1986年1月号ということは1985年11月26日発売なので、この記事は1985年11月頭頃の取材ですね。
イコール、昭和60年。電電公社がNTTになり、携帯電話の元祖「ショルダーフォン」が発売され、松田聖子は神田正輝と結婚し、「金妻」ブームに中森明菜の「飾りじゃないのよ涙は」がヒットし、「ファミコンブーム」が起こった年です。ワタクシゴトでいえば60年式最終仕様のいすゞ・ジェミニZZ/R PF60ブラックヘッドを購入した年ですねぇ。THE昭和って感じですかね!
そんな時代のOPTIONゼロヨン計測会紹介その5ラストは、下位に沈んだ残念だったマシンたちにエールを送りましょう!
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注目の実力派、無念の1万2000rpm、オーバーレブに泣く!
<SAKOレーシングRX-7> 13Bツインターボ/12秒87
●9秒台、いきたかったんやけどねぇ
ドライバー:佐光 史男
今回、レイン用のタイヤ持ってきたんで、とりあえずこれで何秒くらい出るかな、と思ってたんやけど、全然グリップせんかったね。本当は7000か7500あたりでクラッチミートして9000prmシフトなんやけど、グリップせえへんから結局、スタートは6500rpmくらいかな。
セカンドでもホイールスピンして1万2000rpmまでオーバーレブしたんで結局ブローしたんやけどね。ゴールは3速8000rpm。今日はコースにラインが引いてあったんで、やっぱりまっすぐ走れないのがよく分かりました。最初のトライなんか、ゴールのスイッチ踏めんかったもの。(注:当時の計測方法は計測用テープを路面に貼ったテープスイッチ式でした。)
●メカニズムチェック
レブリミット1万prmを可能にしたSAKOレーシングRX-7は13Bに換装され、吸入方法はペリとサイドの両方からなるクロスポート。これにエアリサーチ製T04タービンをツイン装着。A/Rは0.4だ。キャブレターはウェーバー48φで高圧縮にも耐えるオリジナルチャンバーが付く。ウエイストゲートはシグマ製タイプA。また4本のインジェクターが追加され、容量は390cc/分、1.1kg/cm2と1.5kg/cm2に2本ずつ噴射される。インタークーラーはHKS製SPLとスタンダードを組み合わせた大型タイプだ。圧縮比は9.6と高い。パワーバンドは7000~9000rpmで最大過給圧は1.5kg/cm2、350ps以上!
ミッションはレパード用を使用し、ファイナルは3.9。クラッチはB&Bで大パワーに対処している。サスペンションはカヤバ、コイルはノーマルを流用。RタイヤはSSR 9J-15ホイールにミッキートンプソンETドラッグ15-9-28の組み合わせ。
これが585ps、309.27km/hソアラのストリート・ゼロヨンタイムだ!
<トラスト・ソアラ ツインターボ> 5M-G改ツインターボ/13秒27
●これが普段の実力です
ドライバー:大川 光一
みんなのタイム見てから走るんだ! だってこのソアラ、ドラッグマシンじゃないんだよ。リヤタイヤ見てよ(コンプT/A60V)。ゆっくり普通にスタート。シフトアップもタコメーターの光が全部点いてから。あんまり踏めないから直進性もグーよ。
●メカニズムチェック
トラストは309.27km/hをマークした最高速用ソアラで参加。外観はフロントに純正スポイラー、リヤにボルク製の控えめなスポイラーが付いているくらいだ。またタイヤもドラッグ用などは履かず、コンプT/Aのラジアルタイヤ。室内も本革製のシート、エアコン、コンポなど軽量化は一切なし。
しかしエンジンは最高速用に作られた5M-G改ツインターボエンジンが収まっている。ピストンはアリアス製鍛造ローコンプでボア・ストロークは83×85mm。総排気量は2759cc。トラスト・オリジナルのカムシャフトとビッグバルブなどが組み込まれている。
タービンはTD06をツイン装備。これにオリジナルの大容量ウエイストゲート、排気効率の高いステンレス製エキゾーストマニホールドが装着される。キャブレーションはインジェクション仕様で補助インジェクターは3本。アクセル開度やエンジン回転数、ブースト圧などによって増量されていくシステムになっている。インタークーラーはトラスト製大型タイプ、オイルクーラーもオリジナル品だ。
サスペンションは安定性などについて定評のあるトラスト・サスペンションキットを組み込んである。最高出力はベンチテストで585ps/7500rpmと強力だ。
オーバー500psのあり余るパワー! プロペラシャフトが耐えられず、無念!!
