宮藤官九郎が脚本を務める大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」(毎週日曜夜8:00-8:45ほか、NHK総合ほか)。
中村勘九郎と阿部サダヲがダブル主演する本作。前半の主人公は、1912年のストックホルムオリンピックに出場するマラソン選手の金栗四三(勘九郎)だ。
本作のナビゲーターとして“語り”を務めているのは、四三と同じ時代の東京を生きた落語家・古今亭志ん生。本作では、四三の人生と共に、志ん生の青年期・美濃部孝蔵(森山未來)の物語も進んでいる。
2月10日に放送された第6回(再放送は2月16日[土]昼1:05-1:50、NHK総合)では、同じ東京に生きる同世代の人物ながら、マラソン選手と落語家という全く違った道を突き進んできた四三と孝蔵が東京・日本橋の上で交差。二人の背景には、五輪のマークのような花火が上がる美しいシーンとして描かれた。
同記事では、そんな奇跡的な交差シーンに至るまでの、二人のこれまでの歩みを振り返る。
■ 間逆な二人の破天荒な少年時代
明治二十四(1891)年、熊本の山深い集落・玉名郡、春富村で誕生した四三。この珍しい名前は、「父・信彦(田口トモロヲ)が43歳のときに生まれたから」という、いたってシンプルな理由でつけられた。
一方、その一年前の明治二十三(1890)年。東京・神田で生まれたのが孝蔵だった。その名前の由来は、「大いに親孝行して、蔵の一つも建ててくれよ」という、親の思いが込められたものだった。
虚弱体質だった四三は、祖母のスマ(大方斐紗子)に「嘉納先生(役所広司)に抱っこしてもろたら、丈夫な子に育つばい」と言われ、父と共に嘉納に会いに熊本へ。
柔道を教えている嘉納の姿を見ることはできたものの、嘉納に近づくことは叶わず、四三と信彦はそのまま家に引き返す。
しかしその後、玉名北高等小学校に進学した四三は往復3里12kmの道のりを走る「いだてん通学」で虚弱体質を克服した。
その頃の孝蔵はというと、11歳にして小学校をとっくに中退。飲む、打つ、買うの社交界へデビュー。さらに、金に困って親の大事にしていた煙管を質屋に入れ、勘当されていた。
■ 憧れの人を見つけた青年時代
海軍兵学校に不合格となった四三は、幼なじみの美川(勝地涼)から、こんなことを言われる。
「金栗くん、僕は東京高等師範を受けることにしたよ」。
四三が抱っこしてもらえなかった憧れの人物、嘉納が校長を務める東京高等師範学校への進学を決めたころ、孝蔵も運命の出会いを果たす。
吉原で遊んでいたものの、金がない孝蔵。吉原の若い衆に追われて逃げ込んだ先で見たのは、橘家円喬(松尾スズキ)の高座だった。この瞬間に、落語家・円喬のトリコになった孝蔵は、「この人の弟子にならなってもいい」と考え始める。
■ やるべきことが見えてきた
東京高師に合格した四三は、美川と共に上京し、寮生活を始める。最初は東京での生活に馴染むことができず、「熊本なら…」と弱音を吐いていたが、“マラソン”との出合いで、全てが一変。ここから、走ってばかりの四三のマラソン人生が始まる。
四三にとっての“マラソン”は、孝蔵にとっての“落語”。運命的な巡り合わせで、二人は自分が生涯やるべきことを見出していく。
そんな2人の心境が描かれた第3回(1月20日放送)。実は、二人が初めて交差したのは、この放送回だった。円喬を真似して、一人で落語を稽古する孝蔵の後ろを、四三が「会いたかばってん、会われんた~い!」と大声で歌いながら走っていたのだ。
■ 来る羽田の予選会。いよいよ“人生の師”と出会う
校内でのマラソン大会では3位を獲得し、嘉納から「君は予科か」と短い言葉をかけられた四三は、本科生になると、徒歩部に入部。さまざまな無茶をしながら、マラソンの技術を磨いていく。そして、嘉納が開催した羽田のストックホルムオリンピックの予選会に出場し、見事に世界記録を大幅に更新。
ふらつきながらゴールした四三は、憧れだった「嘉納先生」に抱きかかえられ、こう言われる。「金栗くん、君こそ世界に通用する“いだてん”だ!」。
そんな、四三の運命を変えた予選会の日、孝蔵にも運命的な出来事が起きる。
予選会に出場する人力車夫・清さん(峯田和伸)に代わって、俥屋をしていた孝蔵の元に、円喬がやってくるのだ。
「師匠の芸にほれました!」と弟子入りを志願する孝蔵を、円喬は「じゃあ、明日も浅草から人形町まで頼むね」と俥屋として使い始める。
■ “いだてん”が世界を…目指す?
世界に通用する選手を見つけて喜ぶ嘉納は、四三にオリンピック参加を打診。しかし、それに対して四三は「負けたら切腹ですか」と断ってしまう。
今まで嘉納が主張してきた、平和の祭典としてのオリンピックの価値を、四三は全く理解していなかったのだ。
しかし、諦めない嘉納に「黎明(れいめい)の鐘になってくれたまえ! 君しかおらんのだよ」と説得された四三。憧れの人からかけられた、優しくて希望に満ちた言葉の数々にほだされ、オリンピック出場を決心。口車に乗せられて渡航費用まで自費で出すことになる。
出場を決めた四三は、マラソンの技術を向上させるため、ストックホルムと同じ、石畳の道がある日本橋を走ることに。
そのころ、孝蔵も円喬の車夫を真面目に努めていた。
円喬から「車夫ならば落語に登場する東京の街並みを足で覚えながら芸を磨け」とヒントをもらった孝蔵は、人力車で東京の“へそ”日本橋界隈をひた走る。
のちに、日本初のオリンピアンとなる四三と、伝説の落語家になる孝蔵。二人の“麒麟児(きりんじ)”は、二体の麒麟の像が鎮座する、日本橋の上ですれ違う。
■ 舞台はいよいよストックホルムへ!
2月18日(日)に放送される第7回「おかしな二人」で中心となるのは、四三と孝蔵…ではなく、もう一組の“運命のコンビ”四三と弥彦。
四三には渡航費の心配はあるものの、出場選手としてオリンピックのエントリーフォームに名を連ねた四三と弥彦(生田斗真)。
弥彦の豪邸で海外の食事マナーを学びながら、四三は、三島家の冷めた親子関係を感じ取る。それは、貧しくとも自分を応援してくれる家族とは全く異なる姿だった。
しかし、わらにもすがる思いで兄・実次(中村獅童)に出した資金援助の手紙には、いっこうに返事が来ず、四三は困り果ててしまう。(ザテレビジョン)
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