Point
旧ソ連1972年に打ち上げた金星探査機「コスモス482号」が、年内に地球大気圏に再突入する可能性がある
■「コスモス482号」は、金星遷移軌道に移行する際のロケット噴射に失敗し、地球周回軌道の上に囚われていた
■最短で、今年の末〜来年の前半に突入するが、太陽光の影響を受けると、最長であと2年半漂い続けると予測

旧ソ連の金星探査機が、地球にブーメラン帰還する日が近づいています。

1972年3月31日旧ソ連が金星探査を目的に打ち上げ、金星軌道の移行に失敗した「コスモス482号」が、最短で今年中に地球大気圏に再突入すると報告されました。

コスモス482号は、旧ソ連1960年代より進めていた金星探査「ベネラ計画」の一環として打ち上げられたロケットです。発射自体は成功し、宇宙待機軌道上に乗ることができたのですが、金星遷移軌道に移るためのロケット噴射に失敗してしまったのです。

そしてコスモス482号の機体は4つに分解され、その内の2つはすぐに大気圏内に突入、あとの2つが地球周回軌道の上に囚われ、2019年現在でも周り続けているのです。

頑丈で大気圏も突破するコスモス482号、その姉妹号もタフ

ベネラ8号 / Credit: © Alamy

コスモス482号は、同じく1972年3月27日に打ち上げられ、同年7月22日に金星着陸に見事成功した「ベネラ8号」の姉妹機です。

ベネラ8号は、金星の過酷な環境に破壊される前に、50分と11秒間にわたって、金星のデータを地球に送信することに成功しています。ベネラ8号を構成するのは、宇宙空間を巡行するための「バス」と呼ばれる飛行部分と、金星表面を探査するための着陸船「ランダー」です。

この2つは姉妹機であるコスモス482号にも存在します。そしてこのランダー部が、地球軌道上を周回した後、大気圏に再突入すると推測されているのです。

ちなみにランダーは1970年8月17日に打ち上げられ、1970年12月15日に世界初の金星着陸を成し遂げたベネラ7号と同じ造りをしており、重量は495kgで、耐熱性防護構造をしています。

ランダーは金星を覆う厚い雲に突入する際に生じる、強い衝撃にも耐えうるほどの頑丈に設計されており、そのおかげ(?)で、地球大気圏の再突入も難なく耐えうると予測されています。

いつ地球に戻ってくるのか?

ただし、人工衛星観測家のトーマス・ドーマン氏によると、機体に内蔵されたパラシュートを開くためのバッテリーは、とうの昔に切れているため、安全な着陸は不可能であるとのこと。落ちどころによっては、危険性も考えられます。

現在、地球軌道上にある「コスモス482号」は、地球から平均して2,735kmの地点を周っていますが、最も近い場所では、およそ200kmにまで近づいている状況。また、ランダーの周回軌道は、年々縮小しているため、早ければ今年の末から来年の前半には、地球大気圏に再突入します。

しかしドーマン氏は、太陽光の活動を正確に予測することができないため、その影響のいかんによっては「ランダー」の軌道もランダムに変化すると指摘。最長では、あと2年半、地球周回上を漂い続けるとのこと。

ただ地球に戻ってくるのは確実です。戻ってくるなら人のいない安全な場所か、あるいは「コスモス482号」が打ち上げられた「バイコヌール宇宙基地」がベストでしょうか。…これこそホントのブーメラン帰還では?

とにかく無事に、被害なく帰還できることを祈りましょう。

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reference: space.com / written & text by くらのすけ
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