テレビ番組の企画などでよく見かける、一般人への街頭インタビュー。取材に応じる人の中には、上司や配偶者の悪口、仕事に対する不満、文句など、見ている視聴者が冷や冷やしてしまいそうな内容を暴露している人もいます。こうした『顔出し発言』は、番組を盛り上げるおいしい要素である半面、言われた側、言った側双方の私生活にトラブルが発生するリスクもはらんでいます。

 街頭インタビューでの発言を巡るトラブルについて、芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

名誉棄損罪や侮辱罪の可能性も

Q.会社の上司や部下、配偶者、家族などの悪口を『顔出し』で言い、その様子がテレビなど公共の電波で流れ、言われた側が何らかの不利益を被った場合、言った側が法的責任を問われる可能性はありますか。

牧野さん「場合によっては、名誉毀損(きそん)罪(刑法230条、3年以下の懲役もしくは禁固または50万円以下の罰金)あるいは、侮辱罪(刑法231条、拘留または科料)が成立する可能性があります。

この2つの罪は法定刑が大きく異なりますが、両者の違いは『事実を摘示(てきじ=示した)したかどうか』です。前者は『公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損』した場合で、違法性が高いと判断され、後者は事実を摘示せず抽象的に侮辱した場合にあたります。例えば、『不倫をしている』『罪を犯している』などは名誉毀損罪、『バカ』『ろくでなし』などは侮辱罪になる可能性があります。

『公然』とは、不特定または多数の人が認識できる状態を指します。そのため、テレビ放映された場合は『公然』の要件を満たすでしょう。なお、刑事事件で裁かれるには、被害者の告訴が必要です(親告罪)。

ただし、名誉毀損の場合は例外的に、摘示された事実が『公共の利害に関する事実』であり、目的が『公益目的』であり、かつ『真実性が立証された』場合には処罰されません(刑法230条の2第1項)。例えば、有名政治家の過去の業務に関するスキャンダルの場合には、名誉毀損が成立しない可能性が高くなります」

Q.損害賠償請求などの可能性は。

牧野さん「言われた側の被害者は、名誉毀損行為を行った加害者に対して、不法行為に基づく損害(慰謝料)の賠償請求ができます(民法709条)。有名人でない一般人が被害者となった名誉毀損の慰謝料の相場は、10万円から100万円前後が多いでしょう。被害者が有名人や政治家で被害が大きなケースでは、数百万円から1000万円前後の高額慰謝料が認められる可能性があります。

他方で、侮辱行為の場合には、違法性が高くないこともあり、認められる場合でも10万円以下になることが多いでしょう」

Q.言った側が、酒に酔っていて「判断が鈍くなっていた」「記憶がない」と主張した場合はどうでしょうか。

牧野さん「民事でも刑事でも、責任能力(自らの行為が違法行為かどうか判断し、自己の行為をコントロールする能力)の有無が問題となるでしょう。

よほど泥酔しており、『記憶がない』場合、『インタビュアーがそそのかして言わせた』『泥酔者を“道具”として言わせた』などの可能性も出てきます。後者の場合は、インタビュアーが刑事責任を負うことになるでしょう。しかし、泥酔ほどではなく『判断が鈍くなっていた』程度の場合は、軽いほろ酔い程度で発言もきちんとしているのであれば、責任能力が認められることが多いと思われます。ただ、『酔った勢い』ということは、量刑や慰謝料額の認定で考慮はされるでしょう」

Q.悪口が公共の電波で流れたことにより、言った本人が何らかの不利益を被った場合、テレビ局などに対して法的手段を取ることは可能ですか。

牧野さん「発言者が自分の意思で名誉毀損や侮辱的な発言を行い、生放送カットできない場合、基本的には発言者本人のみの責任となるでしょう。ただし、インタビュアーが発言をそそのかしたり、悪乗りさせたりするなどの特別な事情があれば、インタビュアーやテレビ局の側に名誉毀損罪や侮辱罪の教唆・ほう助が成立する可能性が出てきます。民事責任も、共同不法行為で慰謝料賠償責任の可能性が出てきます」

Q.テレビなどでの発言によるトラブルに関して、過去の事例・判例はありますか。

牧野さん「一般人の街頭インタビューによるトラブルの判例はありませんが、2015年8月、『受刑者が証拠隠滅を図った』と報道され、受刑者が名誉を毀損されたとして慰謝料を請求する民事訴訟を提起、東京地裁、東京高裁が判決で、テレビ局側に20万円の支払いを命じた事例があります」

オトナンサー編集部

街頭インタビューの放映後、トラブルになったら?