「家売るオンナの逆襲」を見て考えた

現在、日本テレビ系列で毎週水曜放送のドラマ「家売るオンナの逆襲」が、前作の「家売るオンナ」に続き高視聴率をキープ中。北川景子さん演じるスーパー営業ウーマンの三軒家万智が、型破りな方法でどんどん家を売っていく姿は、相変わらず大人気となっています。

こうした“無感情だけど仕事はバリバリできる女性”がドラマで描かれることは多いものの、やや現実離れしすぎているとも感じます。なぜ、ドラマではこのようなイメージで描かれ続けるのでしょうか。

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ロボット的なバリキャリ女性は大人気ドラマの必須要素?

「家売るオンナ」シリーズを観たことがある人にはお馴染みですが、主人公の三軒家万智は仕事はバリバリできるものの、まるでロボットであるかのように不愛想な表情が特徴です。

万智のように“不愛想で無感情だけど仕事がバリバリできる女性”については、最近では2018年10月期放送の「リーガルV〜元弁護士・小鳥遊翔子〜」および「ドクターX〜外科医・大門未知子〜」シリーズの小鳥遊翔子と大門未知子(米倉涼子さん)、2018年7月期放送の「義母と娘のブルース」の岩木亜希子(綾瀬はるかさん)などが記憶に新しいところ。

不愛想で無感情という要素は、人とのコミュニケーションや恋愛、結婚にも深く繋がっており、「義母と娘のブルース」ではロボットのような性格で仕事一筋だった岩木亜希子が、愛や母性に目覚める姿がドラマの大きな肝でした。「家売るオンナの逆襲」でも、三軒家万智がごくたまに覗かせる、夫の屋代課長(仲村トオルさん)への愛情に注目が集まっています。

つまり仕事一筋で、恋愛や結婚、趣味などには縁遠い女性が、仕事以外のことに目覚めたり感情が露になったりする面白さが表現されているのです。

現実のバリキャリ女性はロボットの方が少ない?

かつての働く女性は、会社に就職して働いた後、結婚をするかしないかで大きく二手に分かれました。寿退社によって家庭におさまるか、結婚をせずに働き続け、男性と同じように仕事に邁進するか。上記のドラマは明らかに、後者の女性をイメージしています。

しかし現在は、管理職などの要職についていたり、若くても能力が高く仕事ができる女性の中には、結婚していたり、子どもがいたり、あるいは趣味を楽しんでいたりするケースも多く見られます。

結婚しているかいないかにかかわらず、好奇心旺盛でコミュニケーション能力が高く、いかにワークライフバランスを大事にするかを考えている女性が増えているのです。つまり、ドラマで描かれる、仕事しかしない無感情なロボットバリキャリのイメージは時代遅れであり、現実離れしていると言えます。

そんな状況にもかかわらず、いまだにドラマ内でロボットバリキャリが描かれている背景には、”仕事をバリバリこなし、プライベートも充実している女性像”というものを視聴者が想像しにくいという側面があるのかもしれません。

ドラマをはじめ、テレビ全体を通して今の視聴者の中心は40代以上の女性で、主婦層がメイン。寿退社が当たり前だった時代を生きた主婦たちにとって、自分とはまったく違うロボットバリキャリの働き方や人生を観ることができるのが、先に挙げたようなドラマなのかもしれません。

働く女性のイメージは相変わらず…

また、ロボットバリキャリに限らず、お仕事ドラマで描かれがちな女性イメージは、今でもかなり類型化・固定化されています。ドジでおっちょこちょいな新人、男性上司に取り入るぶりっ子、若い女性に意地悪するお局様などです。共感を呼ぶキャラクターもいれば、「現実にはそんな女性いるわけない!」と思うキャラクターも多くいます。

若年層を中心にテレビ離れが進んでいたり、現実とは違うと言われたりはしても、やはり世相を反映しているのがドラマ。現実離れしているロボットバリキャリが登場する作品も、もちろんフィクションとしてはとても面白いもの。

しかし、「仕事を頑張りたいけど、プライベートも考えるとバリキャリと仕事をセーブするゆるキャリとの選択に悩む」とか、「過去の実績があるだけに育休明けの職場復帰に得も言われぬ不安を感じる」というストーリーのような、もっとリアルなバリキャリ女性を映し出すドラマが出てきてもいいのではないか、と思ったりもします。