hahn-2645271_640_e

 体に備わった体内時計(概日リズム)を無視するような生活パターンは、健康を害する恐れがある。それなのに、忙しい現代社会では、そうした生活を送らざるをえない人たちもたくさんいることだろう。 特に夜型の人間が9時5時の労働時間で働こうとすると地獄となる。

 もしかしたらそういった人に朗報かもしれない。

 最近発表された研究によれと、ある特定の時間に体を動かせば、体内時計の針を早めたり、遅めたり調整することができるのだそうだ。

―あわせて読みたい―

夜型人間の人生がハードモードな理由(オーストラリア研究)
午前10時前の就業開始は拷問に等しく、従業員を病気にする(英研究)
ADHD(注意欠陥・多動性障害)と睡眠の関係。ADHD自体が1種の睡眠障害とする説が唱えられる(米研究)
朝どうしても起きられないのは遺伝子のせいだった。朝型・夜型を決定づける15種の遺伝子が特定される。
ダイエットの秘訣は食べる量だけではない。その秘訣は食べる時間にあり(イスラエル研究)

体内時計はホルモン分泌のタイミングをつかさどる

 一般的に、体内時計は、昼と夜による明暗のサイクルにしたがい、24時間のサイクルで動いている。

 さまざまな機能を担っており、ホルモンが分泌されるタイミング、眠気の強さ、カロリーの燃焼、気分といったものに大きな影響を与えている。

 米アリゾナ州立大学のショーンヤングシュタット(Shawn Youngstedt)博士が発見したのは、特定の時間に運動をすると、「メラトニン」というホルモンが分泌されるタイミングが変化するということだ。

 メラトニンは睡眠ホルモンともよばれており、これが増えると眠くなってくる。通常、暗くなると増え始め、明け方頃にピークに達し、そこからまた減り始めるという増減パターンを持っている。

 したがって、運動でメラトニン分泌のタイミングを変化させれば、眠気を感じる時間帯を多少はズラすことができるということである。

bed-3013209_640_e

pixabay

朝7時か午後1~4時に運動をすると体内時計が進む


 運動が被験者の体内時計に与える影響を確かめるために、5日間の実験が行われた。

 まず101名の被験者(18~75歳の男女)に尿検査を受けてもらい、個々人のホルモン分泌のタイミングを調査。それから8つの時間(午前1時、4時、7時、10時、午後1時、4時、7時、10時)のうちのいずれかで、中強度の速さに設定したルームランナーを走ってもらった。

 その結果、ほとんどの場合で、メラトニン分泌パターンに若干の変化が見られた(ただし午前1~4時、午前10時では変化なし)。

 たとえば、朝7時か午後1~4時に運動をしたケースでは、体内時計が"進んだ"。これによってメラトニンの分泌時間も変化し、早い時間帯から頭がすっきりしていられるようになった。

 一方、午後7~10時に運動をしてもらったケースでは、体内時計が”遅れ”、遅い時間のほうが目が冴えているという状態になった。

window-1148929_640_e

pixabay

年齢差、個人差はあるものの運動で体内時計は変化する


 なお、被験者において、メラトニンが増え始める時間と減り始める時間とに目立った違いはなかった。

 若いグループ(18~32歳)では、メラトニンが増える始める平均的な時間は午後11時19分で、低下開始は午前8時40分だった。一方、高齢者グループ(59~75歳)では、メラトニンが増える始めるは午後9時58分、低下するのは午前7時48分だった。

 だが、運動によって一般にサイクルがどのくらい変化するのか、あるいは個々人でどのくらい効果があるのかを言うことは難しい。特に十代の若者では、大人以上にメロトニン分泌時間にばらつきが見られた。

 それでも、運動による体内時計の変化は、変化の量や持続時間は個人個人で大きく異なっていたものの、幅広い年代で性別を問わず確認された。

alarm-clock-2132264_640_e

pixabay

ただし体内時計調整のデメリットも


 ただし、意図的に体内時計をズラしてしまうことの、ちょっとしたデメリットについても指摘されている。

 たとえば、被験者の一部は、軽い気分の落ち込みを報告している(ただし実験終了後、その週のうちに回復)。

 また、実験に参加した人たち全員が活発な人たちだった(ほとんどが最初から週に3回以上運動をすると回答)というのも考慮に入れたい。

 どんな研究もそうだが、この結果が必ずしもあらゆる人に当てはまるわけではないことにも注意が必要だ。

 それでも、自分の体内時計を軽く調整したいと思っている人にとっては嬉しいニュースだろう、とヤングシュタット博士は考えている。

 特におすすめなのが、朝7時か午後1~4時に運動をすることだ。朝っぱらから体を動かすのはキツいと感じる人なら、お昼の時間帯を選べばいいだろう。

 この研究は『Journal of Physiology』に掲載された。

References:When Should I Exercise? Scientist Finds Best Timing To Boost Alertness | Inverse/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52271345.html
 

こちらもオススメ!

―料理・健康・暮らしについての記事―

州によってこんなに違う。アメリカ国内のビールの値段
日本上陸が待ち遠しい!マックの朝食メニューにドーナツスティックが登場(アメリカ)
大気汚染に悩むタイで、砂糖水を空中に散布する試みが始まる。その効果は?
チョコミン党大歓喜。生八ツ橋にチョコミント味が登場!
スポーツカーとバイクが融合した近未来感。3輪の電動自動車「Model SONDORS」が今年販売予定(アメリカ)

―知るの紹介記事―

図らずもドイツ軍に庇護され、その生息数を増やし始めたオオカミ(ドイツ)
2月22日は猫の日。世界の猫に関する20のトリビア
アレな生態系日常漫画「いぶかればいぶかろう」第17回:朝ごはんの為の3匹の猫たちの目覚ましミッション
生き残るため。様々な植物が他植物から遺伝子情報を盗み、それを取り込むという戦略を利用していた(英研究)
燻煙式殺虫剤の罠を回避するゴキブリ。だがその煙は他の生物に危険性(アメリカ)
体内時計をズラして、目を覚ましていられる時間を調整する方法。特定の時間に運動する(米研究)