ゲーム業界の動向に聡い人であればご存じかもしれないが,KLab2018年12月26日に,同社の専務取締役である森田英克氏の代表取締役社長就任について発表を行った。


 KLabといえば,2000年にケイ・ラボラトリーとして発足後,2009年KLabGamesを設立し,ソーシャルゲーム開発事業へと乗り出した。現在では「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル」をはじめ,「キャプテン翼 〜たたかえドリームチーム〜」「幽☆遊☆白書 100%本気(マジ)バトル」「うたの☆プリンスさまっ♪ Shining Live」といった,国内外問わず人気のIPを活用したスマホ向けタイトルリリースしている。
 現在に至るまでこのゲーム事業を支えリードしてきたのが森田氏だ。森田氏の代表取締役社長就任は,同社のさらなる成長を期待させるものとなるだろう。先日の発表を受け4Gamerでは,代表取締役社長就任後のKLabの新体制やKLabGames10周年振り返り,今後の展望について森田氏に話を聞いた。

リンク「KLab」公式サイト


ゲーム事業を牽引してきた森田氏が描くKLabビジョン

4Gamer
 本日はお忙しい中お時間をいただきありがとうございます。森田さんは2002年KLabに入社されてから,コンテンツビジネス事業部長,KLabGames部長,専務取締役などを歴任され,これまでゲーム事業をリードされてきたかと思います。まずは,代表取締役社長への就任が決まった経緯についてお話しいただけますか。

森田英克氏(以下,森田氏):
 もともとKLabモバイルコンテンツ及びテクノロジーの会社として創業しました。最初の10年はモバイルコンテンツの開発やサーバーの運用,構築などをメインとしていて,mixiソーシャルゲームオープン化する際にゲーム事業へ参入したんです。そのときの立ち上げに関わっていたのが私とほか数名の新規事業チームでした。

4Gamer
 のちのKLabGamesですね。

森田氏:
 この部門が会社の成長を牽引したことで,数年前に会社のリソースゲーム事業へ集中する意志決定がありました。ゲーム事業やコンテンツ事業を主力に会社をより成長させていく方針となり,それを実行するのに適した人間として私が任命された形です。

4Gamer
 なるほどKLabとしては「世界と自分をワクワクさせろ」というビジョンを掲げていらっしゃいますが,新生KLabとして船出するにあたって,今後のビジョンをどのように描かれていますか。

森田氏:
 私自身が2年前から「どうやってゲーム事業を盛り上げていくか」を戦略面や経営体制含めて中心に行ってきておりましたので,立場が変わったからといって大きく変わるものはそうありません。今まで培ってきたものをより磨き上げていくことになると思います。

4Gamer
 近年は「Japanese IPs」「Global Growth」「Original Creations」の3つの柱を軸とした“3 PILLARS”戦略(※)をもとにゲーム事業を展開されていましたが,こちらは継続されていくのでしょうか。

※日本が世界に誇るIPを原作としたタイトルを展開する「Japanese IPs」,全世界へ向けたゲームの配信,グローバルな情報発信を行う「Global Growth」,ゼロからコンテンツを作り出しオリジナルタイトルの開発を目指す「Original Creations」の3つの軸から構成された戦略のこと。


森田氏:
 変わらず継続していきます。3つの軸に4つ目の軸をプラスして幅を広げるのではなく,既存の3つの軸をどれだけ高いレベルに持っていけるかが課題です。
 具体的に言うと,ヒット作を生み出すための経営体制はここ2〜3年でかなり整備してきました。品質のいいゲームを1本ずつしっかり作りあげるのはもちろん,「品質がいいとは一体何を指すのか」といった部分も会社として定義し,ノウハウを共有して横断的なクオリティコントロールを行っています。合わせて海外に向けたマーケティングチームやローカライズのグローバル人材を揃えるなど,世界で通用する運営ノウハウを研究,横展開していくことも継続的に進めています。

4Gamer
 事業の幅を広げるのではく,開発・運営の地盤を固めてそれぞれの柱をより確かなものにしていくイメージですね。

森田氏:
 これは意気込みのようなものになるんですけど,これらに加えてクリエイターが働きやすい環境作りに力を入れていきたいと考えています。組織はクリエイターエンジニアの才能によって発展していきますし,そうした業界だと思うので,優秀な人や才能のある人が気持ちよく働けるような会社にするのが大事だなと。


