「育ちの問題じゃなかったのか」そんな風に私が首を振っていたのは金曜日、未だに物議を醸しているシメオネ監督がCL16強対決ユベントス戦1stレグでヒメネスのゴールが決まった際に見せたポーズ(https://bit.ly/2XjnhQg)に対し、父親のカルロスシメオネ氏が「Yo no se lo enseñé, no sé de dónde lo sacó/ジョ・ノー・セ・ロ・エンセニェ、ノー・セ・デ・デオンデ・ロ・サコ(自分は教えていない。どこで覚えたのかわからないよ)」と言っているのを聞いた時のことでした。いやあ、まだUEFAがこの件に関して動くのかどうかは不明なんですけどね。

元々、彼はベンチ入り禁止処分の常連ですし、昨季もヨーロッパリーグ準決勝アーセナル戦1stレグで退場させられた後、現場に最高指導者が不在ながらリヨンでEL優勝を果たし、UEFAスーパーカップでもレアル・マドリーを破った実績があるアトレティコだけにたとえ、トリノでの2ndレグでパルコ(貴賓席)観戦になったからといって、どうってことはない?とはいえ、そこはつい先日、クラブの契約を延長し、欧州一の高給取りになった今をときめくトップコーチですからねえ。

いくら、当人の戦略が怖いぐらいに当たり、「Tenemos muchos huevos/テネモス・ムーチョス・ウエボス(ウチはタマを沢山持っている/根性があるの意)」ということをファンにアピールしたかったというのはわかるものの、やっぱり女子的目線ではあまり品位が感じられなかったのも確かかと。同じアルゼンチン人でもお隣のソラリ監督がそんなジェスチャーをするのもちょっと、想像つかないため、その辺は少し反省してもらいたいと思ったものでしたが…。

ちなみに私も久々に強いアトレティコに感動できた水曜のユベントス戦がどんな試合だったか、お伝えしていくことにすると。まず驚かされたのは、いえ、キックオフ前にはアカペラのイムノ(クラブ歌)が響き渡り、ワンダメトロポリターノのスタンドが大いに盛り上がっているのには折しも、先日はマドリーダービーで落胆したばかり。よって、「プレーするのはファンではなく、選手たちだからなあ」とちょっと私も冷めた目で眺めていたんですけどね。そうではなく、世間の予想を裏切って、12月に左足第5中足骨のボルトを入れ替え、リーガ前節ラージョ戦で復帰。リハビリ中に体重が増えたせいもあって、まだ90分プレーはできないとシメオネ監督が前日記者会見でも認めていたジエゴ・コスタが先発したことの方でした。

でもねえ、そのコスタが開始8分、FKの壁を作る時、主審のスプレーした白線より少し前に出ようとしたのを見咎められ、いきなり累積警告で2ndレグ出場停止になるイエローカードをもらっているとなれば、一体、どうしたものやら。幸いクリスアーノロナウドの蹴ったFKはGKオブラクがparadon(パラドン/スーパーセーブ)で防いでくれたものの、26分には敵エリア内に駆け込んだコスタがデ・シリオに倒され、一旦は審判がPKを宣告しながら、VAR(ビデオ審判)により、ファールはエリアの外だったとジャッジが変更に。グリーズマンが蹴ったFKもGKシュチェスニーに弾かれ、前半終了間際にはトマスまでトリノでの試合に出られなくなるイエローカードをもらって0-0のまま、ハーフタイムに入ったところ…。

それが後半には様相がガラッと変わったんですよ。いえ、4分にコスタがグリーズマンのロングパスに抜け出して、ボヌッチに先んじて放ったGKと1対1のシュートがまさか、枠を外れてしまった時には場内が大きな溜息に包まれたものでしたけどね。その3分後、グリーズマンのvaselina(バセリーナ/ループシュート)もゴールバーに当たってしまい、得点にならず。すると、いよいよ負傷明けのコスタとコケのプレー可能時間が尽きて、事前に選手たちに伝えた計画通り、15分前後にシメオネ監督は2枚イエローカードをもらって退場したダービーの二の舞の恐れのあトマスも含め、続けざまにモラタ、レマル、コレアを投入したんですが、とうとう24分、フィリペ・ルイスのクロスをモラタがヘッドでゴールにしてくれたから、スタンドもどんなに沸いたことか。

