咲田「ドラゴンさん、安田さんってお客さんがくれぐれもお礼を言っておいてくれと。契約が3本取れたそうです」
ドラゴンフルーツ「1本抜いただけなのに、3本取れたか」
ミスジ「ドラゴンさん、ありがとうございます」

2月15日(金)深夜放送のドラマ24『フルーツ宅配便』テレビ東京)第6話。

デリバリーヘルス店・フルーツ宅配便のナンバーワン・みかん(徳永えり)がインフルエンザで欠勤。ナンバーツーのイチゴも忌引きで欠勤となってしまった。残ったのは、客に「チェンジ」されてしまいがちな内気なレモン北原里英)だけ。

案の定、レモンは客の安田(山中崇)にチェンジされてしまう。清掃員として働いていた伝説の風俗嬢・ドラゴンフルーツ(山口美也子)が代打となった。自信を失ったレモンは、女性が苦手な客・関(黒田大輔)と出会う。

レモンの恋。善意の空回りすら可愛い

デリヘル店で起こる無情なエピソードを描いてきた本作。前回、咲田(濱田岳)の同級生・えみ(仲里依紗)が義父に援助交際をさせられていたなどの過去が明かされ、咲田は落ち込んでいた。

そこから突然のドタバタハッピー回。暗くて内気で『カラマーゾフの兄弟』の上巻だけをずっと読んでいるレモンが、客の関と恋に落ちた。

レモン「好きです。私、大好きになってしまいました。どうしましょう……」

レモンの恋心の吐露に、にやけそうになる口をパクパクさせて誤魔化す咲田。ふたりとも可愛い。

ホテルで初めて出会った関とレモンレモンがベッドの端っこに、関が離れた椅子に座り、ふたりの会話は背中越しに写される。関の肩越しに見えるレモンがちっちゃい。関の背中とレモンの背中が交互に写って距離があるように見える。でも、ふたりが似た者同士であることは、ふたりとも左肩越しに話しかける仕草の共通点に表れている。

公園で、並んだふたつのベンチにそれぞれ座る関とレモン。関がこどもの頃の後悔を話し、レモンは『カラマーゾフの兄弟』の一節を演じて、互いに自己開示する。すべり台からすべり降りるレモンを関が受け止めて、急接近。

恋愛映画が1時間近くかけて描く段階を、あっという間に踏んでいく。これまでの無情感からの反動か、それとも関とレモンのキャラクター性のためか、ただただ微笑ましい。

関と交際するために店を辞めたいレモンを助けようとして、咲田はいつも通り空まわる。いつもなら善意の空振りにいたたまれない苦しい気持ちになるところだが、今回はそれすらも可愛い。

ドラゴンフルーツ「この仕事はねえ、辞めどきが一番難しいんだよ」

レモンを助けたのは、50年以上風俗嬢をやっているというドラゴンフルーツだった。清掃員として働いていたが、人手不足を見かねて出勤した。

コミカルな伝説の風俗嬢役なのになぜか経験や技術への説得力があるのは、演じているのが日活ロマンポルノで活躍した山口美也子だからだろう。ドラゴンフルーツを演じた山口美也子と沖田修一監督が一緒になって作ったという変身シーンは、某美少女戦士(おそらくセーラームーン)を参考にしたのだという。

変身後、ドラゴンフルーツドラゴンフルーツのかたちのポーチからメイク道具を取り出し化粧直しをしていた。その姿が可愛くて、同じものを買いたくなった。自分の源氏名にちなんだものを選んで使っているところに、仕事への愛着が表現されている。

ドラゴンフルーツ「この仕事はねえ、辞めどきが一番難しいんだよ。私なんかね、辞めどき見失ってもう50年過ごしちまった」

ドラゴンフルーツのこの台詞で、咲田はえみのことを思い出す。ジョークが飛び交うハッピーエンドの回でも、一抹の無情を忘れさせないところがにくい。

7話は、今夜0時12分から放送予定。

(むらたえりか

▼配信サイト
Amazonプライムビデオ(テレビ東京オンデマンド)
ひかりTV(テレビ東京オンデマンド)

ドラマ24『フルーツ宅配便』テレビ東京
毎週金曜 深夜0時12分から放送
出演 濱田岳、仲里依紗、前野朋哉、徳永えり、山下リオ、北原里英、原扶貴子、荒川良々松尾スズキ、ほか
原作 鈴木良雄『フルーツ宅配便』(小学館・ビッグコミックス)
脚本 根本ノンジ
監督 白石和彌、沖田修一、是安祐
楽曲制作 高田漣 
主題歌 EGO-WRAPPIN’「裸足の果実」(NOFRAMES / TOY’S FACTORY)
エンディングテーマ 超特急「ソレイユ」(SDR
チーフプロデューサー 浅野太(テレビ東京
プロデューサー 濱谷晃一(テレビ東京)、木下真梨子(テレビ東京)、赤城聡(フラミンゴ)、押田興将(オフィス・シロウズ) 
制作 テレビ東京 オフィス・シロウズ
製作著作 「フルーツ宅配便」製作委員会

鈴木良雄『フルーツ宅配便』3巻(小学館・ビッグコミックス)