■設立10周年KLabGamesや“3 PILLARS”を振り返る

4Gamer
 KLabGamesは設立10周年を迎えられました。振り返ってみての率直なご感想をお聞かせください。

森田氏:
 mixiアプリ参入時は社内にゲーム業界の経験者が1人もおらず,生え抜きや新卒のスタッフが集った,いわば素人集団で業務にあたっていました。それが今ではきちんとゲーム会社として認識してもらえるようになったのは感慨深いですね。
 mixiアプリから始まり,モバゲーGREEブラウザソーシャルゲームスマホシフトによるネイティブアプリへの移行など,事業環境が変化してきましたが,その中でしっかり適応し生き残れたのは自信につながりました。

4Gamer
 そういった変化に適応し,こうして10周年を迎えられた理由をどのように分析されますか?

森田氏:
 やはり“お客様のほしいもの”にしっかり応えてきたことですね。お客様のニーズからかなり先の商品を作るのではなく,ニーズとして上がっている声の少し先にあるものを届けるんです。言ってしまえば,ものすごいジャンプアップはありませんでしたが,確実に時代の波には乗れています。
 あとは,組織として成功体験をロジック化して展開し,再現性のあるものにしていくべきだとも考えています。

4Gamer
 分析したうえで誰でも再現できる状態でないと,それを次の世代に継承できなくなってしまい,組織としての成長が止まってしまいますね。

森田氏:
 そうなんです。例えばですけど,才能あるクリエイターAさんがメガヒット作を出して会社が大きくなったとしても,Aさんが辞めて次のヒット作が生まれなくなった,という事態に陥る可能性もあるわけです。だからこそ我々は,成功した理由を分析し論理立ててきました。これは強みであり弱みかもしれませんが,そうした堅実さがうまくマッチしたと感じています。

4Gamer
 弱み,ですか。

森田氏:
 堅実であるからこそ,まだ世の中を動かすようなものが作れていないことですね。これに関しては,今後何とかしていきたいです。ロジカルにゲームビジネスに向き合う基盤やカルチャーはある程度形成できたので,そのうえでKLabクリエイターたちがヒット作を生み出してくれたらと,期待しています。
 この10年は,モバイルゲームでどのようなものがお客様に喜んでもらえて,ビジネスになるかが試行錯誤された時代でした。しかしこれから先の10年は,お客様に求められるものを理解したうえで,さらに「もっと良いものを出すにはどうすればいいか」を考えなくてはいけない。これから数年が大きな勝負になると捉えています。
 ロジカルにヒットさせるために,いかに分析してゲームを作ったとしても外すときは外しますし,ロジックでは解き明かせない部分は必ずあります。ロジックを理解したうえで活躍できる優れたクリエイターの存在がとても重要だと思っています。

4Gamer
 では“3 PILLARS”で掲げている3つの柱,それぞれの手応えはいかがでしょう?

森田氏:
 「Japanese IPs」は,日本国内で人気,かつ海外でも人気があるIPのゲームを提供できたので,ここ2〜3年のものはきちんと良い結果を出せています。とくに「キャプテン翼 〜たたかえドリームチーム〜」は大きな反響がありましたね。これは「Global Growth」にもつながることで,業界的にあまり注目されていなかったエリアで大きな成果を上げられています。
 北米,欧州,韓国,台湾,中国でヒットすれば大きな結果を残せる認識でしたが,香港やアラブ諸国などから予想以上の反響があり,小規模であったり,まだマーケットとして認識されていないようなエリアからも高い評価をいただけました。そのエリアにおけるIPとの相性,そしてゲームが良ければこうした結果につながると実感しました。

4Gamer
 たしかにアラブ諸国はマーケットとしてのイメージはあまりないです。


森田氏:
 例えば「キャプテン翼 〜たたかえドリームチーム〜」は世界中の方に楽しんでもらえるように,グローバル視点で人気のあるPvPを軸にゲームを作っています。「BLEACH Brave Souls」もマッチプレイで遊べるので,ここが盛り上がった要因かなと。

4Gamer
 人気IPの力だけでなく,海外展開を視野にいれたゲーム設計を目指したからこそ,グローバル展開で良い結果を残せたわけですね。

森田氏:
 ゲーム設計に関しては「IPの良さをうまく引き出してゲーム化する」ことも重要視しています。どんなに面白いゲームを作っても,IPらしさがなければ「このIPでゲームを作った意味はあるのか?」となってしまうものです。IPらしさを活かし,ゲームとしての面白さも実現する,どちらかが欠けてもダメで,両立するのが重要だと感じています。

