ある日突然、死んでしまい、猫として元の生活に戻ったら……。売れない漫画家の高畑寿々男が“あの世”の関所で言い渡されたのは猫になって人生を挽回することだった──。

Kis-My-Ft2北山宏光が、映画初出演にして主演をつとめる映画「トラさん~僕が猫になったワケ~」2月15日に公開される。原作「トラさん」集英社マーガレットコミックス刊)の著者である板羽皆に聞いた。

北山さんが寿々男を演じたら、より憎めなくて、愛おしい人になる

──完成作品はもうご覧になりましたか?

板羽皆(以下、板羽):作品は2回見せていただきました。もう、とにかく感動で、最初っからずっと泣いてました。

──2回ですか。

板羽:1回目は、始まったときからずっと泣いてました。編集さんにもいっぱいお世話になって、迷惑もかけてきたこともあるし、自分のつくった世界が映像になって動いているっていうことの不思議さ、感動もあったし。北山さん始め、多部さん、宏々路ちゃんとか、キャストの方々がとっても、素敵な人ばかりで。そんな方たちにやっていただいてるんだっていう感動もあって。1回目は、いろんなことで忙しくって、とにかく泣いているっていう感じでした。

板羽:2回目はもう少し冷静に見れて、お話もしっかり見たし、でもやっぱり各所泣いて、泣きましたね。やっぱりすぐ泣いちゃうんで(笑)。

──私も拝見しましたが、最後は涙目で会場を後にしました。

板羽:ありがとうございます。うれしい~。

──撮影現場は見学しましたか?

板羽:1回だけ行かせていただいて、最後の方のクライマックスのシーンでした。ある夜に実優が起きてきて…っていうシーンのところだったんですけど。いや~、見学に初めて行って、初めて最後のシーンを見るっていう。なんかすごいじゃないですか。モニター越しに見て、その瞬間泣いちゃうみたいな感じでした。私ずっと泣いてたと思います(笑)

──映画化にあたって監督や脚本家に何かオーダーしましたか?

板羽:何もないです。ほぼゼロだと思いますたぶん。とにかくお任せで、完成を楽しみに待っているっていう感じでした。

──キャスティングを聞いてどんなことを思いましたか?

板羽:いやーもう、そんな…そんなことがあるのかしら?というぐらい、嬉しくて。いや、北山さんすごい。絶対、北山さんが寿々男を演じたら、より憎めなくて、愛おしい人になるなぁと思いました。

──『ソフテン!』に続いて、映画化作品は2作目ですが、映像化のオファーがあった時のお気持ちはいかがでしたか?

板羽:本当に映画になったらすごいけど、でもならないってなったとしても、話をいただいた、一回でもその話をもらったことが嬉しいから。こんな風に本当にどんどん進んでるっていうことが逆にとっても不思議っていうか、“本当に本当の本当”に本当になるんや!みたいな感じで(笑)。

──実写で猫…トラさんを再現するにあたっての不安は?

板羽:そこは北山さんがやるなら絶対大丈夫!と思っていました。

──北山さん演じる寿々男はちょっとグータラなところもありますが、憎めない感じがします。

板羽:そうなんですよ。それはもう多分、北山さんの中から滲み出てるものだと思うので、本当に、ただただ本当にありがたい。感謝しかないです。

──北山さん多部さん共に独身とはいえ夫婦のようで、実優(平澤宏々路)も、ザ・小学生!で、原作から飛び出てきたような感じがしました。

板羽:なんかとってもしっくり、二人…まず二人の空気が似てるのかな…とっても似合う空気感があって、そこに宏々路ちゃんがいて、より家族感が出て、かわいい家族だなって感じでしたね。

──猫スーツを目にしたときは、ああそう来たか!と驚きました。

板羽:そうですね~(笑)お話を聞いた時点では、もっとぬいぐるみ感があるのかなと思っていました。実写で北山さんが猫の格好になるっていうのを聞いたときは、もうちょっとなんかこう、ぬいぐるみのふわふわ、ぷよぷよしたイメージかと思っていたら、もうシュッとしてて、それはリアルな猫ちゃんで。だから人間…多部さんとか宏々路ちゃんと一緒のシーンの時はやっぱりしっくり来るなと思って。猫スーツ姿でも急に浮かないっていうか。考えられてるんだなあと思いました。

──ファンタジーな部分でありながらリアルでした。

板羽:本当はありえないことなんですけど(笑)みなさんのおかげでリアルにしていただいて。ありそうな感じにしていただいて感激しました。

──寿々男が猫に生まれ変わる設定は、猫を飼われていた経験からヒントを得たのでしょうか?

