高畑充希主演のTBS「メゾン・ド・ポリス」(毎週金曜22時〜)第6話は、ゴリッゴリのコメディだった。凄惨な事件ばかり取り扱ってきているが、今回は初めての誰も死なないお話。第3話の猫殺しのような不快な事件では笑えないので、バランスを調整してのことだろう。それにしても、高平(小日向文世)があんなに無能キャラだったなんて知らなかった。

「メゾン・ド・ポリス」は、夏目惣一郎(西島秀俊)、伊達有嗣(近藤正臣)、迫田保(角野卓造)、藤堂雅人(野口五郎)、高平厚彦という退職警察官だけが住むシェアハウス「メゾン・ド・ポリス」の住人に振り回されながら、新米刑事の牧野ひより(高畑充希)が難事件に挑む一話完結の刑事ドラマ。

6話あらすじ
「メゾン・ド・ポリス」に高平の娘・小梅(水谷果穂)が現れ、解決して欲しいという事件を持ち込む。高平が家族の前で自分を大きく見せていたため、小梅は自分の父親を“伝説の刑事”と思い込んでいた。高平のメンツを保つため、小梅の思いを裏切らないため、ひよりたちは高平が作った設定に乗っかったまま、事件解決に挑んだ。

事件の内容は、小梅の彼氏・駿(水石亜飛夢)の祖母・春江(吉田幸矢)が何者かに頭部を殴打され金品を奪われたというもの。春江はいまだ面会謝絶。自宅に鍵がかかっていたことから、春江の家族が容疑者となってしまった。

このパターンを作った人は祖だ
凡人が家族に見栄を張ってしまったため、その周りの超人たちが力を合わせて嘘を真実にする。最後の「実は嘘なの知ってました」という娘のセリフも合わせて、コメディゴールデンパターン、方程式、仕様、お約束だ。何十年も前から本当によくあるパターンで、三谷幸喜だけで5回くらい見てる気がする。現場検証と回想以外ほぼシェアハウス内で展開されるため、ワンシチュエーションコメディっぽい作りにもなっていた。

なぜそんなよくある展開が用いられたのか?答えはシンプル、みんなが大好きだから。コミュニティ内の友情、凡人の背伸び、凡人が初めて見せる本気、騙されていた家族側の器の大きさ、などなど、面白にも感動にもどっちにも転びやすい要素が詰め込まれまくっている。誰だかはわからないが、このパターンを作った人はもう“祖”だと思う。音楽界でいうビートルズのような感じだ。

容疑者全員をシェアハウスに集めた解決シーンは、インカムで夏目らの指示を受けた高平が犯人を導き出そうとする。ぶかぶかのトレンチコートとわざとらしいハットで名探偵を装うが、小梅と彼氏の関係を聞いては動揺し、ふとした時にオネエ口調に戻ってしまうなど、どうにもうまくいかない。挙げ句、インカムは故障してしまい、しどろもどろになるというドタバタ展開。結局、「後輩に任せる」という形でひよりに後を託すが、お人好しの高平ならではの目線で、容疑者たちに説教をするシーンも。これを小日向文世が演じるんだから、そりゃあ楽しいに決まってる。

急にいいやつぶる小梅と春江
しかし、解決後、小梅がひよりへ向けて言った「本当に感謝しています。父の嘘にまでつきあってくれて」というセリフはちょっと気になる。一見、父の人間性をわかった上で、プライドを立ててあげる出来た娘の超感動セリフだが、よく考えるとおかしい。なぜ、小梅は父が伝説の刑事じゃないと知っていたはずなのに、冒頭で「みなさん、父の部下なんですよね!」と高平を追い込むようなことを言ったのだろう?

小梅は、「子供の頃からいつも仕事そっち退けで遊んでくれて、さすがにおかしいなと思ったんですけど、みなさんの反応を見てやっぱりそうだったんだって」と語っている。そんな疑いがあったくせに、一か八かで定年過ぎた父親の唯一の憩いの場が失われるような爆弾を投下するなんて、一体小梅はどういう神経をしているのだろう。ちょっと天然っぽい女の子という水谷果穂の演技力の高さが、自分勝手さに拍車をかける。

もしかしたら、このドラマが第1話からずっとコメディ全開のドラマだったら気にならなかったのかもしれない。だがやっぱり、全てを知っていたくせに父を追い込んだ小梅も、むちゃくちゃ嫌なやつだった春江が最後に犯人をかばったのも、「急に良い奴ぶってんじゃねーよ」って思ってしまう。
(沢野奈津夫)

「メゾン・ド・ポリス」
金曜 22:00〜21:54 TBS系

キャスト:高畑充希西島秀俊、近藤正臣、角野卓造、野口五郎小日向文世、西田尚美など

原作:加藤実秋「メゾン・ド・ポリス」シリーズ
脚本:黒岩 勉
演出:佐藤祐市、城宝秀則
主題歌:WANIMA「アゲイン」

イラスト/Morimori no moRi