2019年3月8日(金)公開の映画『スパイダーマン:スパイダーバース』をレビュー。
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アニメーションならではの映像表現、現代性、ストーリー、どれを取っても素晴らしい傑作。
長年ディズニーの独壇場であるアカデミー賞長編アニメーション賞も今年は今作で間違いないでしょう。
マーベルファンもアニメーションファンも必見の一作です。
各次元からスパイダーマンがアッセンブル
マーベルではマルチバースという並行世界が定義されており、様々なユニバースが存在します。
例えばコミックの正史バースや、映画のマーベル・シネマティック・ユニバース、アニメのバースなどそれぞれの世界にスパイダーマンがいても、それぞれ別の存在です。
『スパイダーマン:スパイダーバース』は、そんな様々なバースのスパイダーマンが1つのバースに集結するという、言わば全員スパイダーマンのアベンジャーズです。
主人公のマイルス・モラレスは、頭脳明晰で名門私立校に通う中学生。
ある日蜘蛛に噛まれたことでスパイダーパワーを手に入れてしまった彼は、本物のスパイダーマンと出会うも、直後にスパイダーマンが死んでしまいます。
スパイダーマン亡き後、新たなスパイダーマンとして彼を継ぐ約束をするも、その力をコントロールできずヒーローという存在に苦悩します。
一方、スパイダーマンが死んだ事件では、その影響で時空が歪められていました。
歪められた時空から、様々なユニバースのスパイダーマンが、マイルスの次元に集められたのです。
スパイダーマンたちは自分の世界に戻るべく、巨大な敵に立ち向かっていきます。
今作で集結するスパイダーマンは、40歳になった中年のピーター・B・パーカー、クヴェンが蜘蛛に噛まれた世界のスパイダー・クヴェン、モノクロ時代の探偵スパイダーマン・ノワール、パワースーツSP//drに乗る日本アニメっぽい少女ペニー・パーカー、そしてカートゥーンの世界の豚スパイダー・ハム。
生きる時代も年齢も性別も異なる、豚までいるスパイダーマンたち。
一見バラバラながらも、スパイダーマンらしい軽口や茶目っ気のある性格はそれぞれ持っていて、それぞれヒーローとして失った過去も持っています。
我々がイメージする“スパイダーマンらしい”ピーター・パーカーが死んだ中、個性豊かなスパイダーマンたちはどれも愛らしく、しっかりスパイダーマンだと思えるのが不思議です。
マイルズはスパイダーマンを継ごうと奮闘する中、様々なスパイダーマンの姿を見て、ヒーローとは何かを学んでいきます。
マイルズが一人前のスパイダーマンになっていく中で、各バースのスパイダーマンたちもヒーローとは何かを再確認していきます。
そしてマイルズは自分らしいスパイダーマン像、スプレーでペイントされた赤いスパイダーが印象的な黒スーツと足元のエア・ジョーダンというスタイルを見つけていくのです。
スパイダーマンはそのオリジンが印象的で何度も映画で描かれてきた作品。
『スパイダーマン:スパイダーバース』は、現代でもう一度スパイダーマンを再定義する、新たなるオリジンを描くとも言える作品です。
圧巻のアニメーション表現
圧巻! コミックのアニメーション化
『スパイダーマン:スパイダーバース』はコミック原作のストーリー。
しかし登場するスパイダーマンは大幅に減っています。
その分それぞれのキャラクターが描かれ、ヒーロー大戦というよりマイルズがスパイダーマンになるまでの新たなオリジン描写が行われています。
一方、コミックらしさはアニメーション表現で十分に表現しています。
実写では描けない、斬新でインパクトのある表現はアニメーションならでは。
それぞれのコミックで生きているスパイダーマンが集結する『スパイダーバース』の真髄、そしてマイルズというスパイダーマンの現代らしさを見事に表現しています。
ストーリーはもちろん、表現方法を取っても今年のアカデミー賞長編アニメーション賞は今作で間違いないでしょう。
長編アニメーション賞は近年ディズニーとピクサーが独占状態ですが、こんな長編アニメーションは今のディズニーやピクサーには作れません。
スタン・リーが教えてくれたこと
『スパイダーマン:スパイダーバース』の全米公開は2018年12月14日。
期せずして追悼作となった本作ですが、それにふさわしいメッセージを届けてくれます。
突然スパイダーマンを継ぐことになったマイルスが、別次元の様々なスパイダーマンたちと関わりながら真のヒーローになっていく。
神や異星人だけがヒーローなのではなく、誰もがヒーロー、親愛なる隣人になれることを教えてくれる物語。
今この作品が世に出ることに大きな意味が生まれた、真にマーベルらしい物語です。
映画『スパイダーマン:スパイダーバース』
2019年3月8日(金)公開
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