表現することは仕方ないと思います」

 とはいえ、何事も『ほどほど』が大切。毎年、チョコレートをたくさんもらっているという男性の皆さん、食べ過ぎにはくれぐれもご注意を。

オトナンサー編集部

チョコを食べ過ぎると鼻血が出るのは本当?