スピーカーから流れる「Goool de/ゴール・デ」というお馴染みのアナウンスに皆、「モラタ!」と絶叫していたんですが、え、何?またしてもVAR判定が入り、当人が直前にキエッリーニを倒すファールを犯したとして、得点が認められないなんてこと、あっていい?実際、これにはアトレティコ入団後、2度もペナルティを取ってもらえず、マドリー戦でのゴールもVARオフサイドで取り消された当人も「エリア内で接触は多々あるけど、ボクが疑問に思うのは、si hubiera sido al reves si hubiera sido penalti. Seguramente no/シー・ウビエラシドー・アル・レベス・シー・ウビエラシドー・ペネルティ。セグラメンテ・ノー(もし逆だったら、もしボクがペナルティを受けたのだったら、絶対、取ってくれない)」と文句を言っていたんですけどね。

シメオネ監督も「あの状況で187センチもある選手が倒れるなんて、君たちは信じられるのか」とキエッリーニが大袈裟にリアクションしたことを匂わせていましたが、とにかくモラタとVARの相性がこうまで悪いのでは、選手たちだって、相当ガックリしたはずだったかと。それが何と、この日の彼らには本当に根性があったんですよ!ええ、33分にはレマルのCKをモラタが頭で落とし、敵DFに当たってこぼれたボールをヒメネスが蹴り込んで待望の先制点が入ったから、ビックリしたの何のって。おまけにその5分後にはグリーズマンのFKがマンジュキッチにクリアされた後、ウルグアイ人CBの先輩、ゴディンが角度のないところから撃ち込んで、インテルに移籍する前に是非ともワンダでの決勝でCLトロフィーを掲げ、アトレティコへの置き土産にしたいという確固たる意志を示してくれるんですから、嬉しいじゃないですか。

結局、ロスタイム最後にベルナルデスキが放ったシュートもオブラクが弾き、そのまま2-0で勝ったアトレティコでしたが、シメオネ監督の術中に完璧にはまってしまったユベントスのアッレグリ監督の話を聞くと、どうやら「彼らは敵に悪いプレーをさせて、試合のテンポを遅くする」のだそう。いやあ、私もこのところ、ベティス戦やラージョ戦でとろとろやっていたアトレティコイライラを感じていたものですが、もしやそれって、この大一番に備えての予行練習だった?

まあ、そんなのはもちろん冗談ですが、この日はカウンターに移る際のメリハリが効いていたのと、オブラクからコスタ目掛けてのロングフィードを多用、鬼のように中盤でボールロストするのを避けたのは大正解。敵の司令塔、ピヤニッチをカンテラーノ(下部組織出身の選手)のコケ、サウールトマスロドリゴのcuatrivote(クアトリボテ/4人ボランチのこと)で封じてラストパスを出させず、ロナウド、マンジュキッチ、ディバラを宝の持ち腐れにしたのもこれぞ、シメオネ監督の戦略の賜物と言って良かったと。

え、世が世なら、5-0での大敗もありえたのに相変わらず、どうしてああもロナウドは口が減らないのかって?いやあ、ピッチではアトレティコファンから、「Cristiano es un moroso/クリスティアーノ・エス・ウン・モロソ(クリスアーノは税金滞納者)」とか、「violador(ビオラドール/レイプ犯)」とか、言いたい放題、悪口のカンティコ(節のついたシュプレヒコール)を浴びせられていた当人が、5本の指を離してヒラヒラさせていた時には、どうしてピケのmanita(マニータ/クラシコバルサが5得点した時にやったイヤがらせ)の真似をするんだろうと思ったんですが、試合後のミックスゾーンではロナウド自身から解説が。

「Yo tengo cinco Champions y el Atleti, cero/ジョ・テンゴ・シンコ・チャンピオンズ・イ・エル・アトレティ、セロ(ボクは5回CLに優勝していて、アトレティコは0回)」と言いながら、スタスタ歩いて行くのを見た日にはもう、私も呆気に取られるばかりだったかと(https://bit.ly/2BO9f09)。いえ、丁度インタビューに答えていたコケなどは、そのうち2回には自分も貢献しているせいか、「Pues Bueno…habra que darle la enhorabuena por ello?/プエス・ブエノ…アブラ・ケ・ダールレ・ラ・エンホラブエナ・ポル・エジョ(そうだね…お祝いを言わないといけないのかな)」と苦笑していましたけどね。