板羽:飼ってた経験も多少は影響してますが、とにかく自由で、動けて、だけど何もできないっていう猫の感じがぴったりだと思いました。気まぐれで自由な動きができるかなと思って、でも鳥でもいいなってちょっと思って。遠くまですぐ行けるから(笑)。

飯豊まりえ、要潤、バカリズムらも出演

──飯豊まりえさんが演じたホワイテストはいかがでしたか?

板羽:かわいかった~!もう、なんでしょう、真っ白で本当に美しいと思いました。かわいかった~!もう何もかもがかわいい。上品な美しい風にしていただいて、真っ白の猫姿がとってもハマっていました。

──要潤さんの役どころもインパクトがありました。

板羽:そうですよね!要潤さん、面白かった(笑)

──バカリズムさんと北山さんの関所での対話シーンが印象的でした。

板羽:あの二人の掛け合いもとっても面白くて、クスッと笑ってしまうシーンでした。でも、最後の二人のシーンはとってもグッとくるっていうか、バカリズムさんがずっと淡々とした顔をしてますけど。だけどやっぱりちゃんと最後に熱くなるところもまたよくて。

──関所も本当にありそうな気がしてきました。

板羽:“あったらいいな”もちょっと盛り込んで。譲歩してもらえないかとか、私が割と駄目なほうの人なので、もしああいうところがあったら私もごねそうやなと思いました(笑)。

──寿々男の妻・奈津子(多部未華子)にトラブルが起きて、トラさんとしてはもどかしいシーンがありましたね。

板羽:あの後の、多部さんが家に帰ってきてからのフフフのくだりの、たい焼き買ってきたシーンが大好きなんです。北山さんが、『たい焼きを買った!?』って言うところが一番好きなシーンです。


──まだ実優が生まれる前、二人のシーンも印象的でした。

板羽:漫画を手伝ってるシーンもいいですよね。結構リアルというか、奥さんがアシストして…奥さんでもできることをやっているんだと思うんですけど、それがすごい自然にしっくりきた。あの二人のシーンもすごくよかった。

──寿々男はトラさんになってからの方が、世の中をしっかり見てる感じがしました。

板羽:そうですよね、人間じゃなくなってからの方が視野が広いかもしれません。ただ、猫の姿だから自由がまったくきかないというか、会話もできないし、何もできない。役にも自分が立つかどうかもわからないみたいなもどかしさもあり。

──トラさんと自分とを重ねてみると、胸に迫るものがありました。

板羽:人間でいるときに、いつでもできると思ってることが、意外にできないというか、やらないこともあるから。

──もし関所で人生を挽回する交渉できるとしたら、どんなお願いをしますか?

板羽:自分の姿に戻れるならば、いろんな人にお礼を言いに行きますたぶん。お礼を言いに回ることに費やすと思います(笑)。

──漫画を描くことも?

板羽:日数によりますね。元々、なかなかネームというか話が上がって来ないので私が。悩んで終わりそうです。だからその関所で締め切り伸ばしてもらえたらいいんですけど(笑)。

──最後に、公開に向けてメッセージをお願いします。

板羽:北山さんの寿々男が本当に素敵で、ダメな人なんですけど…ダメな人なんだけど、にじみ出る憎めなさみたいな。その憎めない愛おしい寿々男が猫になって、どんどん感情が変わっていくっていうのも素敵だし。猫になって言葉が通じないっていうことがこんなにそばにいても、もどかしいのかっていうのがあるので、大切な人には気持ちを伝えられたらいいなっていうのを、この映画を通して思っていただけたらいいなって思います。ハンカチを持ってぜひ、劇場へ。

映画『トラさん~僕が猫になったワケ~』2019年2月15日(金)全国ロードショー

(柚月裕実)

作品情報
映画『トラさん~僕が猫になったワケ~』
出演:北山宏光多部未華子、平澤宏々路
飯豊まりえ、富山えり子、要 潤、バカリズム
原作:「トラさん」板羽 皆(集英社マーガレットコミックス刊)
監督:筧 昌也 脚本:大野敏哉 音楽:渡邊 崇
主題歌:Kis-My-Ft2「君を大好きだ」(avex trax
配給:ショウゲート 
公式サイト:torasan-movie.jp
配給:ショウゲート
(C)板羽皆/集英社・2019「トラさん」製作委員会

(C)板羽皆/集英社