<JUN・Z> 3.4Lツインターボ/13秒53
●とにかく残念!の一言です
ドライバー:小山 進
エンジンパワーが上がって、ホイールスピンしちゃうんでタイヤを太くしたんですけど、そしたら駆動系がね。プロペラシャフト2本折っちゃって、最後は解体屋から買ってきたヤツ使ったんだけどね。怖くてパワーがかけられないんでブーストも最低、スタートなんか1000rpmでしたよ。最後にブースト上げて1発狙ったらボキン!だもんね。
●メカニズムチェック
ボディはS30Zだが、フレームはすべてパイプで組まれ、カウルもオールFRP。エンジンがドラッグ用3.4Lツインターボと強力なため、ボディにもすべて手直しが加えられている。このエンジンはオリジナルの90mmのストロークを持つクランクシャフトを使用し、ボア・ストロークは89×90mm。ヘッドはポート、燃焼室にも手が加えられ、作用角296度のオリジナルカムシャフト、IN46、EX38.5φのビッグバルブが組み込まれている。圧縮比は8.2だ。
タービンはKKK製K26をツインで装備。インペラーハウジングは26・Gタイプ。エキソーズトハウジングは10番を使用。キャブレーションはOER50φでオリジナルのチャンバーが付く。追加インジェクターは180cc/分容量のものが6本追加されている。
インタークーラーは空冷オリジナル、オイルクーラーはウェットサンプからドライサンプに変更。油圧の抵抗を低減している。パワーバンドは4000~8000rpmでレブリミットは8000rpm。最大過給圧は1.5kg/cm2で最高出力500ps以上を発揮する。
異色スターレットRE、13秒台でリタイヤ!
<ホリレーシング・スターレット> 13Bペリフェラル/13秒84
こんなクルマで速いのって快感ですヨ!
ドライバー:花柳 貴雄
外観はど~ってことのないスターレットですけど、ロータリーはよく回りますよ。スタートは5000rpmくらいに抑えています。上げ過ぎるとリヤがバタついて、逆にタイム落ちちゃうんです。1、2速で1万1000rpmまで引っ張ると400m地点では3速1万rpmというわけです。谷田部は初めてでした。
●メカニズムチェック
外観はまったくのノーマル・スターレットが、あれほどのパワーを生み出すとは…。
エンジンは13Bロータリーのローターハウジングを加工してペリポートに変更した、加工ペリと呼ばれるもの。しかし基本的にはストリート用として、低回転域から十分なトルクを出すようなポート形状としている。アペックスシールも金属製を使って耐久性も十分だ。キャブは当然ともいえる、ウェーバー48φをベストセッティングで装着している。この結果、パワーバンドは6000~9500rpmで出力は240~250ps。
ミッションはRX-3用のスポーツキット。ファイナルは3.909にノンスリをセットする。足まわりはフロントにカヤバのコイル、リヤもカヤバ8段ショック。これにTRDのレース用コイルを組み、ストリート用のセッティングだ。ブレーキはハイパワーに合わせて、フロントは大型のベンチレーテッドディスクに変えられている。
今後、ストリートでの使用をあきらめてボディを軽量化し、ファイナルを4.4くらいにすれば11秒台もマークできるだろう。
原因不明のエンジン不調、4000rpm以上吹けず、出走断念!
