私たちはよく「手ぐすねを引く」とか「手ぐすね引いて待ってるぜ!」なんて言葉を使いますが、「手ぐすね」って何なんでしょう。また、どうやって引くのでしょうか。

「手ぐすね」は弓の弦を補強する粘着材のこと

「手ぐすね」は、漢字で「手薬煉」と書き、弓の弦を補強する粘着材のことを指しています。この薬煉は、松やにと脂を混ぜ合わせたうえで、それを煮たうえで練ったもので、その粘着力が強かったことから補強材として使われていたそうです。

読者の皆さんは、博物館や資料館などで弓の展示や復元したものを見たことがありますか?

昔の弓の弦は麻のひもでできていました。麻ひもは繊維が短く、また太さが安定していないため、何本かの麻ひもを結わえて1本の弦を作るのですが、何本もの繊維を結わえるため、毛羽が立ってそそけてしまいます。

この毛羽がたたないようにし、弓の弦として十分な強度を持たせるため、弦に薬煉を塗り込んでいました。またその粘着性から、弓の握る部分に巻く皮を固定させる接着剤としても使われていました。

手薬煉を引く=準備万端に備える

かつて合戦の場では、いつどんな時でも矢を放てるように、また狙ったところに正確に矢を放てるように、弓の手入れをきちんとしておくことが、とても大切なことでした。

弓を持ち、馬に乗って戦う竹崎 季長(『蒙古襲来絵詞より』)

このことから、弓の手入れをきちんとしておくこと=手薬煉を弓の弦に引くことは、戦いがいつでもできるように準備万端に備えることを意味していました。

このことから転じて、戦いの場以外でも相手がやってくるのを待ち構える姿勢を指す言葉として使われるようになりました。

この「手薬煉」、現在も弓の手入れをするのに使われており、弓の専門店のECサイトなどをのぞけば、簡単に見つけることができます。

もしかしたら弓道をやられている方には、なじみのあるアイテムなのかもしれませんね。

「手薬煉」のように、「手の内を読む」「図星「矢面に立つ」など、日常生活で使われている「弓道用語」など意外とあります。

読者の皆さんも是非探してみて下さいね。

参考:知れば恐ろしい日本人のことば 「たまげる」の語源に秘められたゾッとする現象とは…

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