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 小さな島国の浸水、山火事や台風の増加、北極の氷の融解など、このところの気候変動はさまざまな困った事態を引き起こしている。

 そして、ある国際的評価からまた新たな非常事態が判明した――全昆虫種の40%が減少傾向にあり、3分の1が絶滅の危機に瀕しているというのだ。

 これまでにも世界各地でクモやムカデを含めた昆虫が苦境にあるらしいことは知られていたが、それがはっきりと確認された形だ。

 その評価によれば、激しさを増す熱波と昆虫の減少とには強い関連が見受けられるという。

 仮にこれが正しければ、世界の生物多様性とっておそろしい意味を含んでいることは想像に難くない。

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昆虫界で起きているカタストロフィ

 1970年代プエルトリコのカリブ諸島で、手つかずの熱帯雨林で生きている昆虫などの節足動物の総バイオマス(ある場所にある生物の量)の計測が試みられた。

 それから40年後、まったく同じ場所をまったく同じ手法で、再度バイオマスの計測がなされた。

 その結果、驚いたことに、節足動物のバイオマスは70年代のそれの8分の1から60分の1にまで激減していたのである。

 だが大虐殺はそれにとどまらなかった。そうした昆虫をエサとするトカゲ、鳥、カエルの類も同様に激減していたのだ。

 生態学者の脳裏には、紛れもない終末の予感がよぎった。昆虫の減少は、過去5億年間で6回目となる「大量絶滅」の兆候かもしれないというのだ。

・6度目の大量絶滅まであと100年くらい?我々は今、大量絶滅の最中にある。 : カラパイア
 昆虫に介在されて行われる受粉は、私たちにとって最も重要な作物や無数の植物にとって不可欠である。

 またタネを撒き散らし、栄養を循環させ、生命全体の網を維持し、食物連鎖のつながりを形成するのも彼らだ。

 こうした生態系の普遍性は、昆虫がわんさかいるからこそ可能になる。

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pixabay

 1940年代、イギリスの進化生物学者、J・B・S・ホールデンは「神は甲虫を大いに愛したまう」と冗談を飛ばしたが、地球上で確認されている種の少なくとも3分の2は節足動物である。

 世界を支配しているのは人間だと思われがちだが、総数で考えれば地球は昆虫のものと言えるかもしれない。

さらなる熱波が昆虫を襲う

 プエルトリコで昆虫が激減しているという事実を知った研究者は、その原因について、殺虫剤から生息地の減少までさまざまな可能性を検討した。

 だが証拠が指し示していたのは、気温の上昇であった。

 プエルトリコの気象台は、過去数十年で徐々に気温が上昇し、平均2度暑くなったことを示している。

 だが研究者がことさら懸念しているのは、こうした徐々に進行する気温の上昇ではなく、深刻さを増す熱波である。

 というのも、ほとんどの生物には耐えられる温度の閾値(いきち)というものがあるからだ。

 たとえばオーストラリアでの研究では、オオコウモリは41度になると熱による強いストレスを受け、必死に日陰を探し、どうにか体温を下げようとばたばた羽ばたくことが分かっている。

 ところがである。そこからたった1度ひょいと温度が上昇してしまうと、突然死んでしまうのだ。

 11月クイーンズランド州北部を襲った42度を超える熱波によって、そこに生息していたメガネオオコウモリのほぼ3分の1が死んでしまった。

 コウモリのコロニーがあったところの下には、おびただしいほどの死体が散らばっていた。献身的にコウモリを救おうとした人たちもいたが、助かったのはごくわずかだった。


Bats fall from trees amid extreme heatwave in tropical Queensland | ABC News

エルニーニョ現象とのつながり

 太平洋の海面温度の変動であるエルニーニョ現象は、世界各地に異常気象をもたらす。

 だが、このことはほんの一面の話にすぎない。長い間、不明とされたエルニーニョ現象温暖化のつながりがどうやら明らかになったからだ。

 『Nature』と『Geophysical Research Letters』に掲載された研究では、温暖化によってエルニーニョ現象が強まっていることが示されている。

 このために、この現象による天候不順で苦労させられてきた地域は、いっそうひどい干ばつや熱波に脅かされているという。

 このことはプエルトリコの件とも関係がある。というのも、昆虫の大量死は、異常なまでに強烈なエルニーニョの熱波が原因だとみなされているからだ。

 この仮説が正しいのだとすれば、温暖化は銃であるが、その引き金を引いたのはじつはエルニーニョ現象だったということになる。

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pixabay

懸念すべきは熱波のみにあらず


 昆虫の激減が生じているのはプエルトリコだけではない。ヨーロッパ、北アメリカオーストラリアなどの各地で行われた調査では、いずれも大幅な昆虫の減少が確認されている。

 そして気候変動がこうした激減を引き起こしている一方で、生息地の破壊、殺虫剤、病原菌の侵入、光汚染といった他の環境の変化も強く関係していることがはっきりしている。

 地球レベルで見ると、昆虫はさまざまな環境要因に翻弄されている。彼らの数ががたがたと減り続けている原因は1つだけではない。

 私たちはこの世界をさまざまに変えてきた。地球で織りなされる生命の布地で多大な役割を果たしている小さな仲間たちは、この危機にもがき苦しんでいる。

References:sciencealert / theconversation/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52271029.html
 

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