4Gamer
 海外展開といえば,国外向けの情報発信にも注力されている印象があります。

森田氏:
 はい。グローバルマーケティングにも力を入れています。海外にスタジオを設けていない代わりに外国人スタッフを雇用し,日本から海外に向けてYouTubeTwitterFacebookを使って直接海外のファンの皆様とコミュニケーションをとるスタイルを取り入れています。

4Gamer
 運営や情報発信において,国内と海外で情報の違いを極力出さないようにしているそうですね。国や地域独自の価値観なども踏まえて同時にリリースとなるとご苦労が多そうですが……。

森田氏:
 情報にタイムラグがあると,例えば「日本版でこんなキャラクターが出ているなら,次のアップデートでグローバル版にも同じキャラクターが入るだろう」と海外のお客様は展開を先読みしてしまいます。当然利益にも関わりますが,日本のプレイヤーが新しいキャラクターを使えているのに自分たちは使えないという不満も出てしまうものです。そういった点に配慮してできるだけフラットにし,全世界で共通の運営を区別なく行う「ユーザーファースト」の意識を心がけています。

4Gamer
 ちなみに日本と海外のプレイヤーでは,キャラクターの追加などのアクションに対して反応の違いはあるのでしょうか?

森田氏:
 IPのファンの方が多いので,極端に違うリアクションはそうありません。
 細かなところで言うと,日本では格好良いイケメンタイプが人気ですけど,欧米では筋肉質なタイプが人気だとか,ある程度の傾向はあります。「キャプテン翼 〜たたかえドリームチーム〜」で言えば,現地のキャラクターよりも翼くんや岬くんのほうが人気です。これは原作で海外選手が登場する「ワールドユース編」のアニメ放送があまりなく,広く知られていないことが要因の1つとしてあります。

4Gamer
 選手のバックボーンが分からないと,思い入れは生まれにくいかもしれません。

森田氏:
 そのためSNS上で選手を紹介したり,シナリオ上でどのような選手であるかを説明したり,パラメータの高さで重要キャラクターであることを表現したりとさまざまなフォローを行うようにしています。これを長く続けたことで,よりキャラクターへの理解を深めてもらえた印象です。

4Gamer
 では最後の柱,「Original Creations」についてはいかがでしょう。

森田氏:
 3 PILLARSの発表以来1つも成果を出せていないので,これは今年来年でしっかり結果につなげたいところです。オリジナルタイトルである「禍つヴァールハイト」(iOS / Android)が事前登録中ですので,まずはこのタイトルを日本でヒットさせて,グローバル版も進めていきたいですね。


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■海外市場への期待と展望

4Gamer
 自社主体のグローバル展開を積極的に行われる中で,海外メーカーとのアライアンスにも取り組まれていますが,今後も新規でのアライアンスの予定はありますか。

森田氏:
 中国の崑崙(北京崑崙万維科技有限公司)と共同開発した「BLEACH 境・界-魂之觉醒:死神」を2018年11月リリースしました。12月には台湾,香港,マカオで繁体字中国語版も提供し,どちらも非常に好調です。こうした座組はほかの作品でも進めたいと思っていて,商談を進めているところです。
 とくに中国のメーカーは技術的にレベルが高く,ゲームの作りを見ると日本と似ているようで違った部分も多いです。社内のスタジオだけでは日本のソーシャルゲームの延長線上でゲームを作りがちですが,海外メーカーと組むことで私たちだけでは実現できないような作品をグローバルに配信でき,会社としてプラスになると考えています。

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4Gamer
 海外メーカーと共同開発を行うことで,ゲームの多様性にもつながりそうですね。

森田氏:
 マーケットをグローバルに設定すると,やはりゲームの多様性は必要になります。ゲームの作りの違いで言えば,崑崙と共同開発した「BLEACH 境・界-魂之觉醒:死神」は,日本で配信されている「BLEACH Brave Souls」とはゲームの作りがかなり違っています。

4Gamer
 そういえば,「BLEACH Brave Souls」はアクションRPGで,「BLEACH 境・界-魂之觉醒:死神」は3DアクションMMORPG”でしたね。

ムービー(※4Gamerへジャンプします)
ムービー(※4Gamerへジャンプします)