<ノバスポーツ・ドラッグサニー> 2950ccツインターボ/リタイア
●メカニズムチェック
NOVA・SPORTドラッグサニーはゼロヨン初挑戦。しかし燃料関係のセッティング不足で4000rpm以上は吹けずに走ることは出来なかった。
エンジンはL型だがブロックはLD28を使用。L28ブロックに比べて重量ハンデはあるものの強度的には抜群で、ターボエンジンにはよく使われている。それに東名製鍛造89mmピストンを使用、ボア・ストロークは89×79mmの2950ccにアップ。コンロッドはオリジナル加工されたものを使用し、クランクシャフトはタフト処理とバランス取りが行われている。カムシャフトは作用角280度、リフト量8mmのものを使用。バルブは東名製でIN46.5、EX38φ。もちろん燃焼室加工も行われている。
タービンはTD06。インペラーハウジングは17C、エキゾーストハウジングは8cm2。吸気系はソレックス44φで320cc/分の容量の追加インジェクターが2本付く。冷却系はオリジナルのオイルクーラーを使用し、インタークーラーは無し。また点火システムはオリジナルの同時点火を取り付けてある。
ショック、コイルは純正レース用オプションを装備、RタイヤはETミッキートンプソン・ドラッグタイヤを使用している。
期待のマル秘開発マシン、ピットでミッショントラブル発見! 走行できず
<山野レーシング・コルベット> V8 7.5L/リタイア
●メカニズムチェック
ドラッグ界でアメリカンV8の実力を見せつける山野レーシングが、ついに最終兵器を作り上げた。ベースマシンは65年式オープンボディのコルベット。しかしその中身は、まさにドラッグマシンそのものだ。
エンジンで注目する点は、アルミブロック。鋳鉄製のブロックは単体で90kg以上だが、アルミ製なら約45kgと半分になる。圧縮比13.5に設定する鍛造ピストンにテーパータイプのピストンピン、スパイルロックを使った本格派。またヘッド周りには鋭いエンジンレスポンスを作り出すローラーリフター&ロッカーアーム、4重式のバルブスプリング、チタン製バルブリフター、作用角330度のスペシャルカムなど。
WEIANDのトンネルラムにはホーリー850cfm改が2個付けられて、日本にあるビッグブロックとしては信じられない、レブリミット9000rpmになっている。駆動系で注目するのはデフをフォードの9インチタイプのホーシングに変更していることだ。これでコルベットをドラッグ用にしたときの弱点をカバーしている。
今回は9秒台を確実にマークすると思われたが、走行前にミッションのトラブルが発生したため、一度も走らずに終わった。しかしこのマシン、赤マルで注目したいマシンだ。
ゼロヨンスペシャル・ステージ
かっとびゼロヨンマシンのこれが終速だ!
終速データはスピードガンによりゴール地点のはるか先から狙ったものだ。が、全トライチェックしたわけではないので、必ずしもこの数字がベストタイム・マーク時とは限らない。また、前面投影面積が小さく終速の高いマシンは、スピードガンが騙されている可能性もあるので、○km/h以上と記した。
対してATS-BMスターレットやユアーズRX-7をはじめとするデータはほぼ正確といっていい。まぁ、おおざっぱに見てゼロヨン11秒台前半のマシンは終速200km/h以上、11~12秒台のマシンは190~200km/h、12~13秒台で180km/h台って感じだね。
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リタイア2台…残念! オマケとして400m通過地点の速度計測(スピードガン計測なので大体こんな感じという数値)も紹介しました。しかし古~いモノクロページの画像からでも、この日の熱さが蘇ってくるようですね。さて、まだまだ昭和のOPTION誌紹介は続きます。次にご紹介するのは…多分アレです!(=決めていない!!)
(Play Back The OPTION by 永光やすの)
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