今季注目の新戦力の一人であるクエンカ 欧州で「日本に興味を持っている人は多い」

 いよいよ今週末に新シーズンが開幕するJリーグには、楽しみな新外国籍選手が数人いる。ワールドカップ、欧州選手権、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)のタイトルを持つ元スペイン代表ダビド・ビジャヴィッセル神戸)と、ロンドン五輪の得点王である元ブラジル代表レアンドロ・ダミアン川崎フロンターレ)が筆頭格と言えるが、J1サガン鳥栖に加入したスペイン人アタッカー、イサッククエンカにも注目したい。

 カタルーニャで生まれ、誉れ高きバルセロナの下部組織ラ・マシアで育まれ、ジョゼップ・グアルディオラ監督(現マンチェスター・シティ監督)が率いていた当時のチームでトップデビュー。そのシーズンのクラブワールドカップ優勝やスペイン国王杯制覇、CL4強入りにも貢献したが、翌シーズンに膝に重傷を負い、以降は国内外のクラブを転々とした。しかし、まだ27歳だ。プレシーズンの沖縄キャンプでは、新チームで独特の間合いのドリブルや高いスキルを披露し、シーズン開幕に期待を抱かせた。

 バレンタインデーに開催されたJリーグキックオフカンファレンスに急きょ参加した彼に、スペイン語で挨拶をして「英語は話す?」と訊くと「もちろん」と返答したので、質問を投げかけてみた。まずは日本に来た理由から――。

Jリーグにも日本にも興味を持っていたんだ。フットボールのレベルも上がっていると聞いていたし、スペインなどヨーロッパでも日本に興味を持っている人は多い。フェルナンド(・トーレス)がすでに入団していたし、この話をもらった時、僕はそれほど迷わなかったな」

 新天地の鳥栖は今季からスペイン人のルイス・カレーラス監督を招聘し、トーレスを含め3人のスペイン人が在籍する。ただしクエンカは、「注目されているのは、僕らスペイン人選手かもしれないけど」と言って、次のように続けた。

「言うまでもなく、フットボールはチームスポーツなので、勝利のためには全員の力が必要だ。チームが一つになることも大事だね。チームメートはとてもレベルが高いので、僕は彼らのことを信じているよ」

鳥栖のファンは「とても親切で、選手の普段の生活を邪魔するようなことはしない」

 日本のサッカーファンに見てもらいたいのは、自信のある「ドリブルやボールタッチ、クロス、コンビネーション」だという。そして鳥栖のファンや地元の人々は、「とても親切で、選手の普段の生活を邪魔するようなことはしない。だから、僕らはフットボールに集中できる」と言う。

 今はまだ住み始めたばかりで、じきに来日する「3歳の娘を迎える準備や、家具を揃えたりする」ことで忙しいそうだが、日本については「物事が完璧にオーガナイズされているよね」と好感を示した。

 そして日本食や文化については「ラブリーで、ベリーグッド」と気に入っている様子。ただし、好物は「寿司と鉄板焼き」というあたりは、本国に住む欧米人とあまり変わらない。そのうち、親切な鳥栖の人々が、九州の本当の味を教えてあげるのだろう。

 そのお返しにゴールやアシストを記録すれば、クエンカとサポーターの距離はぐっと近くなるはずだ。(井川洋一 / Yoichi Igawa)

サガン鳥栖に加入したクエンカ【写真:Getty Images】