森田氏:
 「BLEACH 境・界-魂之觉醒:死神」のメインシナリオはソロ向けで,クエストを受けてバトルをする形ですが,サブコンテンツにはマルチプレイモードがずらっと並んでいます。バトルロイヤルのようなモードPvPも数種類提供していて,他プレイヤーと協力してボスを倒すPvEもあれば,PKエリアもありますし,MMORPGを意識したかなりオンライン性の強い作りなんです。

4Gamer
 「BLEACH」はPvPなどのコンテンツマッチする世界観ですもんね。IPとの相性も相まって,とても興味をそそられます。
 話題は変わりますが,近年では海外産のタイトルがセールスランキング上位にのぼることも珍しくありませんが,現在の日本市場と海外市場をどのように捉えられていらっしゃいますか?

森田氏:
 KLabは日本のゲーム業界の中でも,海外の売り上げ比率が高い会社です。日本市場だけでなく世界全体を見てビジネスをするスタンスなので,海外メーカーの参入については自然な流れだと捉え,むしろ我々もそうしていくべきだと思います。今まで日本のお客様が触れていないようなゲームが市場に投下され,新たなヒットが生まれる流れ自体は,私が言うのもおこがましいのですが,業界の発展のためには必要なことなのではないかと。

4Gamer
 なるほど

森田氏:
 今の日本市場の状況は海外のトレンドの影響力が強まってきた,とも言えますね。今までの日本はガラパゴスというか,日本でのゲームヒットはグローバルヒットとは違う印象が強かったように思います。海外メーカーの作品が受け入れられ,少しずつグローバル基準に近づいていることの表れ,という気もするんです。このあたりの流れを踏まえても,今後昔ながらのソーシャルゲームを繰り返し作り続けていくことに厳しさを感じます。

4Gamer
 さきほど意外な市場についてのお話も出ましたが,グローバル展開において現在注目されている市場はありますか。

森田氏:
 すでに成熟したマーケットである北米や欧州,中国に関してはしっかりやっていこうと考えています。成熟市場ですがまだ取り組めていない韓国は,何か糸口があったら一気にいきたいなと……とはいえ,まだ思案中です。今注目しているのは,東南アジアですね。

4Gamer
 なぜ東南アジアなのでしょう?

森田氏:
 若者の人口が多く,ゲームマーケットというかゲームコミュニティの盛り上がり方が凄まじいんです。とくに,タイ,ベトナムインドネシアあたりは伸びると確信しています。
 3年ほど前に東南アジアを訪れたときはプリペイドSIMの値段もまだまだ高く,回線スピードは2.5G〜3Gと遅くて,我々が普段遊んでいるような本格的なアプリは敬遠されているようでした。挙動の軽いカジュアルゲームが主流でしたが,ここ1〜2年で4Gになったばかりか,通信料も下がって誰でも安価に速い回線につなげられる環境になったのも大きいようです。
 その影響か,モバイルゲームの盛り上がりが拡大しているように感じています。去年バンコクに行ったときには,Tencent Gamesの「王者栄耀」をはじめ「PUBG MOBILE」などがプッシュされていて市場の熱量を感じましたね。

4Gamer
 通信インフラが整備されたことで,スマホ向けのリッチなゲームが遊ばれるようになったわけですね。

森田氏:
 モバイルゲームにのめり込める環境が整ってきていますし,若い人口も多い東南アジアは,経済成長率を考えると5年くらいで今とはまったく違うマーケットになりそうだなと。

4Gamer
 それではインタビューのまとめとして,今後の展望とメッセージをお願いします。

森田氏:
 会社を成長させることが私の仕事です。ステークホルダーの皆さんの期待に応えるためには,事業を成長させなければいけない。そして事業やコンテンツを成長させるためにゲームブランドとしてしっかりステップアップしながら,いいものづくりを目指していきたいと思います。

 KLabは新しいことを積極的にやっていく会社なので,クリエイターが得られるチャンスはたくさんあると思います。風通しのいい会社ですから,提案してやりたいことをやれます。日本だけではなくグローバルで勝負するという想いを持った会社なので,世界で活躍したいと思っているクリエイターの方はぜひKLabの門を叩いていただきたいです。

4Gamer
 本日はありがとうございました


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KLab 森田英克氏インタビュー。新たな船出に向けて,ゲーム事業の柱“3 PILLARS”を軸にさらなる成長を目指す