第91回アカデミー賞のゴタゴタ続きが止まらない。止まらないどころか、事態はさらに良くない方向に進んでいる雰囲気さえ漂っている。

【写真と見る】第91回アカデミー賞授賞式の準備が着々と進むハリウッドの様子

■ 「人気映画賞」部門の新設が延期に

第1のゴタゴタは、昨年8月に発表された「人気映画賞」部門の新設だ。これは批評家ではなく、観客への人気度を賞に反映させようという試みだったが、映画業界から「映画を人気で測るのはどうなのか」との反論が相次ぎ、2020年まで持ち越しとなった。アカデミー賞を主催するAMPAS(映画芸術科学アカデミー)の最高経営責任者ドーン・ハドソンは去年9月に延期理由について「2018年が始まって9か月も経ったいまから新部門の設立を発表すると、すでに公開されている映画に混乱をきたしてしまう」とコメントしている。

■ CM中に4部門の受賞結果を発表!?

第2のゴタゴタはAMPASが映画業界やフィルムメーカーたちから大きな反感を買ったのが、2月11日に発表した、CM中に編集賞、撮影賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞、短編映画賞の発表を行い、受賞スピーチウェブサイトで配信するという決定だ。放送時間を3時間以内に抑えたいという放送局の都合で、映画に貢献した人々の晴れ舞台を台無しにするこの決定には、映画業界内外から批判が殺到し、マーティン・スコセッシ、スパイク・リー、クエンティン・タランティーノら監督陣、エマニュエル・ルベツキ、ホイテ・ヴァン・ホイテマら撮影監督、エマ・ストーン、ブラッドリー・クーパー、グレンクローズら候補者らもAMPASに宛てた抗議状を発表した。この4部門がカットされるに至った経緯などが一切説明されないまま発表したAMPAS広報の手際の悪さが仇となり、わずか1週間のうちに決定を撤回するという不甲斐なさを露呈した。

■ 司会者降板で今年は司会者不在の授賞式に

第3のゴタゴタは、司会者不在という大きな挑戦に挑んでいること。昨年12月4日にAMPASは『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』(18)などで活躍するコメディアンケヴィンハートを第91回アカデミー賞授賞式の司会者として発表した。そのわずか2日後、ハートは司会者降板を表明している。

この2日間の間に、ハートが過去に同性愛者に対して差別的内容を含むツイート(現在は削除済)を投稿していたことが批判の種となり、事態を収めようとしたAMPASはハートに公式謝罪を要求したのだ。ところがハートは、自身のインスタグラムで「謝罪はしない」と表明したため、AMPASと対立した末に自ら司会降板を申しでたのだ。この時点で授賞式までわずか2か月半しかないAMPASは、新しい司会者探しに奔走する羽目になった。

アカデミー賞授賞式の放送局、アメリカABCテレビライバルであるNBCで放送されているバラエティ番組「サタデー・ナイト・ライブ」では、「オスカーのホストを探せ!誰が全てを犠牲にして何も得るものがないオスカーのホストに就任するのか!」と題したコントを放映。番組では、ゲストマット・デイモンマシュー・マコノヒーの真似をしてオーディションを受けるコントでAMPASの窮地を茶化した。

結局、今年は司会者不在で授賞式を行うことが2月になって正式に発表された。司会者がいない代わりに、豪華ゲストが持ち回りで受賞発表を行う苦肉の策をとったのだが、例年通りプレゼンターは登壇するので、ゲストとプレゼンターのマッチングを考えるという、放送作家と演出家泣かせの代案となった。現在のところ発表されているゲストは、発表第1弾のダニエル・クレイグオークワフィナ、ウーピー・ゴールドバーグシャーリーズ・セロン。第2弾のハビエル・バルデム、アンジェラ・バセットサミュエル・L・ジャクソンジェイソン・モモア。第3弾のマイケル・B・ジョーダンマイケル・キートン、ファレル・ウィリアムスミシェル・ヨーとなった。

そしてロサンゼルス時間20日朝には、作品賞紹介をバーブラ・ストライサンドディエゴ・ルナ、さらにはテニス選手のセリーナ・ウィリアムズミシュランスターシェフ1960年代の公民権運動でマーティンルーサーキング牧師と共に闘ったジョンルイス下院議員が行うと発表された。

オープニングではクイーンアダム・ランバートが演奏する予定で、当初2曲しか演奏させないとしていた歌曲賞も全曲演奏するということだ。さらに、噂では4月26日(金)に公開となる『アベンジャーズ/エンドゲーム』のキャストも集結させるそうだ。このごった煮感を生中継番組でどう料理するのか気になるところ。

■ ゴタゴタの裏には大きくなりすぎたアカデミー賞自体の権威が関係?

これらのゴタゴタの裏には、あまりにも大きくなりすぎたアカデミー賞の権威をハンドリングしきれないAMPASの力不足、そして人々の視聴習慣の変化と視聴率低下を結びつけたくない利権側の問題がある。アメリカABCテレビは高額の放送権料を支払うからには、より良い視聴率を稼ぎ、より多くの広告収入を得なくてはいけない。放送権収入を得ているAMPASはアメリカABCテレビの顔色を伺いながら苦肉の策を講じるが、すべて裏目に出てしまっているのが現状だろう。

司会者の件は不幸の上乗せにすぎないが、規制でがんじがらめになってしまった巨大番組の司会というリスクなんて、誰も負いたくないのかもしれない。映画館公開作品ではなく、英語作品でもなく、カラー作品でもなく、スター俳優が出ているわけでもない『ROMA/ローマ』が最多ノミネート作品となった第91回アカデミー賞。人々の視聴習慣の変化はアカデミー賞授賞式の視聴方法にも確実に影響を及ぼしている。AMPASとアメリカABCテレビはその潮流を直視しない限り、来年以降も騒ぎを引きずるだろう。このゴタゴタが炎上商法となり視聴率が上がるのか、それとも見向きもされなくなるのか。泣いても笑っても授賞式まであと3日だ。(Movie Walker・取材・文/平井伊都子)

25日に迫った第91回アカデミー賞授賞式、今年はゴタゴタ続き?