“点取り屋役”を求めて移籍を決断 霜田監督も期待大「ずっと点を取って生きてきた男」

 霜田正浩監督が就任して2年目を迎えるJ2レノファ山口で、再起を目指す男がいる。柏レイソルでエースナンバーを背負い、日本代表経験もあるFW工藤壮人だ。指揮官から「彼が得意なことはすべてウチのためになる確信がある」と期待を寄せられるなか、チームのJ1昇格とJ2得点王を目標に掲げた。

 米MLSメジャーリーグサッカー)からJリーグ復帰を果たした2017年、「骨を埋める覚悟」でサンフレッチェ広島へ移籍した。しかし、チームの不振で森保一監督、ヤン・ヨンソン監督と指揮官が交代し、加入1年目はリーグ戦18試合3得点。城福浩監督を迎えた昨季はリーグ優勝を争うなかで自身の特徴と求められる役割のギャップに苦しみ、プロ2年目以降では自己最少となる12試合1得点に終わった。“2年間の葛藤”を経て、山口への期限付き移籍を決断することになったが、霜田監督の熱い言葉とクラブビジョンに心を動かされたという。

「(移籍は)悩みました。ただ、改めてサッカーのやりがいがあるところ、ストライカーとして信頼してプレーさせてもらえる環境に身を置きたいというのがありました。山口はしっかりとしたビジョンを持っているチームで、J1昇格に向けて力を入れている。霜田監督から熱い言葉を頂いて、僕も『監督のために戦いたい』『このチームで成功したい、J1に昇格したい』という気持ちで決断しました」

 山口は昨季J2得点ランキング2位で、チーム総得点の約35%を占める22ゴールを挙げたFWオナイウ阿道大分トリニータへ移籍。霜田監督は新エースとして、“ストライカー工藤”に期待を懸ける。

「彼をウチに誘った時も、彼が一番やりたいこと、一番得意なことができた時に、すべてウチのためになるという確信があって声をかけています。それを粋に感じてくれて、ウチを選んで来てくれた。ずっと点を取って生きてきた男なので、ウチでも点を取ってほしい、あるいは点を取ることに絡んでほしい。もうそれだけです。彼の中でサッカーが楽しくなれば、自然と僕らのチームも勝てると思います」

「前線から引っ張っていくのはマスト。必ずこのチームで一番点を取らないといけない」

 山口は霜田流攻撃的サッカーで昨季J2に旋風を巻き起こしたが、13日の練習でも指揮官は「できるだけシンプルに!」「できるだけ速く!」と大声で何度も指示を出していた。工藤も“攻撃と守備を分けない”スタイルにやりがいを感じているという。

「霜田さんのサッカーは攻守にハードワークして、球際で戦う。そのなかでも、しっかりボールを握って、どんな相手でも自分たちから攻撃を仕掛ける。攻撃をしながら守備をするというような、常に攻撃を意識したサッカーなので、そこに僕も魅力を感じました。なるべく高い位置でボールを奪って、相手の崩れた陣形を突くために、シンプルに手数をかけないことは意識しています。プラスで、自分たちがボールを持って落ち着かせる時間は、しっかり手数をかけてというメリハリはしっかりできていると思います」

 昨季の山口は第19節終了時点でリーグ首位に立っていたが、後半戦は後半アディショナルタイムの失点で勝ち点を取りこぼす試合も増えてしまい、最終的に8位(クラブ史上最高位)でフィニッシュした。工藤は若い選手が多いなかで、チーム全体をコントロールし、牽引するリーダー役も担う。

「僕自身、J2は(プロ)2年目の時に経験している。当時はがむしゃらにレギュラーを目指して柏のためにやっていましたけど、今は年齢も心境も違うので、試合に出て前線から引っ張っていくのはマストだと思っています。今季は必ずこのチームで一番点を取らないといけない。チームとしてはJ1昇格、個人としてはJ2得点王を目指して戦います」

 工藤はストライカーとしての存在価値を証明すべく、山口で新たなチャレンジに挑む。(Football ZONE web編集部・小田智史 / Tomofumi Oda

レノファ山口のFW工藤壮人【写真:Football ZONE web】