本当のこととはいえ、失礼には違いないため、それこそ3月17日の2ndレグでは再び、強いアトレティコを見せつけて、ロナウドの鼻を明かしてほしいものですが、まだそれは先の話。ミッドウィークの試合が戻ったおかげか、チーム全体のリズムも良くなったようですし、この週末、日曜午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)からワンダビジャレアルを迎えるリーガ戦でも効率的なプレーができるといいのですが、さて。ちなみに相手は木曜にEL32強対決スポルティングCP戦2ndレグをプレーし、総合スコア2-1で16強対決に進出。

丁度、日曜正午にブタルケに弟分を訪れるバレンシアも同日、セルティックに1-0で連勝し(総合スコア3-0)、次ラウンドではそれぞれ、ゼニト、クラスノダールというロシア勢と当たることになったんですが、ELはCLより決勝トーナメントの試合数が多くて大変ですからね。おまけバレンシアには来週木曜、レンヌにホームで1-3と負け、総合スコア4-6でまさかのEL敗退となったベティスとのコパ・デル・レイ準決勝2ndレグも控えているとあって、13位のレガネスがジャンプアップを目指すには絶好のチャンスになるかも。

いえ、水曜にタツィオを総合スコア3-0で下し、3連覇を含む、5回のEL優勝経験のあるセビージャが次はスラビア・プラハと対戦と、我が道を進んで行けそうなのは結構とはいえ、今週末はバルサと当たるというのは勝ち点差7だの9だのとかなり離されていても、首位に少しでも近づきたいマドリッドの両雄にとってはあまり期待できなくて、残念なんですけどね。逆にCL出場圏最後の4位セビージャまであと勝ち点1と迫っている5位のヘタフェにとっては吉となるかもしれないというのは、捨てる神あれば拾う神ありといった今季のリーガの妙でしょうかね。

え、そうは言ってもボルダラス監督も「目標は残留達成」という姿勢ですし、土曜午後1時からのマドリー弟分ダービーでは降格圏にいるラージョを応援してあげた方がいいんじゃないかって?その通りなんですが、ここ3連敗中とはいえ、19位の彼らとセーフゾーンのセルタまではここもたったの勝ち点差1。前節のアトレティコ戦でも0-1の僅差負けと健闘していますし、今週はミチェル監督がずっと非公で特訓を続けていたため、コリセウム・アルフォンソ・ペレスではガッチリ五分に組んだいい試合が見られるのでは?

そして最後に今週はようやくミッドウィークに試合がなくなり、火曜にオリンピック・リヨンとスコアレスドローしたバルサやお隣さんのCL戦を高みの見物と洒落込んでいたマドリーはどうしていたかというと。いやあ、この機会を利用して、ピントゥス・フィジカルコーチの指示の下、バルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場で日々、体力アップに励んでいたようですが、木曜には恒例のアウディからの車の貸与式があったり(https://bit.ly/2GEGx5R)、金曜にはIFFHS(国際サッカー歴史統計連盟)から、モドリッチが2018年の最優秀プレーメーカー賞、クルトワが最優秀GK賞のトロフィーを受け取るなど、その辺はさすがCL王座占有が1000日にもなるクラブ。

華やかな話題には事欠きませんが、何せ前節はサンティアゴ・ベルナベウでジローナに1-2で負け、9試合ぶりの黒星を喫してしまいましたからね。この日曜午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)から、シュタット・デ・バレンシアで対戦するレバンテにもシーズン前半戦のリーガでは1-2と負けているため、しっかり気を引き締めて挑んでほしいところかと。折しも相手は先週、エイバルに1-4と大勝して自信をつけていますしね。ジローナ戦で退場したセルヒオ・ラモスには来週水曜のコパ準決勝2ndレグ、そして来週土曜のリーガと続くクラシコ連戦に備え、英気を養ってもらうことになりますが、あとイエローカード1枚でリーガ戦が累積警告となるカセミロのバルサ戦欠場を避けるため、ローテーションするのかどうかは微妙。今はジョレンテが負傷中とあって、ソラリ監督もここは悩みどころでしょうか。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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