オトナの土ドラ『絶対正義』フジテレビ系・土曜23時40分〜)第3話

神がかっていた高校生編と比べちゃうと、若干失速した感のあった大人編。

もうちょっと高校時代を見ていたかったなぁ〜……なんて思っていたわけだが、ここからストーリーは急加速。すごい回だった!

「絶対正義」な範子の娘が万引き
夫ともめている最中、息子にケガをさせてしまい、範子に児童相談所へ通報された西山由美子(美村里江)。

自身の経営する学校の経理を範子に任せたものの、杓子定規な正義で細かいことを指摘されまくりって、ストレスを募らせている理穂・ウィリアムズ片瀬那奈

範子に目撃された不倫スキャンダルが雑誌にリークされ、記事はもみ消したものの、出演が決まっていたCMがなくなってしまった石森麗香(田中みな実)。

みんなとの会食の際、節税のために領収書をもらおうとしたところ、「それは脱税よ」と指摘された今村和樹(桜井ユキ)。

範子の過剰な「正義」に追い詰められる同級生たち。そこへ、範子の娘・律子(石母田美里)が万引きをしたという連絡が入る。


美しい記憶となっていた高校時代の思い出を一瞬で消し去り、人をイライラさせる正義マシーン・範子がよく結婚して子どもまで育てているなと思っていたが、やっぱり子ども、歪んでた!

律子役の石母田美里ちゃんがまた、良い雰囲気を持った子で、「いい子」感は漂っているものの、はつらつとした感じは皆無。

児童相談所の前で由美子と遭遇した時も、

児童相談所という場所がどういう場所なのか知りたくて」


など、気になる発言をしていた。

律子がどんな目に遭っているのかという描写はなかったが、由美子に対して「被害者じゃなくて友達?」と聞いていたように、かなり冷静に母・範子のヤバさを認識しているようだ。

三田佳子の育児本のような赤っ恥
これまで「正義」を思いっきり振りかざして
他人の行動を全否定してきたのに、自分の娘が万引きをしてしまうという赤っ恥。

三田佳子が子育て論を収録した本を出していた……的な恥ずかしさ全開だ。

三田佳子・次男(39)が覚醒剤でまたまた捕まったのは本人の自己責任だと思うが、11歳の律子が万引きしたことに関しては、母親である範子の責任も問われるところ。

しかし範子は平常運転で律子を断罪し、我が子のことなのに警察に通報して少年院に入れようとする。

法律に照らし合わせれば「正しい」行為ということになるかも知れないが、ある意味、育児放棄しているともいえるだろう。

「自分の子どもだろうと関係ない。この世でもっとも優先すべきものは正義よ。私、何か間違ったこと言ってる?」

いつものように正義の旗印を振りかざされて、誰も反論できないかと思いきや、

「言ってる!」

由美子が言ったー!

「法律とか正論だけじゃ割り切れないものが生きてたら沢山あるでしょ?」

「範子の正義は凶器みたいなものだよ」

「正義は人を幸せにするものでしょ? だから、範子は間違っている」

せきを切ったかのように、範子の「正義」に対する不満を口にする同級生たち。これまで押さえ込んできた感情がぶちまけられる、もう最終回なんじゃないかと思うようなシーンだ。

これまで「正義」は絶対に正しいと信じてきたのに、娘は万引きするは、同級生たちからは批判されるは。価値観が揺らいだ範子は改心するか、精神崩壊しちゃうか……というのがお約束の展開だが、ここからしびれる展開を見せる。

あの教師、また出てくるのか
範子に対して「ついに言ったった!」という気持ちもありつつ、「やっぱり範子の行動は正しかったんじゃ」……と思わせる出来事が同級生たちに起こる。

由美子は、離婚調停を進めるにあたり、いち早く児童相談所に子どもを連れて行ったことが評価される。

理穂の学校では、範子の作った詳細な収支報告書でしつこいクレーマーが大人しくなった。

麗香が出られなくなっていたCMのクライアント不祥事を起こす。

和樹は、著書がノンフィクションの最高峰・竹下賞にノミネートされたことで、脱税まがいのことをしなくてよかったと安堵する。

何だかんだで同級生たちは範子に謝罪。

再び高校時代のようないい雰囲気に……と思いきや、範子は膨大な資料をもとに和樹の著書の内容や取材方法に問題がなかったかチェックをはじめる。

由美子のクソ夫には「夫婦には同居の義務がある」民法752条を教えて息子を奪う口実を与え、麗香には不倫相手が隠してきた秘密(妻が病院で寝たきり状態となっている)を暴く。

みんなから「正義」を非定されたことによって何かがぶっ壊れちゃったのか、それとも評価を覆すためにはますます「正義」にまい進しなければならないと考えているのか。

とりあえず「正義は人を幸せにするものでしょ? だから、範子は間違っている」という指摘はまったく耳に入っていなかったようだ。

律子に関して「あの子には然るべき対応をした」と語るのみで、どうなったか描かれていないのも怖い。

次回は、範子の「正義」に人生をぶっ壊された教師・矢沢剛志(水橋研二)が登場。原作では教師をクビになったまま消えていたが、大人編のストーリーに絡んでくるのか!

第3話にして、原作のストーリーは8割方消化してしまっている感じだが、ここからはドラマのオリジナル展開で予測不能となりそうだ。
(イラストと文/北村ヂン

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『絶対正義』(フジテレビ)
原作: 秋吉理香子『絶対正義』『この女に賭けろ』幻冬舎文庫刊)
脚本:仁志光祐、谷岡由紀、政池洋佑
演出:西浦正記、浅見真史
主題歌:嘘とカメレオン「ルイユの螺旋」(キングレコード
音楽:木村秀彬、佐藤浩一
企画:横田誠(東海テレビ
チーフプロデューサー:市野直親(東海テレビ
プロデューサー:浅野澄美、郷田悠(FCC)
制作著作:フジクリエイティブコーポレーション
制作:東海テレビ放送

イラストと文/北村ヂン