子どもへの金銭教育をテーマにした拙著『「稼ぐ子」に育てるために今すぐやめる24のタブー』(マガジンハウス)が昨年11月に発売されました。なぜ「稼ぐ子」に育てるというメッセージを主眼に置いたかというと、「稼ぐ力」が「子が幸せを自分でつかみ取る原動力になる」からです。

 かつてのような景気がゆっくりと循環する時代とは違い、産業構造や社会構造は急速に激変しており、世の中はますます「自己責任」の方向へ向かっています。日本の財政は火の車で、医療や介護などにしても、将来はあてにできない可能性が高いことはあらためて言うまでもないでしょう。

 資本主義とは基本的に自己責任です。工夫し努力した人間と、そうでない人間との差は開いていく。だからこそ現在、恐ろしいスピードで世界中で経済格差が拡大しているのです。そして今後は稼ぐ力の有無が、かつてないほど個人の経済格差を拡大させる時代になっていくと私は予想しています。

●稼ぐ力は「自己肯定感」と「自立」に直結する
 
 稼ぐ力が子の幸福につながるとお伝えしましたが、それには2つの理由があります。

 まずひとつめは、お金を稼ぐことの本質的な意味が、「自分の才能を人や社会の役に立て、その対価をいただく」ことだからです。つまりお金を稼ぐとは人の役に立っているということで、これはそのまま子の「自己肯定感」につながります。「生きがい」そのものと言ってもいいでしょう。まれに「お金があれば仕事を辞める」という人がいますが、それは仕事観が間違っていると私は考えています。
 
 もうひとつの理由は、稼ぐ力は自立に直結するということです。人間の自立とは「経済的自立」と「精神的自立」から成り立っていますが、この2つの自立こそ激変する社会をたくましく生き抜いていく基礎になります。経済的自立とはその名のとおり、金銭面で他人に依存せず、自分でお金を稼いで生計を立てられる力です。精神的自立とは、親や社会の価値観に迎合することなく、誰か他人のせいにすることもなく、自らの意志で主体的に生きる力です。

 稼げば稼ぐほど、この自立心が強くなるというのは感覚的にもおわかりいただけると思います。なぜなら、他人に頼る必要がないし、他人の意見に迎合する必要もないからです。

 そしてこれらの力が高ければ、どのように時代が変化したとしても、人生に絶望するような場面に直面する可能性は低いでしょう。

 仮に普通の人が絶望する場面でも、その逆境を乗り越え人生を切り開いていくことができるはずです。

●「稼ぐ力」を養うためにやってはいけないこと
 
 ではどうすれば、「稼ぐ力」を子どもに身につけさせることができるのでしょうか。

 それにはまず、「稼ぐ力」の育成を阻むことをやめることです。「稼ぐ力」を獲得するには、お金の機能や限界を知り、お金との付き合い方を知り、経験値を高めていくことが大切ですが、親のなかにはこの学びのチャンスを子から奪ってしまう人がいます。本書ではそれを「親がやってはいけないタブー」として、私自身の経験と、私の周囲の成功者たちの話をもとにして40の項目にまとめました。

 たとえば火は危険だからと火遊びをさせなければ、適切な火の使い方を会得することができません。しかし、正しい火の扱い方を教えれば、できることの幅や楽しみ方が広がります。花火やキャンプも安全にできます。それは世界が広がることを意味します。極端な話、遭難しても火を起こして生き延びることができるかもしれません。

 これは金銭教育についても同じで、「お金のことは知らなくていいの」などと子どもを無菌室に入れていては、かえって免疫力や抵抗力が弱まるでしょう。そんな状態で社会に放り込まれれば、身の丈を考えずにカードで買い物をしてしまったり、定額返済のリボ払いがお得だと勘違いしてしまったりするかもしれない。

 大切なのは、子どもの頃から「適切なお金との付き合い方」を教えることで、お金の基礎体力づくりをしておくことです。

●お金に振り回されないこころを身につける
 
 稼ぐ力を身につけることで「自己肯定感」と「自立心」を養えば、その結果として最終的には「お金に振り回されない強い精神軸」を獲得することができます。

 それは、お金があるからどうだ、お金がないからどうだ、ではなく、お金のあるなしにかかわらず自分の生き方を貫けること。お金のことで落ち込んだり諦めたりするのではなく、目先の儲け話に舞い上がってリスクが見えなくなるのでもなく、お金によって心理状態が左右されない強い心を養うこと。そうやってお金に振り回されなければ、お金があってもなくても、人生を楽しめる余裕を持てます。

 お金に支配されない己をつくる。お金欲しさに自分を見失わない心をつくる。お金が必要な場面とお金では代替できない場面を見分ける力を獲得する。それは物事の本質を捉える選別眼を持つことであり、適切な価値判断基準を育むことです。

 そんな基礎がしっかりしていれば、その上にさまざまな応用を積み重ねていくことができるでしょう。

●子への金銭教育を通じて親自身の経済感覚を磨く

「適切なお金との付き合い方」と言いましたが、それには親自身が率先して見せる必要があります。というのも、子は親をよく見ており、親のふるまいを見て真似て育つからです。だから、まずは親が適切なお金との付き合い方を体現し、子に示すことです。

 とはいえもちろん完璧な親はいないし、お金に対する知識や付き合い方をよく知らないという親もいるでしょう。そこで、親自身が持っているお金に対する考え方を、子と一緒に考えることです。

 そんなきっかけ・題材になればと、本書を書きました。あえて極端に振った見出しや内容のところもありますが、それは書籍としての編集上の工夫と捉えていただき、ぜひ「自分はこうしよう」という自身の子育て・教育を考える参考になれば、著者としてうれしく思います。
(文=午堂登紀雄/米国公認会計士、エデュビジョン代表取締役)

「Gettyimages」より